デロイト トーマツ ディープスクエア株式会社

デロイト トーマツ ディープスクエア株式会社は、企業のAX（AIトランスフォーメーション）を全方面からバックアップするサービスを展開している。コンサルフェーズからAIモデルを活用したソリューションの開発・導入、さらにAI開発を内製化するための人材育成まで、トータルで提供している。

同社が提供するAIソリューションは、全て自社開発の独自AIモデルを活用している。サービスは大きく三つに分かれる。

・AI技術を用いた動画像解析・異常検知ソリューション『DS Vision』
・生成AI、大規模言語モデル（LLM）を用いたソリューション『DS Generation』
・AIによるデータ分析、時系列予測等を用いてビジネスをサポートする『DS Forecast』

『スマカチ（SmartCounter）』は、『DS Vision』を活用した自社サービス。道路に設置されたカメラで収集した映像から、簡単・高精度で交通量を計測する。現在、日本全国39都道府県で計測実績がある。

「対象の検出と追跡（トラッキング）を組み合わせたアルゴリズムを採用しています。これにより、対象の動きが計測できるとともに、同じ対象に対して何度も解析を行うことで、精度を高めています。自社開発の独自AIを活用することで、要望に合わせたカスタマイズ、調整が可能。自動車や歩行者の交通量が見える化でき、店舗前や繁華街を行き交う人々の人数・方向・性別・年齢層等の詳細データを収集し、ビジネス戦略に活用できます」（代表取締役社長・小林寛幸氏）。

AX支援をサービス展開する企業が増える中、同社の特徴は「AI教育（内製化・人材育成）」のアセットを持っている点にある。

日本ディープラーニング協会（JDLA）認定の講座を開催しており、ディープラーニングを実装するエンジニアの育成を目指す「E資格」と、ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して事業に応用する能力を持つビジネスパーソンの輩出を目的として実施されている「G検定」のコースがある。

「AXを推進するに当たり、企業が直面している課題の一つが、専門人材の不足。AIエンジニアだけでなく、ビジネスパーソンにもディープラーニングの知識が求められる時代になっています。当社のAI講座『DeepSquare（ディープスクエア）』は、東京大学松尾・岩澤研究室主催の輪読会に所属する講師が、豊富な実績と経験を基に、品質の高い講義を提供しています。講座受講者の2024年E資格合格率91.7%は、約15社の国内認定校のうち最高峰の合格率でした」（小林氏）。

同社の前身である株式会社Present Squareは、2012年に創業したITコンサルティング会社。2025年1月にデロイト トーマツ グループに参画した。

データを活用した経営改善のITコンサルからスタートした後、2015年からIoTソリューションの事業を展開。企業のデジタルシフトを支援してきた。さらに、2018年からディープラーニング技術の進化に伴い、AIが飛躍的に進歩したのを受け、同社でもAI事業をスタートし、AIを活用したい人のためのコミュニティサイト『DeepSquare』をオープン。現在のAI教育事業のベースとなるAI講座もこの時期に始まった。

「ビッグデータというキーワードが世間を騒がせ始める以前から、データドリブンな経営や意思決定のコンサルティングを手掛けていました。データ分析、IoTといった分野でプロダクト開発を進め、ビジネスコンテストにチャレンジしていました。2018年にスタートしたAI教育事業が順調に成長し、2021年には日本ディープラーニング協会（JDLA）が主催しているAIエンジニアの認定試験『E資格』の認定事業者になりました」（小林氏）。

コンサルティング力・AI技術力・教育力。三つの力を併せ持ったAX支援会社として、着実に成長していた同社の事業に興味を持ったのが「デロイト トーマツ グループ」だった。AIコンサルティングに力を入れている中、AX支援会社のアセットをグループ内に迎え入れることで、デロイト トーマツ グループの顧客に対し、クオリティーの高いサービスを提供できると判断された。

「2023年の秋頃に、知人を介してデロイト トーマツ グループと繋がりました。当初は資本提携を進める話でしたが、グループ入りによるシナジーが大きいと双方で判断し、ファイナンシャルアドバイザリーの傘下になりました。グループ入りの話はずいぶん悩みましたが、デロイト トーマツのお客様は大手企業や公官庁、自治体が中心。これまでよりもスケールの大きな仕事ができると考え、グループ入りを決意しました」（小林氏）。

2025年12月には、デロイト トーマツ コンサルティング（DTC）・デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー（DTFA）・デロイト トーマツ リスクアドバイザリー（DTRA）の3法人の合併が予定されている。専門分野を横断した連携を強化し、クライアントへの提供価値を最大化する。加えて、世界規模でのグローバル連携や、AI等の先端技術を活用したサービス強化も視野に入れている。

「デロイト トーマツ グループが一つになるインパクトは大きく、これまでよりもグループ内の横の連携が強化されます。当社もグループ全体のAX支援アセットの役割を期待されており、既にグループ各社からプロジェクトへの参加を依頼されています。デロイト トーマツ グループ各社のお客様へ、AI開発・AI教育を提供する機会が増えることで、当社が社会全般に幅広くバリューを提供できる会社になれます」（小林氏）。

デロイト トーマツ グループに参画したことで、AI開発やAI教育のプロジェクトの数が増え、規模も大きくなっている。現在、AIエンジン・AIコンサルタントの増員を進めており、エンジニア4名を含む10名の小規模な組織で運営している。デロイト トーマツ グループの中では最小規模の会社であり、グループ内各社からの依頼に応えるには、早急な大幅増員が不可欠な状況と言える。

「中野に本社を置いていましたが、グループ入りを機に、東京會舘本館も入る丸の内二重橋ビルにあるデロイト トーマツ グループのオフィスへと移転しました。引き続き中野オフィスも稼働していますが、今後は新本社を中心に組織強化を進める予定です。皇居前の素晴らしいロケーションにあるオフィスで、働き心地も大幅にアップし、モチベーションを高く保って、グループの成長に貢献したいと思っています」（小林氏）。

少数精鋭のメンバーで高いバリューを発揮してきたこともあり、同社で働くメンバーは大きな裁量を持って、自立した働き方を実践している。デロイト トーマツ グループに入ったことで、プロジェクトの規模が大きくなることが予想され、AI開発やAIコンサルの経験が豊富なリーダークラスのメンバーを求めている。その他、AIをキャリアの中心に据えたいと考えているITエンジニアも歓迎している。

「Webシステムの開発経験がしっかりとあれば、入社後にキャッチアップ可能です。外部にAI教育を提供している会社なので、AIの研修内容は他のSIerやコンサル会社には負けません。デロイト トーマツ グループという大きな器の中で、AX支援を通じて社会貢献をしたいと願う人材を広く募っています」（小林氏）。

デロイト トーマツ グループ入りは、同社にとって人材面でも大きな追い風となっている。AIのスペシャリストを目指す人材がグループ各社から異動し、スキルアップを実現した後に、グループ会社へと旅立つことで、キャリアの質が上がり、幅も広がる。

「当社の強みであるAI教育を、デロイト トーマツ グループ全体のAIリテラシーの向上に生かしたいと考えています。今後、コンサルティングファームの仕事は、必ずと言ってよいレベルでAIのスキルが求められます。当社で働いてAIスキルを高めた人材がデロイト トーマツ グループ各社で活躍することで、グループ全体で高いバリューを発揮できるはずです。今回当社に入社するメンバーにも、将来デロイト トーマツ グループ各社で活躍するAI人材になってくれることを期待しています！」（小林氏）。