株式会社Tech Reis

株式会社Tech Reisは、モダンな技術スタックの案件を中心にITソリューション事業を展開するITシステム開発会社だ。現役のエンジニアである代表取締役下岸祐太氏は、「エンジニアが安心して働ける最良のプラットフォームになる」とビジョンを掲げる。
同社では営業が案件への参画を主導するのではなく、エンジニアが学びたいプログラミング言語や望む働き方に沿って選択するスタイル。さらにエンジニアに対して単価を公開し、還元率を明確に示す。納得して案件に入ってもらうための配慮であると共に、自身の価値を把握した上で主体的に価値向上を追求してもらいたいとの意図がある。同社は情報の透明性を高め、エンジニアにとっての最良のプラットフォームとなる会社づくりを進めているのだ。
方向性に共感する仲間を増やすため、同社は拡大路線へと舵を切った。正しい環境の中で生き生きと働くエンジニアの姿を周囲に示すことで、業界全体の人材の流動性を高めていきたい考えだ。

下岸氏は大手総合電機メーカーでソフトウェア開発に従事した後、独立してフリーランスエンジニアとして活動していた人物だ。
収入と自由度が増し、自身の裁量で様々な選択ができる働き方に満足していた。
そんな時、友人のエンジニアがハードな環境で心の健康を損なってしまう。自身の経験からフリーランスの働き方を勧めると、その友人からサポートしてほしいと頼まれる。そこで自身一人の会社として法人化していたTech Reisが、案件の紹介や事務作業のアドバイスを行う形を採った。この時の成功体験が、他のフリーランスエンジニアへのサポートを始めるきっかけになった。
その後フリーランスエンジニアのサポートだけでなく、自社で雇用したエンジニアを案件へアサインするSES事業を開始する。インタビューページではさらに詳しいいきさつや下岸氏の経営哲学が語られているため、一読を勧めたい。

下岸氏は「業界内にはスキルを持つエンジニアであっても、人件費を安く抑えることで利益を得る会社が少なくない」と指摘する。しかしエンジニア側にも責任の一端があると言い、自身の価値を正しく把握した上で過酷な環境を変えるために外へ踏み出すべきだと力を込める。
「私はIT業界の人材の流動性を上げたいと考えています。過酷な労働環境の中でじっくり考える機会をつくれず、自身の価値に向き合えないエンジニアも多い。情報不足だと、選択肢をつくれません。自分の価値を高めていけば、収入が増えて環境もいい案件はいくらでもあります。人材の流動性（例えば会社ではなくプロジェクトごとに仕事を切り替えられるなど）が増せば、会社側も良い人材を雇用し続けるために、給与や労働環境をより改善する必要がでてきます。その結果、過酷な労働環境で働く多くの人が、価値に見合った職場で働けるようになると考えます。」
そのためにまずは身近なところ、自社のエンジニアにとっていい環境をつくりたいと話す。下岸氏が現役エンジニアであるため、彼らの望みや悩みを理解して理想の形を目指せることが強みだ。

同社の取り組みを具体的に見ていこう。
第一に情報の透明性が挙げられる。エンジニアに対して単価を完全に公開し、最低でも65%の還元率を設定。1年につき1%ずつ上昇して、最大70%まで上がる。自身の現時点での“市場価値”が分かる上に、評価者の主観が入らない公平な報酬制度となっている。

案件の選択権がエンジニアにある点も特徴だ。エンジニアは目指すキャリアや習得したい技術、希望単価に基づいて案件を選択できる。営業が持ち込んだ案件にこだわることなく、エンジニアが納得して仕事を遂行できるよう配慮する。
下岸氏は「SESは逃げ道があることが１つの利点。技術的価値を持っていれば、案件はたくさん見つかりますから、人間関係も含めて、やりづらさがあったら他に移ればいい。」と話す。
エンジニアが責任を果たしているにもかかわらず、不条理な条件や対応があるならば我慢は必要ないと言い切る。一貫してエンジニアの立場に立ち、安心して働ける環境を提供したいと考えているのだ。

また、エンジニアがモダンな技術スタックを身に付けられる仕組みを整える。
同社では市場で価値が高いと認識される言語や技術を重点的に採用して、社内の業務システムを開発している。それらの改修に携わることで、社員は最新の開発手法や言語を学び、実務経験を積むことができるのだ。
「事務作業のボットや人事労務SaaSとチャットとの連携機能等、社内で使うシステムやツール類をモダンな技術でアジャイルに開発しています。この仕組みによって、実務経験が乏しかった若手社員やレガシーなスキルセットだった中堅社員が最初から条件のいい案件に参画できました」（下岸氏）。
同社では業務系SaaSを展開する勢いあるベンチャー企業や、最新の開発手法を柔軟に取り入れる大手企業の案件が多い。営業の努力と下岸氏が持つ人的な繋がりが案件獲得に貢献している。フロントエンド、バックエンド、フルスタックエンジニア等、自身の進む方向を選択できる多彩なキャリアパスと、安定した案件に参加できる点は魅力だ。

下岸氏は今後の展望について「当社では、エンジニアがより自由に主体的に働ける環境を構築していきたいと考えています。社員の人数が増えることでより多くの選択肢を提供できるようになり、それに伴って個々の成長が促進されます。それが会社の成長とリンクして、『エンジニアのプラットフォームになる』というビジョンの実現に繋がると確信しています」と力強く語った。

案件の体制にもよるが、働き方はリモートが多い。他にも帰社日（月に一度、本社に出勤する制度）を設定していない点も特徴的だ。
「社員に対して監視や管理、強制はしたくないです。そうすることで各自の可能性を狭めてしまうのは避けたい。社員には命令に従うのではなく、納得して行動してほしいです。そうかと言って放置するわけではなく、必要なサポートやレクチャーは提供します。社員には自分で考え、挑戦や新しいことに面白がって取り組めるようになってほしいですね」（下岸氏）。
帰属意識以上に合理性を重視し、ワークライフバランスが取りやすい環境を意識しているのだ。

そうなると本社との連携や社員間のコミュニケーションが希薄になる懸念が出てくるが、社員からは「SlackやGoogleドライブ、Jira等のツールを活用して、効果的なコミュニケーションと情報共有が行われている」との声が多く聞かれた。Slackの個人チャンネル(timesチャネル)では、人柄やキャラクターが垣間見える。業務以外の雑談も交わされる中で、自然に連絡を取り合ってオンラインゲーム大会で盛り上がることもあるという。また好きなアニメ作品に関連した雑談から冬キャンプの企画が持ち上がり、初の試みとして実施されたとのこと。良好な関係性が伝わるエピソードである。

下岸氏は「社員は人を気遣えて、ポジティブに意見交換できるタイプが多い。そのため新しい方にも、小さな成果でも喜び、積み重ねていける前向きな要素を重視したいです」と話す。
さらに「今は時代が目まぐるしく変わる転換期にあり、これまでにない価値観や技術が出てきています。それらに取り組み、新しいアイデアや成果を積極的に共有してくれることを期待しています」と続ける。

強制的な帰社日は設けないが、任意参加で四半期に一度「ルールチェンジミーティング」を開催する。仕事上の決まりや働き方に関して、より良い環境をつくるために皆で話し合う場だ。この試みから、トップダウンではないフラットでオープンなカルチャーが感じ取れる。
同社は正社員の安定性とフリーランスの柔軟性を兼ね備え、それぞれのメリットを享受できる環境だ。少しでも興味を抱いたならば、話を聞いてみてはどうだろうか。