株式会社GOOD VIBES ONLY

株式会社GOOD VIBES ONLY（以下、GVO）は、画期的なアパレルDXプラットフォーム『Prock』を開発・展開している会社だ。アパレル業界の業務改善と各種課題の解決に取り組むと共に、リアルからメタバース上へと広がるファッションの世界にもいち早く注目し、取り組みを開始している。

「世の中のDXが進む中、アパレルはリモートにできないと言われていましたが、我々は商流を全てデジタル化しようと考えました」こう話すのは、代表取締役社長の野田貴司氏だ。『Prock』は、企画した商品の3Dデジタルサンプルを制作し、その3Dデジタルサンプルを使って商品画像・着用イメージ画像を制作。そこから商品の受注やAIを活用した受注予測、PR、オンライン接客やデジタル店舗の運営まで、アパレルの企画から販売までの一連の工程をワンストップで行えるアパレルDXプラットフォームだ。従来、これらの工程には様々な関係先との調整や手配が必要だったが、依頼、進捗管理、データの受け渡し等のコミュニケーションは、全てこのプラットフォーム上で完結する。時間もコストも大幅な削減が可能だ。

『Prock』の特徴は、高度なCG技術はもちろんのこと、バックに膨大な生地の物性データを持っていることだ。引張時の伸びをはじめ、透け感、落ち感等が全て数値化されており、従来の3Dでは再現できなかった服の質感が、まさに本物と同じに再現できるのだ。「それをCGのモデルに着せると本物の洋服と同じになり、そのままECサイトで受注もできるクオリティーになります」と野田氏。カラー、サイズ等のバリエーションも自在に作成でき、これをSNSに投稿すれば、その反響から、バリエーションごとの売上の予測ができる。また、どのインフルエンサーに渡せば最も効果的にPRをしてくれるか、過去のデータからAIが判断し、自動でアサインもする。

このように『Prock』は、3Dデジタルサンプルを軸にAIを組み合わせることで、実際に洋服をつくるところ以外の工程を全てデジタル化し、しかもデータに基づいた効率的な遂行を可能にする。そして、3Dデジタルサンプル×AIでできることは、これだけではない。野田氏は言う。「機能拡張、外部サービスとの連携等により、できることはまだまだ沢山あります。今後は、ユーザーの声も聞きながら、このプラットフォーム上でできることをどんどん増やしていきます」

既に導入が始まっており、ユーザーは有名ブランドから小規模ブランドまで様々だ。営業活動はしていないが、リリースすると次々と反響が来て、現在は、その全てに対応しきれないほどだ。

反響が絶えない状況について、野田氏は「僕らからしたら、導入しない理由がないです」と言う。ここまで自信があるのは、『Prock』が机上の空論ではなく、GVOが実際にD2Cブランドを立ち上げ、運営しながら課題に向き合い、試し、解決できたものをプロダクト化したものだからだ。

野田氏は元々、アパレルのD2Cの会社にいた。ブランドの企画から集客、ECで販売するまでの一通りのプロセスを経験し、ブランド自体もしっかりと成長させた実績を持つ。その経験を踏まえ、リアルとITを組み合わせたGVOを立ち上げた。立ち上げに当たり、解決したかった課題は、アパレル業界の永遠の課題でもある在庫問題だ。売れなかった洋服は大量に廃棄されており、社会問題化している。

当時、野田氏は考えた。「在庫をなくすには何が必要か。深掘ってみると、実際に在庫が生まれる川下の問題ではなく、ものづくりの始まりである川上から繋がっている問題でした。ブランドが発注し、サプライヤーが納品する。発注の時点で既に数がズレているから、大量に廃棄されるのです。そこをデータに基づいて、在庫が発生しないモデルをつくろうと考えました」それが『Prock』だ。2年間、自社のD2Cブランドでテストし、3Dデジタルサンプルを軸に、企画から販売までの一連の工程をデジタル化し、新たなサプライチェーンを構築するというモデルを生み出した。

これを知ったアパレル各社は、たちまち注目した。アパレル各社にとっては、サステナビリティの問題だけでなく、在庫はダイレクトに利益率を圧迫する。実物サンプル作成にかかるコストと時間の負担も大きい。もちろんその先にある生産、撮影・PR、販売等の工程も長く煩雑だ。これらが全てワンストップででき、しかも圧倒的にスピーディーで販売機会の損失も防ぐとしたら――。確かに「導入しない理由はない」だろう。小回りが利き、リスクも少ないことから、新たな才能や尖ったデザインも挑戦しやすい。

開発には、外部のプロフェッショナルの力も借りた。AIは、最先端の技術を持ち、斬新なプロダクトをつくってきたAI専門会社と協業。社内にはCTOとプロジェクトマネージャーを置き、実装には外部のエンジニア達の協力を得ている。今後は、よりスピーディーにプロダクトをブラッシュアップしていくために、社内の開発体制を充実させていく考えだ。

競合は意識していない。野田氏は言う。「AIに強い会社もあれば、3Dに強い会社もあり、部分競合はいくらでもあります。ただし、僕らは一つの機能で勝とうとはしていません。全体的な仕組みで勝つ。川上から川下までの総合力で勝負しています」確かに、全ての工程をワンストップでできる『Prock』は、唯一無二のプロダクトだ。さらに先の構想もある。3Dでつくった服は、そのままメタバースの世界に展開できるのだ。

メタバースが限りなく現実世界に近付いている昨今、メタバース上のファッション産業も、にわかに注目を集めている。ゲームやアニメ等の作品の中で、登場人物がリアルのブランドの服を着用する。メタバース上に集うアバターも、実在するブランドの衣装を購入し、思い思いのオシャレを楽しむ。それがリアルな世界でも売られて、実際に身にまとう。そんなシームレスな世界が、既に始まっている。「ファッションの新しい循環が生まれ、よりブランドの価値を向上させるようになります」と野田氏。

海外のラグジュアリーブランドの中は、既にメタバースの世界に進出しているものもある。今は、関心を持っているのは一部の先進的なブランドに限られているが、間違いなく大きなマーケットになる。そこに対応できる技術を持ち、ブランドに対して提案もできる。しかもリアルのアパレルにも精通している会社となると、まずないだろう。大きな手付かずの市場が、GVOの目の前に広がっている。

野田氏は言う。「国内のアパレルの市場規模は約9兆円で、徐々に右肩下がりの状態です。一方でブランド数は増えており、少ないパイを奪い合う。でもメタバースの世界に進出すれば、市場は一気に拡大します。国境もありません」GVOが先導して、国内のアパレル各社をこの新しい世界に誘う覚悟だ。

『Prock』は、もちろんグローバル展開も視野に入れている。リアルのアパレルにおいても、ITと融合したサービスで、国内外問わず価値を提供していく構想だ。ファッションを切り口に、実にチャレンジングな世界が広がっている。「メタバースやWeb3領域のスキルセットを持つ人は、まだほぼいません。関心があれば挑戦できるフェーズにあります。一つの産業の変革を主導できるチャンスは、なかなかないと思います。楽しさしかありません」と野田氏。ハードルは沢山あれど、圧倒的に面白さが勝っている。アパレル×DXの世界で、一緒に挑戦したい人を待っている。