株式会社EDIONクロスベンチャーズ

株式会社EDIONクロスベンチャーズ東京支社は、デジタルマーケティングのためのWebサイトの構築・運用等の受託事業と、自社Webサービス事業を手掛けている。スポーツ界や小売業界に強いという特長を持つ。家電量販店大手である株式会社エディオン（東証一部上場）の100%出資会社だ。

売上の80%ほどを占める受託事業の大半を、小売業のクライアントが占めている。
それ以外のプロスポーツにおいては、公式サイトの構築・運用・システム開発等を担っている。

小売業では、エディオンやドラッグストア大手といったクライアントのコーポレートサイトやサービスサイト等のほか、業務システムの構築・運営を担う。小売業においては、業態に違いはあれど在庫管理や物流、販売等の基幹業務という共通項があり、ノウハウの横展開を図れる強みがある。

また、スポーツに関しては選手が大記録を打ち立てた瞬間や引退前の試合といったファンのアクセスが集中する際のサーバー増強等、業界特有のノウハウもわきまえている。

「小売業もプロスポーツも共通して最重視しているのは、つくったシステムでどれだけ効果を上げるかということです。華やかな世界で見た目のカッコよさに引かれがちですが、そういったことよりファンや消費者にとって分かりやすく使いやすいことを第一に考えています。また、いずれの業界に対しても、内部の業務を効率化するDXへの提案やシステム構築にも力を入れています」（川口氏）。

自社サービスは、子ども教育向け会員管理・業務システム『ピクロ』と、位置情報検索サービス『キンセイ』を提供している。

『ピクロ』は、会員情報管理、月謝引き落とし、入退室通知、イベント・グッズ受付、送迎バス居場所通知等の必須機能を網羅。プロスポーツクラブが運営する子供向けスポーツ教室においては、プロ野球6球団（シェア50%）、Jリーグ（J1･J2）11チーム（同28%）、Bリーグ13チーム（同72%）と高いシェアを誇る。地域密着型の教室も数多く導入している。

『キンセイ』は、最先端IoTネットワーク「Sigfox」を活用し、子供の居場所を保護者に通知する機能を持つ。大阪府寝屋川市が小学1年生の全保護者に毎年無償配布するといった使われ方がされている。

旧会社の2010年頃の『ピクロ』の開発である。デザイナーやエンジニアを擁し、経験を積んだ企業として「自社サービスを手掛けたい」と社内でアイデアを形にした。『ピクロ』とは“ピクチャー×記録”の意味で、当初はスマホで撮り溜めた写真を一元管理し印刷までできる“子供の成長記録アプリ”としてリリースする。これを知った、全国に3万人の会員を持つ大手子供向けスポーツクラブから「これを使って写真販売システムをつくってほしい」とのオーダーが舞い込んだ。ここから、会員情報管理機能等を加えた現在の『ピクロ』にピボットする。

今後のビジョンは、クライアントの収益拡大に寄与する存在であり続けること。川口氏は次のように話す。
「クライアントが確実に収益を上げるWebシステムを構築する会社を選ぶのは間違いないことだと思います。その軸はブラさず、IT業界の激しい変化をキャッチアップし、常により良いソリューションや業務フローのシステム化を提案し続けることにこだわっていきます。また、“つくって終わり”ではなく、つくったソリューションは汎用化し、できれば自社プロダクト化も目指していきます」

礼儀を重んじるプロスポーツ界や小売業界のクライアントを多く抱えている同社では、お中元やお歳暮等の季節のあいさつや年賀メールを続けたり、クライアントとの打ち合わせにはスーツ着用で臨むといった以前からのカルチャーも大切にしている。
「営業や開発、制作等、職種別のチームごとにそれぞれのカルチャーもあって、メンバー育成や情報共有、勉強会の運営等はそれぞれが適宜行っています。会社としては、一律に縛るのではなく、各チームの主体性を尊重しています。各チームを貫く会社としての価値観は、お客様の収益に貢献することが第一にあります」と川口氏。

なお、同社では社員の独立起業も支援している。これまで、次のようなケースがあった。
フリーランスとしての独立を申し出た女性デザイナーに対し、1年間はそれまでと同等の業務の発注を確約する前提で法人化し同社との取引を行い、2年目以降の取引継続は1年目の業務品質で判断すると提案。「非常に喜ばれ、数年たった現在も主力デザイン会社として取引が続いている」と川口氏。また、『ピクロ』の営業担当者が「子供向けプログラミング教室」での起業を提案した。その内容を評価した同社が出資する形で創業し、順調に成長を続けて現在はエディオングループになっている。
「もちろん、入社数年程度の社員ではなく、それなりに苦楽を共にした仲間の独立を支援したいという気持ちからです。独立しても完全に離れてしまうのではなく、いい形で付き合い続けていければ嬉しいですね」と川口氏は話す。

同社は、“モノをつくる開発会社”から、“モノを考える企画提案会社”へのステージに上がることを目指している。具体的には、システムの再上流工程を担い、開発や実装は外部ベンダーに依頼していく方針だ。そんな同社が求める人材としての資質は、コミュニケーション力があることと、誠実な人柄であること。エンジニアやデザイナーもクライアントと直に接し、ニーズのヒアリングや提案を行う場面が少なくない。「クライアントの利益創出を再上流工程から考えるシステムづくりを手掛けたい」といった人材には、最適な企業と言えるだろう。