中小製造業の事業承継という社会的課題を解決しながら、M&Aによる圧倒的な成長を目指す
東京・渋谷にある株式会社技術承継機構は、中小企業製造業の譲受およびその経営支援を行っている会社だ。日本には高度な技術・技能を持つ中小製造業が多く存在するものの、後継者不足・技術者不足等により廃業の危機にある。このような価値ある技術・技能を次世代に繋ぐという想いから2018年に設立された。
少子高齢化や労働人口減少等により、日本の中小企業数は減少傾向にある。中小企業に共通し、かつ最大の課題は“後継者難”だ。技術承継機構は、価値ある技術・技能を持つ中小製造業企業をM&Aにより譲り受け、その企業(以下、子会社と呼ぶ)の持つ経営課題の解決を通じてバリューアップさせる。つまり、子会社にとって譲受は事業承継問題を解決する手段であり、技術承継機構にとっては成長戦略の芯となっている。譲受した子会社の売却は想定せず、ともにグループ内での二人三脚での成長を目指す。いわゆる“ファンド”とは一線を画す企業である。
経営支援の中心となるのは、中小企業の主要な悩みである次世代経営者や技術者の採用力強化、IT化による生産性改善だ。さらに、グループ内において共同での技術開発、設備の共有化、人材交流、調達ルートの共通化など、あらゆる面で相乗効果を追求し、強固な企業グループを構築することを目指している。
創業メンバーは海外経験が豊富で、日本経済が置かれている厳しい状況をヒシヒシと感じていた。代表取締役を務める新居英一氏は、大学を卒業後、証券会社に勤務。3年後に投資ファンド事業を手掛ける会社に移り、会社の譲受と経営を8年間経験した。その後、新居氏は40カ国を訪問する世界一周投資旅行に出る。1年半かけて自らの目と足で世界の現状と日本の置かれた状況を理解し、2018年7月に技術承継機構を立ち上げた。
創業後から3年間の案件受領件数は450以上に上る。そのうち具体的に詳細検討・調査に入った案件は181件、社長同士のトップ面談は49件、LOI(Letter of Intent:基本合意書)提出は30件、クロージング(成約)は5~6件(2021年11月時点)となっている。少人数ながら、この短期間における圧倒的な譲受の検討数、成約件数が圧倒的な企業成長のドライバーとなっている。また譲り受け子会社となった企業はNGP(Next Generation Technology Group Growth Program)に則り「支援」を越えて、二人三脚での事業改革、経営改革を行い、自律的な成長を目指す。創業3年目にして、2021年度の売上高は約70億円に達する。メンバーは20代~40代で、30代後半が大半を占める。