まんが専門の出版社の新しい取り組み。公式まんがアプリ「COMIC FUZ(コミックファズ)」
「漫画の殿堂」こと株式会社芳文社は、まんが専門の出版社。1950年に創業し2020年で70周年を迎えた老舗出版社である同社では、新しい取り組みにチャレンジしている。
2019年3月、「新しいまんが連載の楽しみ方の提案」として、公式まんがアプリ『COMIC FUZ(コミックファズ)』をリリース。まんがアプリには、複数の出版社の作品が読めるものと、出版社が自社の作品のみを扱う「版元系まんがアプリ」と呼ばれるものがある。COMIC FUZは、芳文社が自社の作品のみを扱う「版元系まんがアプリ」だ。
COMIC FUZのリリースにあわせて、アニメ化やドラマ化された人気作品「ゆるキャン△」など、芳文社が発行している雑誌から連載の場を移した作品だけでなく、COMIC FUZのオリジナル作品も多数連載している。「信長のシェフ」など芳文社が発行する雑誌で連載中の作品や、「ひだまりスケッチ」「けいおん!」のようなベストセラー作品も読むことができる。
「若い世代がスマホで気軽にまんがを楽しめることをコンセプトにしており、芳文社のコンテンツをこれまでのように雑誌ごとに分けるのではなく、いろんなジャンルをミックスしているのも特徴です。1話単位でレンタル読みする形式のほか、単行本を購入するシステムもあり、ユーザーがそれぞれ好みのスタイルで芳文社のコンテンツを楽しる設計になっています」(取締役・高見澤昌彦氏)
出版業界は再販制度のもと、出版社と出版取次と書店がそれぞれ役割分担して全国ネットワークを張り巡らせることで繁栄してきた。しかし、時代の流れとともにユーザーとのタッチポイントも変わり、書店だけでなくWebでも出版社とユーザーがコミュニケーションをとる時代が到来している。
「COMIC FUZの役割は、作品の発表の場であり、ファンを増やすためのツールであり、まんが文化を後世に残す新しい形式です。紙媒体、電子媒体を問わず、単行本が当社の収益を支える構造は変わりませんが、今後は単行本を買ってもらうために作品の魅力を伝える場として、まんがアプリも非常に大きな役割を担っていきます」(高見澤氏)
大手出版社もすでにまんがアプリをリリースしている。雑誌からまんがアプリへ、その動きはまんが出版業界全体の流れといえる。
ファン化を促進。課金システムで雑誌に変わる自立した新しいメディアへ
作品発表の場を、雑誌だけではなくまんがアプリへ展開していくことは、今後まんがを作る出版社には避けて通れない道かもしれない。
まんがアプリは、まずは「無料」で作品を読んでもらい、その体験を通して作品、あるいは作家のファン化を促進し課金してもらうような導線となっており、このような構造のまんがアプリが大半を占めている。
芳文社のCOMIC FUZはこの形を踏襲しつつも、独自の課金システムを導入してマネタイズや差別化できるように工夫している。
日本のまんが史を切り開いたチャレンジするDNA。出版ビジネスのモデル変える仕事
公式まんがアプリ「COMIC FUZ」をはじめ、芳文社はこれまで新しいことにチャレンジしてきたDNAを持っている。
1956年に創刊された『週刊漫画TIMES』は、日本で最初の漫画週刊誌。『週刊漫画TIMES』の成功は、後のまんが週刊誌ブームの先駆けとなる画期的なものであり、同社のその後の成長の礎を築いた。
1981年には日本初の4コマ漫画専門誌『まんがタイム』を創刊。2002年には、萌え系漫画雑誌『まんがタイムきらら』を創刊し、萌え系漫画ブームのフロントランナーとなった。
「当社は時代と読者の変化に敏感に対応することで、劇画タッチ漫画、4コマ漫画、萌え系漫画と様々な分野に強みを持った出版社に育った歴史を持ちます。新しい事業に対する積極的な姿勢は現在も受け継がれ、編集部員もそれ以外の社員もチャレンジ精神を持った人が多いのを特徴としています」(高見澤氏)
『まんがタイムきらら』の創刊以来、萌え系漫画の出版社として数多くのメディアミックスにもチャレンジしてきた芳文社。「ひだまりスケッチ」「けいおん!」といった人気作品もアニメで大成功した。
「出版社の編集者は『デジタルが嫌い』というイメージがあるかもしれませんが、長くメディアミックスに取り組んでいるため、当社で働く編集者はデジタルへの理解が深いと思っております。COMIC FUZの事業もきらら編集部から上がったアイデア。ただ、彼らは良質なコンテンツを生み出すことはできても、アプリ運営やWebマーケティングは専門分野ではありません。今回の募集では、COMIC FUZの事業を牽引してくれる人材を求めています」(高見澤氏)
出版業界は、今、大きな変革の時を迎えている。芳文社には、歴史を作ってきた魅力的なコンテンツがたくさんあり、今も次々と生み出されている。それをどう料理するか。出版ビジネスのモデル大きく変えるチャレンジができる、魅力的なポジションだといえる。
「少数精鋭のチームでインパクトのある仕事ができます。裁量も大きく、組織の歯車になるのではなく、歯車を動かす役割を担い、今後の当社にとって重要なポジションになると思います。伝統と新しさを兼ね備えた社員ファーストの社風を持った会社です。最新のデバイスが支給され、福利厚生面でも社員の働きやすさをバックアップしてくれます」(業務部製作課・小野竜典氏)