「事業の成功には“戦略と施策と実行者のワンセット”が必要」という揺るがない理念
株式会社ストラテジットはクラウド型ERP「Oracle NetSuite」の導入と、SaaS間の連携開発に特化する企業だ。NetSuite導入ではデザイン提案・外部システムとの連携・運用サポートまで一貫した支援が可能。SaaS連携サービスでは、自社ツール「Master Hub」を使った低コスト・短工数でのAPI連携のシステム開発を実現する。またアプリストア「SaaStainer」では、誰もが簡単にSaaS間のデータ連携を行えるアプリを提供し、SaaS連携による作業の自動化と効率化を支援する。
掲げるのは、社名の由来である「戦略(ストラテジー)とITを統合し経営改善に貢献する」というビジョン。技術は目的を達成するための手段であって、手段が目的となっては意味がない。そう考える同社は、自社の存在意義を「ユーザーへの価値提供とSaaS事業者の事業成功支援、SaaS市場を拡大するため」と言語化し、ミッションとして追求する。
同社はプロフェッショナルに徹し、真に顧客の経営改善に貢献したい人材を求める。
代表取締役社長 立原圭氏はガソリンスタンド会社に勤務後、通信制の大学と大学院で学ぶ傍らで法人営業を行い、その後は経営コンサルティングファーム、ITコンサルティング会社、受託開発会社でキャリアを重ねた人物だ。
経営コンサル会社でコンサルタントを経験するなか、立原氏はその在り方に疑問を抱く。
「コンサルが目指すべきはクライアントの事業が成功した結果、存在意義を見出し、成長して、利益を出すことのはず。それなのに、ひとまず戦略を綺麗にまとめた資料を作り、目的がはっきりしない会議を行い、何も実行されないのに高額な報酬で契約更新を提案する。それがコンサルならば、やる意味を見いだせない」。事業にインパクトを与えてこそ、コンサルタントの存在意義があると考えたのだ。
さらに事業の成功には、計画を実行するITが重要だと立原氏はITコンサルティング会社に転じる。
ここでもある課題感が湧きあがる。「多額の費用をかけてシステム導入を行って、何の効果も無かったという声があるのはなぜか。ITという手段が目的になってはいないか」。
戦略だけでも施策だけでも、クライアントの経営改善はできない。戦略を立案し、施策でクライアントから合意を得て自らが最後までやり切ってこそ成し得る。立原氏はシビアな現場経験から多くの実感を得て「事業の成功には“戦略と施策と実行者のワンセット”が必要だ」という揺るぎない理念を持つに至った。
「戦略とITを統合し経営改善に貢献する」というビジョンの背景だ。
ビジョンとミッションが価値基準であり判断基準 ゆえに理解と共感を求めたい
その後入社した受託開発会社で、立原氏はシステム開発とSaaSに出会った。
NetSuiteのプロジェクトマネジメントを任されたのも、ここでの経験だ。ITコンサルは対1社であり、システム導入には多額の費用がかかる。それがクラウドを使えば、例えば1千万円かかっていたものが100万円で済む。クラウドやSaaSを導入することで、多くの会社の経営や業務の在り方を変えることができる。立原氏が「クラウドはコンサルの上位互換」だと主張する理由は、ここにある。
状況変化に対応可能なSaaSを活用することで経営課題が解決できるものの、きちんと使えていない会社が多いと立原氏は気付く。使えていたとしても、他アプリとの連携によってさらに便利になるのにやる人がいない。そこに着目し、SaaS導入支援とAPI連携開発に特化して2019年7月に設立したのが同社なのだ。
「我々がやりたいのは物売りや金儲けではなく、経営改善への貢献です。その手段がSaaSであり、我々がやるべきこととして導入支援や連携開発を行っているのです」と立原氏。
ここまでのストーリーに興味を抱く人材に出会いたいと、同社は考えている。
根幹となる理念への理解と目的の共有は、同社で仕事を進める上で必要な要素だ。
「システム連携とひとことで言っても、捉え方で概念が変わるほど幅広い領域。例えば、EAIは大手SIerが手がけることが多く、iPaaSはITリテラシーが高い人じゃないと使いこなせない。そう考えていった時、誰でも簡単に使えるようにするには、SaaS連携のアプリストアがあったらいいんじゃない?という発想で“SaaStainer”を始めました。決して、API連携ビジネスをやりたいわけじゃない。肝心なのは、ユーザーがそれを使うことでビジネスインパクトが出せるかどうかです」。
ここにも手段と目的を混同せず、真の目的のためにやるべきことをやるというぶれない姿勢が伺える。
同社ではメインの担当業務こそあるものの職域を限定せず、働く場所や働き方も自由だ。細かな指示や管理はなく、各自が裁量を持って判断して行動する。ビジョンとミッションがメンバーの価値基準・判断基準となるだけに、「芯」となるそれらへの理解が求められるのだ。
フルリモート・フルフレックス 役職も部署もないフラットなチーム
立原氏は起業するにあたり「いい会社」を作りたかったという。立原氏が言ういい会社とは、“ちゃんと仕事をがんばれる環境”だ。そのため、余計なストレスは限りなくゼロにしたいと考えた。物理的な制約を排除したいと、働く時間や場所を限定しないフルフレックス・フルリモートである。社員は、東京・ルクセンブルク・ロシア・関西・沖縄と国内外各所から業務に取り組んでいる。
必要な情報は社内オンライン上に開示されており、自由にアクセスできる。チャットツールやビデオ会議システムを使い、適宜コミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める。役職と部署はなく、全員がフラットかつ率直に意見を交わし合う。
プロジェクトのゴールに向けて各自の裁量で判断した手段を取り、評価するのは成果のみ。そんな自律自走のカルチャーゆえに、教育についても自学自習が基本だ。グロービスが運営するビジネススキルのオンライン動画サービスのIDを開放していて、各自が自由に学べる。相談したい時は、手を挙げさえすればメンバーの誰かがサポートしてくれる。徹底した成果主義であり独立性が高いチームだが、決してドライなわけでも放置するわけでもない。効率よく成果を出せるスタイルを取っているまでだ。
立原氏は「少数精鋭規模の今と組織が大きくなった時では、やり方は違ってくるかもしれません。もっとうまくいく方法があれば、どんどん提案してもらいたい。大事なのはスタイルを決めることではなく、各自の能力をチームに結集し、成果につなげることです」と話す。
目指すのは、10期末に社員数100名、売上100億円、社員の平均年収1,500万円の企業だ。
立原氏は「立ち上がり間もない今は私の考えが反映されていますが、自分の会社だとは思っていません。会社は世の中に価値を提唱するための器であり、一緒に働く人たちが機会を得るための場。皆で一緒に考えて、そんな会社を作っていきたいです」と力を込める。
求めるのはどんな人物像かを問うと「人間として信用できる人。フルリモートですから、疑いを持つ人は採用できない。当社はスキルではなく、人間性を重視しています」との答えが返ってきた。
最後に立原氏はGreenユーザーに対して、次のメッセージを寄せた。
「クラウド技術は世に必要だと確信しています。それを広げる手助けをしてほしい。市場を作っていくために力を貸してほしい。目的さえ同じだったら手段は何でもいいです。どんどん会社を利用してください」。
SaaSという成長著しい市場で、これからの経営改善に必須のサービスを提供する同社。勢いを増すフェーズに参画するチャンスだ。