企業の決算情報を可視化するWEBメディア『Strainer』でブレイク
株式会社ストレイナーが運営している、経済ニュース専門のWEBメディア『Strainer(ストレイナー)』。その特長は、複雑な経済のファクト情報を可視化してシンプルに見やすく伝えている点と、経済の成長領域にフォーカスしている点にある。代表取締役CEOの野添雄介氏に『Strainer』の基本方針について伺った。
「扱うテーマの中心は、企業の決算情報です。そして、5年後10年後に世の中心に来る可能性がある、テクノロジーやファイナンス、医療など、経済の成長領域の情報をキャッチアップすることにあります」(野添氏)
『Strainer』のサイト構成はいたってスッキリしたものになっており、とても読みやすい。これは、広告を配していないからだ。多くのWEBメディアが広告収入をビジネスモデルに採用しているのに対し、『Strainer』は、課金(有料配信)型のビジネスモデルを選択している。なぜこのモデルを採用したのだろうか?
「経済専門のWEBメディアの読者には、経営者や個人投資家など情報感度が高く、自己投資に熱心な人が多く、重要性のある経済情報ならば、課金をして読んでくれると考えました。最新情報をいち早く有料で配信していくのは、アプローチとして良かったと思います。経営トップが読んでいるうちに『チームで読もう』となるケースが増えており、今後は法人向けサービスを開発していく計画です」(野添氏)
そんな株式会社ストレイナーの母体となる会社を野添氏が創立したのは、2017年7月。当初は『Stockclip』と名乗っていたが、2020年3月に『Strainer』と名を改めた。改名の経緯について野添氏に伺った。
「メディアとして注目されるようになり、情報サービスとしてのコンセプト、価値観を明確に表明しようという狙いがあります。同時に制作体制を強化しています。『Strainer』は『茶こし』という意味。世の中は混沌としていて、すぐ理解するのは大変です。その情報を茶こしのように濾(こ)して、読者の方が大事な点を吸収できるようにしていきたいとの意味を込めました」(野添氏)
「Strainer」という言葉は日本語で「茶こし」という意味がある。
「複雑な世の中から、重要な情報だけをシンプルに抽出・整理したい」という思いが込められている。
東京大学農学部出身。
新卒でDeNAに入社し、エンジニアとして新規事業の立ち上げに従事。
その後、投資銀行向けのSaaSの開発会社を共同創業。
同企業を軌道に乗せ卒業後、2017年7月に「Strainer(旧Stockclip)」を起業。
成長領域の経済情報の可視化に特化することで、唯一無二の存在感を発揮
株式会社ストレイナー創業者の野添氏が「経済メディア」に着目した理由。それは大学時代までさかのぼる。多くの人が常識だと思っていることを、実は時の流れとともに常識ではなくなっている事実(ファクト)をグラフィックやチャートを使って表す「データビジュアリゼーション」に興味を持ったのが、きっかけだという。
「データビジュアリゼーションは、データを可視化する手法です。この方法を使うと世の中のギャップや矛盾がシンプルに理解できます。あるとき、このギャップが企業の決算情報には山のように埋まっていることに気がつき、経済メディアに着目しました。決算情報はとっつきにくい印象を持たれがちですが、企業や経済全体をリアルタイムに数字で表しているもの。丁寧に見ていくとおもしろい事実が次々にわかります」(野添氏)
成長領域の複雑な経済情報をわかりやすく可視化して伝える『Strainer』。現時点で競合が少ないメディアだといえるが、今後、メディアとしてどんな立ち位置を狙っていくのだろうか。
「日本の経済メディアは『日本経済新聞』がずっとトップで、その他にも『会社四季報』など数多くあり、最近では『NewsPicks』といったWEBメディアも注目を集めています。我々はそのなかにあって、より具体的な情報に特化した、成長領域のファクト情報が集まるメディアとしてNo.1を目指しています」(野添氏)
センセーショナルな記事やインパクトのあるタイトルでページビューを稼ぐWEBメディアも少なくないが、経済のファクト情報に特化した専門性やデータビジュアリゼーションへの取り組みによって、『Strainer』の視界は良好だ。
「ジャーナリズムよりも“実用”を意識しています。私自身、企業に関心がありますし、読者も同じ点に興味を持っている人が多いと思っています。単なるメディアというよりも、ビジネスパーソンが日々情報収集に使うプラットフォーム、そう表現したほうが目指す方向性に近いです。優秀なビジネスパーソンや専門家が見てくださっているので、愚直に取り組み、読者数を伸ばしていきたいと考えています」(野添氏)
明るくフラットな社内の雰囲気。読者目線を大切にしたコンテンツ制作を推進
順調に成長を続ける株式会社ストレイナー。成長に合わせて体制をどんどん強化したいところだが、経済情報専門の特殊性もあって、おいそれとはいかないようだ。記事の制作を簡単に外注できず、現在は大半を内製している。複雑な情報をシンプルにまとめるには、決算情報を正しく理解できるスキルと知識が必要で、経験者中心の採用が続いていた。今後は決算や経済の専門知識がないメンバーも雇用し、情報を“茶こし”して発信するスキルを身に着けてもらう予定だという。
「決算書を読んだことがないという人がいたら教えていますし、基本的にOJTで簡単にできるところからどんどん入ってもらうのがスムーズかなと思っています。とくにデザイナーやエンジニアには、OJTをやりながら決算に関する知識を習得してもらいます。経済的な知識がある人は歓迎します。海外企業も扱うので英語アレルギーがない人も大歓迎です」(野添氏)
なにより“読者目線”を持っていることが重要だと野添氏は強調する。同社のビジネスモデルは課金(有料配信)型。社員は正確に情報を把握して、有料会員が満足するレベルのコンテンツを制作していくのがミッションとなる。
「現在は在籍している社員の世代も近く、ほとんど外部のスタッフもいないためか、フラットな社風といえます。30代が多く、オフィス内はいつも明るい感じです。研究者のようになってしまうと、読者のためのコンテンツを作れなくなるので、リサーチ能力はしっかりと持ちつつも、親しみやすい、柔軟な考え方ができる人が当社にはあっていると思います」(野添氏)
いい雰囲気のなかで、読者の信頼に応えるコンテンツを作っていきたいという。制作にあたっては在宅でも支障がない。今後は柔軟な働き方を実現すべく準備を進めている。
「将来的には取材記事などのコンテンツも増やしていきたいと考えています。知的好奇心の高い方には楽しめる仕事だと思います。ご応募をお待ちしています!」(野添氏)
コロナ禍ということもあり、週イチでMTGを行っており、それ以外はリモート勤務としている。
窓からは国立競技場や六本木ヒルズなど大都会を一望できる。