経営中枢の領域において、クライアントとともに考えるコンサルティングから取り組む
卓越したデザインを強みとする株式会社デジタル・アド・サービス。取り組んでいる領域は、コーポレートコミュニケーション、セールスプロモーション、ブランディングなどのクライアントワーク。手がけるメディアは、カタログ、パンフレット、Web、動画、デジタルコンテンツ、イベントなどと広範だ。
特に最近は、「商品をどのようにリニューアルするか?」「ブランドをどのように再構築するか?」「新規事業をどのように開発するか?」といった経営中枢の領域において、クライアントとともに考えるコンサルティング業務から求められるケースが増えているという。
同社の組織も、こうしたニーズに応じた次の体制を構築。
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【編集デザイン部】
目的に応じたコンテンツデザインでクライアントニーズに対応する“開発・実装フェーズ”を担う
【ビジネスデザイン部】
サービスデザインやビジョンデザインとして、クライアントの各組織・サービスのありたい姿、あるべき姿の可視化や共有化を支援する“計画・設計フェーズ”を担う
【業務支援部】
顧客管理、品質管理、プロジェクト推進支援などの対外的業務支援や、働く環境づくりや業務の最適化などの対内的業務支援を行う“推進・拡張フェーズ”を担う
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デザイン会社としての同社のポジショニングの強みについて、代表取締役社長の村田尚武氏は次のように説明する。
「戦略系コンサルティング会社のアウトプットとしては、『こうあるべき』といった提案書である場合が大半でしょう。当社の強みは、実際に目に見える“プロトタイプ”を提案できるところにあります。クライアントのトップや事業責任者にヒアリングする場合、やりたいことのイメージが漠然として整理されていない場合がよくあります。我々は、そのイメージを我々なりに整理・具現化し、カタチにしてお見せします。すると、『そのとおり』『少し違う』と具体化に向けて転がり始めるのです。ここに、デザインの力を感じています」
こうした最上流工程から取り組んだプロジェクトとしては、食品製造・販売業のブランド再構築、専門商社の製品コンセプト構築、小売業の店舗コンセプトメイキング、福祉・介護関連サービス業の理念再構築といった数々の実績がある。
なお、同社のクライアントはアクティブな約30社を含む約100社と多い。うち80%は直取引である点も同社の強みの表れといえる。
お客様からのさまざまなご要望や時代の変化に、しなやかに対応することができる、変幻自在な存在でありたいという想いを。
また、最後のピリオドには、どのようなご依頼にも最高の終止符を打つことができる集団でありたいという想いを込めています。
独自の視点や柔軟な発想によるデザインの力でクライアントのイノベーションを支援
同社は1993年、現会長の村田進氏が創業した。印刷業界に身を置いていた村田会長は、DTP黎明期の当時、デジタルテクノロジーの活用による印刷業務の効率化・省力化にビジネスチャンスを見出し、同社を設立する。そして、旅行工程表、マニュアル、価格表といったフォーマット系印刷物の効率的な製作を強みとして成長を遂げるとともに、デザイン機能を徐々に増強していった。
大きな転機となったのは、2000年頃。大手オフィス環境構築会社のカタログを受注したことを機に、同社に深く入り込むようになった。“紙のデータベース”ともいえるカタログづくりを通じて商品理解を深め、商品説明機能や検索性の追求を通じてデザイン力を高める環境を得た。
「そのうちに、商品のリニューアルや新商品開発、それに伴うブランディングやプロモーション、さらにはコーポレートコミュニケーションと徐々に上流領域まで相談を受けるようになりました。我々も学びながら、試行錯誤をしながら対応し、徐々に力をつけてこられたと自負しています」と村田尚武氏は話す。
その村田氏が2019年12月に2代目の代表取締役社長に就任したことを機に、進展した事業内容に応じた次のVision(企業理念)に更新する。
●Vision:共創と探索で、デザインを変化のインフラにする
・共創:課題とゴールを共有し、共に考え、共に悩みます
・探索:学びと実践を繰り返し、試行錯誤しながらトライします
・デザイン:目的や意義のために、設計から実装までのデザインをします
・変化:不確実性・多様性の中、可能性を模索し変化を考えます
・インフラ:根本を支えている基盤を構築できるよう、並走します
「“VUCA”の時代と言われる中、新型コロナで経済・社会環境や人々の価値観は一気に変わっています。クライアント自身もどうしていいか見えなくなっている今、クライアントとともに試行錯誤しつつ、独自の視点や柔軟な発想によるデザインの力でクライアントのイノベーションを支援していきたいと考えています。その先に、自ずとグローバル展開や規模拡大も見えてくるでしょう。当社自身、常に変化に対して柔軟でありたいと思っています」と村田氏は話す。
創業メンバーと新人世代が交じり合う、おだやかな風土
2020年12月現在、約90名(うち正社員は75名)の従業員が、東京本社と新潟オフィス(約25名)に分かれて業務を行っている。男女半々で、平均年齢は36~37歳。
「会長を含む創業メンバーの6名全員が在籍しています。一方、新卒採用も積極的に行い、両世代が混ざり合う過渡期にあります。この世代間の多様性のせいか、穏やかで優しい企業風土が形成されていると感じます」と編集デザイン部課長の鎌田裕一氏は話す。
そんな同社は、新たなVisionを掲げ直すと同時に、新たに社内に向けて「組織の一人一人が持っていたい意思に基づくふるまい」の“Will”を掲げた。「多様性を生む受容と許容を大切にする」「たすけあう、フォローしあうことを心がける」「お互いの『やってみたい』という気持ちを大切にする」など12項目からなる。「Visionを実現するための行動基準として、この“Will”を策定した。これを指針として、人事ポリシーや人材育成、採用基準などをつくっていく」と村田氏。“Will”が同社のカルチャーを形成していく基軸となるはずだ。
人材育成の施策としては、メインクライアントである大手オフィス環境構築会社の人材開発子会社が提供する研修カリキュラムが受講可能のほか、個別のニーズに応じた研修・セミナー参加の費用を負担。また、ヨーロッパなどで開催される展示会や現地の企業への視察といった機会も設けている。
年1回、全社員が東京に集まり、クライアントも招いて業務成果を発表し合うイベント「d style」を開催しているほか、新潟オフィスではワーキングユニットが学べるコンテンツを用意して発表する「win session」などを行っている(本社でも開催予定)。
メンバー間のコミュニケーションを深める施策としては、数カ月ごとに誰かがそれぞれ自慢のカレーをつくって振る舞うとともに、ちょっとした勉強会を行う「つなガレー」といったイベントを楽しんでいる(目下、コロナで中止中)。
同社が求める人材像について、村田氏は次のように話す。
「自分の足りない部分を常に内省し、学ぶことを意識して人の話に耳を傾け、対話から吸収できるような素直さを備えた人。一方、受け身でなくクライアントに主体的に提案できるといいですね。クライアントのためになる、デザインとテクノロジーの融合を追求するような人材であるとなおいいと思います」
デザインやテクノロジーの力でクライアントのハイレベルな課題解決に貢献している同社。やりがいがある仕事ができるに違いない。