世界的なテーマ「デジタルアイデンティティ問題」を日本で牽引していく
東京・平河町に本社を置く株式会社TRUSTDOCKは、デジタルアイデンティティ事業を展開するRegTech(規制技術)企業だ。特定の業界・サービス向けではなく、KYC(Know Your Customer:本人確認)の分野で利活用される全方位的なプロダクト・サービスを手がけており、日本唯一のeKYC対応デジタル身分証アプリ「TRUSTDOCK」および本人確認API基盤を提供している。
代表取締役CEOを務める千葉孝浩氏は、ソーシャルメディア/アプリ事業を展開する株式会社ガイアックス(セントレックス上場)の出身。「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」領域でのデジタルID研究の成果をもとに「TRUSTDOCK」事業に取り組み、2017年11月に独立した。その後、2019年春に2度目の資金調達をおこない、同年夏にデジタル身分証アプリ「TRUSTDOCK」をリリースした。
取引のデジタル化は、全世界的に不可逆的な流れだ。あらゆる取引がオンライン化される中で、どのように自分が自分であることを証明するか。これがKYCだ。国際的な議論も進められており、OpenID Foundation、FIDO Alliance、ISOなどで技術的な仕様が固まりつつある。
TRUSTDOCKは、過去と未来をつなぐデジタルアイデンティティのあるべき姿を模索し、“日本版デジタルアイデンティティ”の確立を目指す。社会的効力のあるデジタル身分証としての役割を「TRUSTDOCK」が果たし、財布から物理的な身分証を取り出すことなく本人確認を実現。BtoC取引をおこなうあらゆる事業者に、身元確認業務の実務を担うKYCのプラットフォームを提供している。
TRUSTDOCKが提供するアプリやAPI群は、法律的な要件を満たすだけでなく、オンライン上でおこなわれるあらゆる不正パターンを抑制する仕組みを内包する。TRUSTDOCK内部では、KYCアプリを開発するほか、24時間365日、身分証明書による身元確認業務がおこなわれている。そのため、法改正に準拠するのは当然として、実務を踏まえた不正対策が一足先に導入できるようになる。TRUSTDOCKは未来へのミッシング・リンクを導き出すため、現状の最適解を探し出し、今この瞬間に利用できるベストソリューションを提供していく。
本人確認をAPI経由で代行する、日本で唯一のデジタル身分証アプリ
KYCの目的は、(1)年齢など、商品/サービスを購入/利用する資格があるか、(2)氏名/住所/生年月日など間違いなく本人か、を確認することにある。近年は通信サービスや金融取引をはじめ、さまざまな事業領域で「身分証明書を写真撮影してアップロードする」という手法が用いられている。
しかしこの手法は、フルデジタルに比べて改竄の可能性が高く、本人確認手段としては完全ではない。KYCのためのコストも、業界やサービス内容によるが1人あたり100~5000円かかるとされ、日本全体の「本人確認市場」は1兆円規模、というデータもある。さまざまなBtoC事業者は、簡単、即時、高精度のデジタル本人確認サービスを求めている。
eKYC対応のデジタル身分証アプリ「TRUSTDOCK」は、既存WEBサイトやスマホアプリ上にJavaScript「TRUSTDOCKアップローダー」を貼るだけで、他ドメインへ画面遷移することなく、ブラウザのみでeKYCを実現できる。身分証アプリでセキュアなeKYCをするか、WEBページ内の専用JavaScriptのモーダルウィンドウ上でeKYCをするかは、任意に選べる。導入側は、面倒なUI構築は一切不要。ちなみに特許取得済みだ。
「TRUSTDOCKアップローダー」には、TRUSTDOCKが提供する個人向けAPI群の「個人身元確認業務API」、「個人番号取得業務API」、「ID-Selfie-API」。「補助書類確認業務API」が組み込まれている。準拠している法律は、改正犯罪収益移転防止法、割賦販売法、古物営業法、携帯電話不正防止利用法、出会系サイト規制法など。サービスの裏側ではKYC専門スタッフが目視による確認をおこなっており、不正・偽造対策が社内に自動的に蓄積される。
2019年には、「身分証専用カメラアプリ」をリリースし、一般的な写真付き公的身分証(運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、マイナンバーカード、住基カード、在留カード、特別永住者証明書)をすべて網羅する本人確認アプリを構築した。KYCのための郵送でのやりとりが不要になり、ネット上ですべて完結するため、あらゆるオンラインサービスのアカウント開設が高速化される。
仕事に集中できる「大人スタートアップ」が、エンジニア職を初採用
2020年11月時点の従業員数は20名で、平均年齢は34~35歳。全員が中途入社だ。男女比は男性:女性=8:2で、役員3名のうち1名が女性。大半のメンバー家族持ちで、これまで3名が育休を取得した(うち2名が男性)。スタートアップとしては珍しい育休取得実績だが、仕事も家族との時間も含め、「一人ひとりの人生を大切にしていきたい」というポリシーが現れている。
各メンバーはベンチャーやスタートアップでの経験が豊富で、本人確認に関する有識者ばかり。技術面ではISOやOpenID Foundationなどに詳しく、経済産業省や総務省などの委員会でメンバーを務めた人もいる。
平均残業時間は月20時間程度と少なめ。勤務場所は、東京・平河町の本社、東京・大崎の東京オフィスの2拠点に加え、リモートワークも導入している。ミーティングは月1回、全社会議が開かれ、セクションごとの売上報告や、プロダクトの進捗などが議題にあがる。
主な待遇・福利厚生は、扶養手当、定期健康診断、ストックオプション(不定期)など。各セクションの交流を深めるため、月1回、全員でのランチも開かれる(夜の飲み会などはなし)。
開発は、これまでメガベンチャーのエンジニアが副業として関わるケースが多かった。今回の採用は、TRUSTDOCKにとって初のエンジニア採用だ。求める人材は、事業やプロダクトに共感できることが大前提。そのほか、設計・テストを含め高い品質のコードを書き、コードで課題解決ができること、業務内容を理解してモデリングし、コードに落とし込むことができることや、(リモートワークの場合もあるので)自身のパフォーマンスを安定的に維持できる、自律型の人材を求めている。
TRUSTDOCKのエンジニアとして働く一番の魅力は、KYCというインフラを、コードを書いて自分の手でつくることができる点だろう。ソフトウェアのテストカバレッジは95%にのぼる。組織としてもプロダクト開発ラインの強化に取り組んでおり、事業の変更可能性に強い開発体制が整備されつつある。スピード感を持ちつつ、「大人のスタートアップ」ならではの成熟した雰囲気も、人をひきつける。