JetB株式会社

同社は、小規模向けのWebサイト制作に特化したWeb制作会社だ。オープンソースのコンテンツ管理システム（CMS）であるWordPressをベースにした、オリジナルCMS『JetCMS』を開発し、低価格で集客力のあるWebサイトを提供している。

JetBが小規模の会社をターゲットにCMSを活用しているのは、マーケットニーズを背景にした事業戦略。オウンドメディアという言葉が注目されたが、自社が持つ情報を積極的に発信して、会社のファン化を推進するのがこれからのWeb戦略の中心だからだ。しかし、中小企業がオウンドメディアを持つのは予算的に難しい。そこで同社はCMSに注目した。

「パンダアップデートとペンギンアップデートで、従来のSEOやリスティングをするよりも、Webサイトを自社で育てるほうが、検索結果で上位に表示されるようになりました。WordPressなど自分でコンテンツ制作ができるCMSを導入して、お客様がブログを書く要領でコンテンツを充実させ、集客につなげるのがJetBのミッションです」（代表取締役・竹内勇人）

CMSを活用して自社のWebサイトを作りたいクライアントの依頼を受けて、WordPressで作ったWebサイトを提供するのがJetBのビジネス。だがそれだけでなく、WordPressをベースにした、オリジナルCMS「JetCMS」を開発し提供している。

JetCMSには2つのシリーズがある。「JetCMS ECテンプレート」は、文字通りECサイトの機能を持つCMS。ショッピングカート型のECサイトよりも、情報発信力に優れ、コンテンツマーケティングに最適なWebサイトを作ることができる。もう一つの「JetCMS 地域王」は、同社独自の特許出願技術を用いて地域毎のトップページを制作する。

「エアコン清掃や水回りのトラブル、リフォームなど出張型ビジネスを展開する事業者が、『JetCMS 地域王』でWebサイトを作ると、地域毎にLPの要領でトップページを作ることができます。現在のGoogleの検索エンジンでは、専門性の高いページがヒットするため、埼玉の会社でも群馬まで出張するなら、群馬の施工実績などを紹介したページにすれば、群馬の人が検索したときにヒットする確率が上がるというわけです」（竹内氏）

実際に『JetCMS』を使って集客がアップしたという声は多い。同社のホームページでは、そんなお客様の声を積極的に発信している。

「動画インタビューに答えてもらい、成功例を示すことで同業者からの依頼を受けやすくなります。ある特定の業界に特化しているからアウトバウンド営業も可能となります。Web業界では、お客様にリテラシーがない場合、情報の非対称性が生まれやすく、お客様がコスト構造をわからないのをいいことに、それを悪用するような業者もいます。お客様インタビューを見てもらうことで、Web制作会社への不信感を払拭してもらう効果も期待できると考えています」（竹内氏）

SEOも時代によってやり方が変わってきた。現在は「コンテンツファースト」と言われるように、有益な情報を持つWebサイトが上位表示される。SEO業者の中には新しいSEOに対応したコンテンツ制作を請け負ってくれるところもあるが、コンテンツを作るなら専門的な知識を持つクライアント自身でやる方が賢明だ。クライアントが自らコンテンツを作れば、一般ユーザーにとって有益な情報を持ったWebサイトを構築でき、検索順位も上がる。

「オーナー自らコンテンツを作るのが、現在のSEOでの正しいWebサイトの在り方だと考えています。WordPressはSEOに好ましいとGoogleの開発者も言及しているように、WordPressはプラグインも豊富で、表現力が高いCMSです。JetBでは、最初にクライアントにサーバドメインを契約してもらい、所有権をクライアントに渡しています。そうすれば、WordPressの勉強をしてコンテンツ更新だけでなく自分で拡張をすることもできるからです」（竹内氏）

同社は「資産になるWebサイト」を謳っている。自分で所有権を持ってWebサイトを育成していくことで、集客につなげてもらうという考え方だ。ただ、クライアントが自分で拡張しようとして壊してしまう場合もある。そんなときの保険に、メンテナンスパックを用意して、万が一、不具合が出たらJetBが修復するサービスも行っている。

「ECサイトは自分で商品を随時登録しないと機能しないため、クライアントにはオーナーシップを持って使いこなしてほしいと考えています。そのために、マイページのような『オーナーズサイト』を設けて、使い方の説明や効果ある工夫のノウハウ、最新情報を発信しています。所有権こそお客様に渡していますが、無料でサポートも続けています」（竹内氏）

正直に言って、ここまで親身になるWeb制作会社は少ない。制作したWebサイトの所有権を手放さずに、アクセス制限を設け、事あるごとに料金を発生させているWeb制作会社すらあるのだ。天と地の差とは、このことだろう。

「Googleもガイドラインで言っていますが、SEOにとって大切なのはサイトの構造です。無料で作ることができる自作のサイトではSEOを考慮したサイトを作ることは難しい。自作サイトの成果が上がらないからといって、外部のSEO業者に頼んでも、やれることはもはや限られています。最初からSEOを意識した構造のサイトを作り、中身であるコンテンツの制作に力を入れることで集客力のあるWebサイトが構築できるのです」（竹内氏）

SEOで大事なのはサイトの構造とコンテンツの中身。コンテンツはオーナーに作ってもらい、SEOに有効な構造を持ったサイトを作るのが、JetBの仕事なのだ。

一般的なWeb制作会社とは違った独特な雰囲気を持つJetB株式会社。代表がSEO営業出身ということもあるだろうが、それ以上に多彩な経歴を持った人が集まっている会社ということが起因しているのだろう。竹内氏も俳優を志望して演劇活動をしていた元役者。そのほかにも元バンドマンがたくさん在籍しているという。

「当社はなぜか元バンドマンが多いんです。現役のバンドマンもいます。ギタリストだけでも7・8人います。社員だけで3バンドぐらい組めますよ。私の趣味もギターを弾くこと。メタリカを弾くのが好きなんです」（竹内氏）

リファラル採用を中心にメンバーを増やしてきたから、同じような趣味を持った人材が集まるのだが、特に意識して集めているわけではないという。

「自分たちでよく『俺たちは野武士』と言っています。アカデミックな経歴を持ったメンバーが少なく、Web業界のエリートがいないんです。みんな実戦でスキルをつけてきた叩き上げです。だからというわけではありませんが、当社では制作部隊と営業部隊が対立しません。一般には利害が対立しがちですが、JetBではお互いが存在しないと会社が成り立たないのを理解し、制作と営業が互いのことを尊敬しながら働いています」（チーフディレクター・長谷川淳）

Web制作会社のトップは、デザイナーやエンジニアであるケースが多いが、JetBはトップが営業出身。けれども、やみくもに受注しても制作が追いつかないとクライアントを満足させられないのを心得ている。だからバランスが取れるのかもしれない。営業が主導するでもなく、制作部隊は自由に働いている。

「ワークスタイルに制限はありません。本来はちゃんとしたルールを設定しなければいけないのかもしれませんが、ルールでガチガチに縛ってしまえば、良いアイデアも出てこないのではないでしょうか」（竹内氏）

自ら“大企業病”に陥る会社もあるが、JetBには無縁の話のようだ。さらにもう一つ、JetBが大切にしていることがある。それは「スピード感」だ。

「前に進むには早く対応して決断すべきです。スピードはお客様にとって信頼感。営業はスピードによって結果が変わります。Web業界は変化が激しいことから、時代の流れを読んで素早く経営の舵を切る必要があります。破壊的イノベーションが起こる可能性も否定できない業界だけに、素早く動くことで生き残ることができると考えています。朝令暮改でいいと思います。それぐらい変化を意識しないといけません」（竹内氏）

JetBでは、面接の際にいつもリラックスして、フランクに話をするように心掛けているという。面接とはマッチングの場。一方的に選別するのではなく、お互いに相手を知り合うチャンスだからこそ、肩の力を抜いて話すべきと考えているのだ。Web業界で働く人で、会社の方針に違和感を覚えているならば、JetBを訪れてみてはいかがだろうか？