先進技術への積極さや、計量・計測のトータルソリューション企業など、老舗企業とは一味違った柔軟な発想の源泉は何なのでしょうか?
いろいろな経験を積んできたからかもしれません。大学卒業後は半導体の輸出入をしていた商社に入りましたが3年目に辞めて、バックパッカーで世界のあちこちを放浪……。その間に人権問題に取り組むPLOの人と出会って自分の意識が変わる経験をしました。 その後、田中衡機工業所へ入社したのですが、ほどなく飛び出して半年ほどアメリカでふらふらしていたんです。帰国後は、半導体など技術系雑誌の記者をして日本とアメリカの企業トップの考え方のあまりの落差に驚いたり、映画のプロデューサーに声をかけてもらって制作デスクを経験しながら助監督から若手を育成する方法を学んだり。その頃は、ほとんど給料という給料をもらっていなかったので、かなり貧しい生活も経験しました。でも、それも含めて、本当にいい糧になっていると思っていますし、田中衡機工業所しか知らない人生よりも視野は広がったと感じています。 先代から「そろそろ帰ってこい」といわれて戻ってきたとき、社員からは相手にされないだろうと覚悟していたのを覚えています。それなのに、私のことを待っていて、温かく迎えてくれました。それもあるからでしょう、今はこの会社のために力を尽くしていこうと心から思っています。
社員への想いを教えてください。
社員には少しでも幸せになってほしいと思っています。会社が好きだといってくれる社員がいることは、本当にありがたいことですから。 だからこそ、働きやすい環境づくりには特に力を入れています。女性社員が子育てと仕事を両立しやすいよう、有給休暇を1時間単位で取得できるように改めたのも、その一つです。子供の用事で朝少し遅れなければならないとき、1日有休を消化するのはもったいないでしょう。また、転勤についても本人の意向は尊重するよう心掛けています。子供が小さいので、しばらくは子供との時間を大切にしたいというのに、無理矢理転勤させるようなことはしません。もちろん、会社として転勤してほしい理由や意味を説明して説得しようとはしますが、納得しないまま強制することはしませんね。 ただ、私が「良かれ」と思ったものが、みんなも必要としているとは限りません。より良い環境へと改善していくために、社員たちと一緒に会社づくりを実施していきたいと思っています。
社員に期待することは何でしょうか?
会社は組織ですから、言われたことをきちんとやり切れる人が必要です。でも、できれることなら、今何をやるべきか自分で考えて動けるようになってほしいというのが本音です。また、何をやるにしても、人との関係性の中でしか成しえないことばかりですから、自分のことや自分の考えなどを相手に理解してもらうための努力ができるようになってほしいとも思っています。 幹部候補生が社外のセミナーに参加して帰ってきたとき、他の会社に比べて当社は本当に自由に意見を言える雰囲気があるといっていました。せっかくですから、この雰囲気を利用して、自分のやりたいことを実現していってほしいですね。そういった積極さを社員には今後期待していきたいと思っています。
社員のモチベーション維持・向上のためにしていることはありますか?
私が何かをするというよりも、社員の邪魔をしないように心掛けています(笑)。人が人にモチベーションを与えることなどできないというのが持論だからです。 そもそもモチベーションというものは、その人の内側からわき上がってくるものであると考えています。周りにいる人にできることは、わき上がってきたモチベーションが萎んでしまわないように、また、もっと膨れ上がるようにサポートできることだけですから。 だから、モチベーション高く何かに取り組もうとしている社員には、その人が動きやすいように環境を整えてあげたり、プラスになりそうな経験を積めるよう、機会を設けてあげるようにしています。たとえば、若手であってもアメリカへの留学経験があって海外の仕事に携わりたいという社員にJICA(国際協力機構)関連の仕事に入ってもらったり、ロシア語を学んでいた社員には、ロシア語圏で開催された展示会の現地調査にいってもらったりしました。
最後に、応募者へのメッセージをお願いします。
当社は創業110年以上という業歴がありますが、ベンチャーマインドを持って、新規事業の創造、開拓に挑戦しています。今の時代、守りに入ったら終わってしまいますから。 それに、現在着手している新しい事業はこれから成長させていこうという段階ですので、今加わってもらうメンバーには創業メンバーのつもりで挑戦していただきたいと思っています。 当社の考え方に共感できて、周りの人を巻き込みながらプロジェクトを前へ進めていくことに自信があるなら、ぜひ、一緒にやりませんか。お待ちしています。