障害者雇用を大きく変革する可能性を秘めた求人サイトを提供
株式会社スペシフィックが開発・運営する障害者向け求人サイト『エラビバ』が、昨年オープンした。そのことは新聞やテレビ、ネットメディアなどで数多く紹介され、わずかオープン3日で登録に関する問い合わせが数百件届くなど大きな反響を集めている。その理由について、代表取締役社長 兼 CEOの森木恭平氏は「圧倒的に障害のある方に寄り添い、真実を伝える求人サイトづくりを目指しているから」だと語る。
「障害を持った方は、現在900万人を超えています。そのうち働きたいと思っている方はおよそ350万人もいるのに、実際に働けているのは49万人に過ぎません。働きたい人の14%、障害のある方全体で見れば、わずか5%しか雇用されていないのが現状です。この背景には、企業目線の偏った情報の多さや、雇用率という法律で障害者を雇わなければならない企業の事情などがあると考えられます。また、障害のある方が真に必要とする情報を手に入れるまでに、物理的な壁や配慮という名の曖昧さが存在している点も大きな問題です」
障害者向けの求人情報はハローワークでも扱われているが、サービスを受けるには障害者自身がハローワークまで足を運び、登録作業を行う必要がある。しかし、障害者にとって電車を乗り継いで訪問することは健常者が想像する以上に簡単なことではない。また、ようやく手にした求人情報も、障害者への配慮からオブラートに包んだような曖昧なもの、キレイに彩られたものが多く、実際企業へ行ってみると想像と違っていることが少なくない。いわゆるミスマッチが多く発生してしまっているのだ。
「障害のある方は、真実に近づくまでに疲弊してしまうことが本当に多いんです。この負を解決するため、エラビバでは、着飾った上辺の情報ではなく、障害のある方にとって有用な実のある情報を発信していきます。情報量はハローワーク2万件に人材紹介会社の求人も合わせた日本最大級の規模をそろえ、スマホ一つで自宅に居ながら仕事探しができるのでハローワークや人材紹介会社へ出向く必要もありません。また、ミスマッチを最小限に抑えるために、障害のある方がどのような就職活動で成功しているのか、どのような企業で活躍しているのかといった“障害に応じた就職活動の活きた情報”をWeb無料カウンセリングで提供します。当社のサービスでもAIによるデータ分析は取り入れていく予定ですが、このような“人”が介在することでしか提供できない、きめ細やかさや温かみも大切にしていきます」(森木氏)
障害者の就職支援の次は、定着支援
株式会社スペシフィックが当面注力していくのは、働きたい障害者が一人でも多く、納得のいく仕事と出合う機会を創出することだ。そして、その次には定着を支援するサービスの開発・提供も考えていると森木氏は語る。
「頭の中には、すでにいくつかの方法が浮かんでいますが、もっとも大切なことは、障害のある方の隣で働いている健常者の存在だと思っています。『障害者だから』と周りが必要以上に遠慮したり、配慮しすぎたりしてはお互いにとって良いことはありません。互いがありのままを受け入れ、認め合い、できること、できないことをはっきり伝えあえる関係性をつくることが、定着率の向上につながっていくと思っているからです」
スマートフォン一つで日本最大級の障害者向け求人サイト「エラビバ」は、2021年5月6日より「障害者雇用バンク」に名称をリニューアルした。また、「エラビバ」は、新サービスとなる障害者向けサテライトオフィスの名称となった。
スペシフィックの根幹を支えている、こういった考え方に共感する協力者も多い。エラビバのオフィシャルアンバサダーであり、自身も車いすでアイドル活動をしている仮面女子のメンバー・猪狩ともかさんがそうであり、元仮面女子で現在は渋谷区議を務める橋本ゆきさんや、日本初の障害者のための労働組合『ソーシャルハートフルユニオン』書記長の久保修一さんなども協力を惜しまない一人だ。また、2021年からはタレントのつるの剛士さんもオフィシャルアンバサダーに就任された。
「本当に多くのステークホルダーが応援してくれています。その期待に応えるためにも、障害者雇用バンクというビジネスを成長させ、障害者雇用の変革に貢献していきたいと思っています」(森木氏)
このような新規事業への挑戦を可能にしているのが、安定的な収益源となっている一般派遣事業とWebマーケティング事業の存在だ。士業に特化した日本では珍しい正社員型の事務派遣事業は、安心してキャリアを積みたい労働者と期間を限定することなく人材を活用したい企業側の要望をとらえ、着実に実績を伸ばしている。一方、Webマーケティング事業も、エラビバの運用だけでなく社外のニーズにも応えることで成長中だ。
「一般派遣業とWebマーケティング事業は粛々と実績を積み上げていき、両事業で築いた強固な基盤と資源をエラビバに投下して、事業成長を加速させていく。それが当面描いているビジョンです」(森木氏)
社会に貢献したいという思いを共有したアットホームな会社
株式会社スペシフィックが大切にしているバリューは、「誇りを持てる会社を創造する」ことだ。一人ひとりの社員やその家族が、「自分が大切に想う人」に入社を勧められるような組織でありたいと森木氏は強調する。
「当社の事業の基本は、ネット×リアルだけでなく社会貢献というキーワードを重視しています。その上で、私たちにしかできないもの、マーケットのセントラルプレーヤーであり続けられるものを手掛けていきたいのです。そのため誤解を恐れずに言えば、何が何でも障害者雇用領域だけをやり続けていこうとは考えていません。基本的な考え方を満たすもので、そこに課題があるのなら、私たちはその解決に挑戦したいからです。だから、障害者領域で働きたいと強く思う人は介護など、障害者領域に特化した企業のほうが力を存分にふるえるかもしれません。社会に貢献できる意義深いビジネスに携わりたいという思いが根っこにあって、今、目の前にある大きな課題が障害者雇用であるなら、その解決に全力を尽くす――そんな思考の人が当社には向いていると思います」
森木氏の言葉をそのままうのみにすると、どこかビジネスライクな冷たさを感じてしまうかもしれない。しかし、実際は真逆だ。スペシフィックの社風を端的に表現するなら“仲間と一緒に、熱量高く、仕事を思い切り楽しむ”人たちの集団だろう。たとえば、障害者雇用関連の新規事業を企画していると聞いた社員の多くは、誰に強制されるわけでもなく、率先して障害者雇用関連の参考書を買って密かに勉強を始める。やるべきことが発生したときは深夜なのにSNSで「私はこれならできるよ」などとコメントが飛び交う。隣の人の成長のために汗をかくことを厭わないし、周りの人のために真剣に思いをめぐらすことができる。究極にアットホームな会社なのだ。
「社会貢献という軸を共有した家族のような会社です。だから、今いる会社で『家族や絆、社会貢献といったキーワードで自分が大切にしているものを守れない』と思っているなら、思い切ってウチに来てください。きっと気の合う仲間たちと面白い仕事ができると思いますよ」