「3Dアバタープラットフォーム」を社会インフラとして提供へ
株式会社VRCは、3Dアバタープラットフォーム事業を展開しているスタートアップである。
画面上で自分と寸分違わないアバターに、布地の質感までわかる超リアルな画像の服を着せ、360度から見るだけでなく、歩いたり走ったりした場合の姿まで確認することができる――。同社が2021年12月に正式リリースする「バーチャル・コーディネート」だ。これによって、従来のECではかなわなかった“試着”が、オンライン上でできるようになる。
同社では、人の全身をわずか0.2秒でスキャンし、20秒で3Dデータ(アバター)を作成する3Dボディスキャナ「SHUN‘X」や、エンドユーザーがスマートフォンで撮影した画像を用いて同様の3Dデータを作成できるアプリ「SHUN‘X MOBILE」を開発。それとともに、デジタル化されている服をアバターにフィッティングさせるプログラムを開発し、SDKとしてアパレル系リテール企業に提供する。かつ、取得した3Dデータは個人情報としてブロックチェーンで管理され、最高レベルのセキュリティーを担保。
「これほどのクオリティの3Dデータによるバーチャル試着が秒単位で可能なシステムは、世界初であると確信しています。アパレル業界から強く求められることは間違いありません」と代表取締役社長の謝英弟(シェ・インディ)氏は胸を張る。
このインパクトは計り知れない。コロナ禍によってECが格段に進展する中、エンドユーザーはバーチャル空間で客観的に試着できることで、自分が欲しい服を確実に購入できる。それだけでなく、体型をスキャンしたデータが蓄積されることで、どんな体型の人がどれぐらいの割合で存在しているかを割り出すことができる。これらのデータがアパレル業におけるプレシジョン・マーケティングや生産計画を精緻化することで、壮大なムダの改善に貢献できるのだ。
「環境省は“サステナブルファッション”の必要性を叫んでいますが、服1着つくるのにCO2を約25.5㎏排出し、水を約2,300ℓも使っているのです。しかし、嗜好性の高い服は大量に売れ残り、廃棄されています。世界の79億人弱の人口のうち、きれいな水を飲めない人が6億人もいるとの調査結果もあります。こうしたアンバランスを少しでも是正したい。そんな思いが根底にあるのです」と謝氏は力を込める。
3Dアバタープラットフォーム事業が向かうのは、アパレル領域だけではない。作成した3Dアバターは“デジタルツイン”として、あらゆる領域に適応できる。エンタテインメントでは“メタバース”に、またメタボ対策などのヘルスケア領域にも展開可能だ。事実、同社は大手広告代理店や通信キャリア、ヘルスケア系企業などとパートナーシップを組み、サービス展開を画策しているところだ。
「当社が志向しているのは、3Dアバタープラットフォームを社会インフラとして提供し、バーチャル空間のエントランスとなること。これによって、多くの人を笑顔にしたいと願っています」(謝氏)
3Dに関わる最先端技術を活用してリアルな生活環境を改善し、人々の幸福に貢献
同社の創業は、2016年。その経緯を、謝氏は次のように説明する(謝氏の略歴やパーソナリティはPRタブ参照)。
「元々画像処理に関心があり、大学院の博士課程まで進み、コンピュータビジョンの研究で博士号を取得しました。しかし、実用分野との間に距離を感じ、もっと多くの人に利用される実用技術を開発したいと考えるようになったのです。当時2Dの画像は社会の隅々に活用されるようになっていましたが、人が実際に生活しているのは3Dの空間です。そこで、3Dを記録するニーズは当たり前になると感じ、研究開発に着手しました。その根底には、人のためになるサービスをつくり、人を笑顔にしたいとの思いがありました」
VRCとは、“Virtual Reality + Creative”の略。最先端技術によってVRに新たな創造を付加していく思いを込めている。
起業前に開発した試作機をもとに完成させたボディスキャナ1号機を「CREATEC JAPAN 2016」に出展すると、通常の10~20分の1という圧倒的なスピードとコストパフォーマンスが評価され、デジタルイメージング部門でグランプリを受賞。一躍注目を集め、大手企業を中心に多数のオファーを受けるようになった。
2018年には、さらなる高速化を実現させた「SHUN‘X」をリリースしている。
今後、3Dアバタープラットフォームは、アパレル産業におけるバリューチェーンの根幹とる大きな可能性がある。取締役の張彦鵬(チョウ・ゲンホウ)氏は次のように強調する。
「このプラットフォームは試着だけでなく、デザイン→サンプル製作→生産→販売というあらゆる工程が3Dデータで行われる際のハブとなり、全プロセスの効率化やスピードアップ、品質向上に大きなインパクトをもたらすことになると思います」
「その先に目指しているのは、“GAFAに並ぶ存在”と公言しています」と謝氏。利潤を追求するという意味においてではなく、グローバル経済の効率化を促進するプラットフォーマーという意味においてだ。
そんな同社が掲げる経営方針は、次の“トリプルE”。
①Efficiency(効率)
②Ecology(自然環境)
③Equilibrium(平衡)
「3Dに関わる最先端技術を活用して、リアルな生活環境を改善し人々の幸福に貢献する社会インフラ企業を目指します」と謝氏は話す。
掲げるバリューは“明勤利衆”、皆のためになることを追求する
同社の従業員数は、業務委託を含めて約30名(2021年11月現在)。これに、提携先の海外研究開発機関などのスタッフ約10名が密接に絡み、事実上約40名が同社のメンバー数と言える。組織としては、研究開発、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド/インフラ、ビジネス、バックオフィスの領域に分かれ、緊密に連携し合いながらそれぞれが主体的にタスクに取り組んでいる。
メンバーは、日本人のほかに中国人、韓国人、ドイツ人が集まる多国籍集団だ。
「日本をベースに活動しているので公用語は日本語ですが、中にはまだ流暢でなく苦労している人もいます。そんな事情もあって、社内には困っている人を助け合うサポーティブな雰囲気が色濃くあります」と謝氏は話す。
そこで、謝氏が掲げるバリューは“明勤利衆”。「皆のためになることを追求する」といった意味だ。この価値観は、前述の同社の経営方針や謝氏の事業理念に通底しているものである。
「“利他主義”と言い直すこともできますが、自分のためではなく、周囲の人や家族のために行動するという価値観が全体に浸透しています」と取締役の清末太一郎氏は言う。
一方、仕事に対しては妥協することなくシビアに追求する姿勢が色濃くある。清末氏は続ける。
「ベンチャーとしていろいろ大変な局面に突き当たることは多々ありますが、それを正面から受け止め、どうすれば乗り越えられるかポジティブに発想し課題解決に向かって行動するカルチャーがあります」
「メンバーには『コンフォートゾーンからジャンプアウトしよう』と呼び掛けています。個々のメンバーが成長することで、全員共通のゴールにアプローチできるからです。そういう点で、当社はメンバーの成長の舞台として使ってほしいと考えています」と謝氏は補足する。
多国籍の上、20代から60代までのメンバーが揃うという多様性の半面、家族的な雰囲気の濃い同社。誕生日を迎えたメンバーがいれば、ケーキを買ってきてお祝いをしたり、「昨日手伝ってもらったお礼」と自作のおかずをランチタイムに振る舞うメンバーがいたり。メンバーの関係性は、役員層を含めてフラットかつフランクだ。
「だからこそ、オープンマインドの方に来てほしいと思っています」と清末氏は言う。
そんな同社が求める人材像について、謝氏は次のように期待する。
「能力が高いに越したことはありませんが、どれだけ能力が高くても、当社のカルチャーにそぐわない方は難しいと思います。能力よりも、努力し続けることができること。失敗を恐れずチャレンジができること。そんなポテンシャルこそ重視しています」
GAFAのような存在を真剣に目指している同社。今ジョインすることでコアメンバーとなり、10年後にそんな存在の中心人物になっていることは、夢ではないかもしれない。
株式会社 VRCの社員の声

30代前半
2020年07月入社

30代後半
2020年04月入社
結構複雑なソリューションが皆...続きを読む

30代前半
2019年07月入社
そこから設計の詳細を...続きを読む