株式会社スリーエース

株式会社スリーエースは設立から約40年の歴史を持つシステム開発会社である。創業地である地元京都を中心に業務系システムの受託開発に携わる。

同社が携わる開発プロジェクトは多種多様だ。販売管理、顧客管理、在庫管理などのOAシステムはもちろん、タクシーの配車システムや回転寿司の注文システム、物流システムなど、業界も種類も多岐にわたる。スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスで動くアプリ開発にも早くから取り組み、数多くの実績を残している。

開発体制も契約によって様々。もともとは自社内開発がメインだったが、近年は大手メーカーとの取引が増えてきたこともあり、請負契約や準委任契約に基づいた常駐型の開発も増えている。後者は同社の中では人材派遣事業に位置づけられているが、非正規の登録派遣ではなく、あくまでも正社員派遣となっている。派遣事業を担うITスタッフ部部長・清水智氏は次のように語る。

「自社内開発、常駐型開発、いずれの場合もプロジェクトのほとんどが代理店などを挟まない一次請けのプライム案件です。大手メーカーのプロジェクトの場合、セキュリティ上の制約があり、持ち帰りは出来ませんので、基本的にはチームで常駐させ、技術の蓄積や若手の育成に努めています」（清水氏）

「スリーエース」の社名は、“システムインテグレーション”、“ソフトウェア”、“サービス”の3つの分野でエースを目指すという想いが込められている。顧客の業務やニーズに対する十分な理解と分析を元に的確なシステムを提案し、それを実現するために質の高いソフトウェアを開発。そして、システムを維持管理する上で必要とされる情報と高度な専門知識を持った技術者を提供する。それが同社のシステム開発部門に一貫して流れるサービス方針であり、その方針の下で培った技術と提案力が大きな強みだ。営業専任者もいるが、ある程度の関係性が築かれた取引先の個別案件に対しては、リーダークラスの技術者が提案段階から積極的に関わっていく。

そういった強みのもと持続的な成長を遂げてきた同社。2018年6月には防犯製品や自動ドア、産業用機器などの各種センサの製造販売でグローバル展開するオプテックスグループに参画し、さらなる進化に向けた準備をスタートさせている。

「オプテックス社のメイン製品に載せるソフトウェア開発のプロジェクトがもうすぐ始まります。IoT分野での連携も期待されているところですので、グループの一員として貢献しながら、弊社自体の新たな強みを構築していきたいと考えています」（清水氏）。

同社の設立は1981年8月。社員数3名からスタートし、少しずつ規模を拡大してきた。一貫した経営テーマは“ひと”。顧客への貢献とともに、従業員の育成と幸福を目指して事業を展開してきたのである。その事業範囲はIT領域にはとどまらず、2006年には幼児教育事業に進出し、現在は第2の事業の柱として同社の成長に貢献する存在となっている。

システム開発事業は京都に軸足を置きながら近畿地区にフィールドを広げている。エンジニアの確保は、長らく中途採用のみで行っていたが、2000年代半ば以降は新卒採用も開始して、毎年コンスタントに採用を重ねてきた。もちろん長い事業経緯の中では、景気の波に影響されることもあった。近年における最大の危機は2008年のリーマンショックだ。ただし、その際にも解雇は一切しなかった。幸いにも派遣契約のほとんどが途切れずに継続した。また、ちょうどクラウドやスマートデバイスなど、テクノロジーの新しい潮流が台頭していた時期であったことも好機として捉えた。

「リーマンショックが来る前から、社内ではVBで開発する案件は減るかも知れないという話をしていました。そこでリーマンショックの影響で案件が減った際には、新技術を獲得する時間に充て、『iPhone』アプリや『Android』アプリの開発にトライしました。それによって、案件が減った中でも社員のモチベーションを維持することが出来ましたし、新しいことに取り組みたいというクライアントのニーズに応える体制を作ることが出来ました」（清水氏）

もともとスマートデバイス向けのアプリが業務系システムに使えるという確信はなかったが、建設業のクライアントから建設現場の施行写真をアップロードして管理するアプリの依頼を受けたことがきっかけとなり、受託案件でも積極的に提案に盛り込むようになっていった。

アプリ開発の他にも、クラウドを活用した環境構築にもいち早く対応するなど、新しい技術の獲得によって未曾有と言われた不況を乗り越えた後は、徐々にではあるが業績も回復。現在では、自社内開発、常駐型開発、いずれも追いつかないほどの引き合いが来ている状況である。これから発生するオプテックスグループの開発案件も含め、そういったニーズに確実に応えていくため、同社ではこれまで以上に採用を強化しているところだ。特に毎年定期的に入社してくる新卒社員や、経験の浅い若手技術者を牽引してくれる中堅クラスの技術者に期待を寄せる。

同社のビジネスの中心はあくまで“ひと”だ。そのため急激な拡大路線は一貫して取ってこなかった。

「拡大することがやりたいことかというと、そうではない。ずっとそういう考え方で来ました。大切にしたいことはお客様と社員がハッピーになれることです」（清水氏）

顧客の役に立ち、社会の中での存在価値を高めていくには社員一人一人がジェントルである必要がある。それを維持するため、マネージャー層は社員への目配り、気配りを大事にする。例えば、清水氏は客先に常駐する技術者たちのマネジメントだけでなく、常駐先への訪問やコミュニケーションを怠らない。また、半期ごとの面談では評価や目標管理をするだけではなく、一人一人が抱える悩みにもじっくりと耳を傾ける。会社全体としては毎年定期的に社員総会を開くなど、全員が集まって顔を見合わせながら話をする機会も設ける。

受託開発会社としての同社の魅力は、プライム案件が多いことだろう。クライアントとダイレクトにつながるということは高度なスキルが求められることでもあり、簡単なことではない。だが1つの案件に最初から携われることに醍醐味ややりがいを感じる技術者は少なくはないだろう。

「それをやりきるために必要なことは会社としても精一杯支援します。個人の資格取得に関しては事後報告でも追認して手当を支給しています。その他にもチャレンジしたいという申告があれば、基本的にダメだと言うことはありません」（清水氏）

プライム案件が多いことはワークライフバランスが取りやすい環境にもつながる。残業時間は毎月20時間を超すことはない。リリースを夜中にして欲しいという要望がある時は作業が深夜になる場合もあるが、予め計画されたものなので、大きな負担になることはない。仮に休日出勤があった場合でも必ず代休は取れるので安心だ。

また、同社が受託している案件は、常駐型でも京都市内を勤務地とするものが中心だ。京都に住む技術者が京都で仕事が出来る環境を整えたいという想いは強く、今後もその方針を維持する考えだ。

採用の軸として重視する要素は、“新しいことに直面した際の柔軟さ”と、“コミュニケーション力”だ。自分が知らないことや不得手なことに対しても、ストレスを感じずに乗り越えて欲しいと清水氏は語る。

「そこで止まってしまうと社内でも出来ることが限られてしまいます。社内でコミュニケーションが取れてさえいれば、誰かに聞くことも出来る。それは本人だけの問題ではないので、孤立しないよう配慮もしています」（清水氏）

これまでに積み上げてきたものに囚われず、新しい文化を築き始めるスタート地点に立ったばかりだ。だからこそ社員一人一人の個性も発揮できる環境にある。

「これから参画する方にはぜひ新しい風を吹き込んでいただきたい。スリーエースには外から持ち込まれる新しい風を拒む土壌はなく、むしろ面白がる会社です。これまでに築いたものを生かしながら、私たちと一緒に進化を体感していただきたいと考えています」（清水氏）