株式会社エイガ・ドット・コム

株式会社エイガ・ドット・コムは、『映画.com』を運営している総合映画情報サイトのパイオニアだ。1998年8月のサービス開始以来、最新の映画情報をインターネットで提供している。世界中から集めた映画ニュースを毎日配信するほか、4万5000件以上の作品データベース、26万件に上る映画に関わる人物情報、全国の映画館の上映スケジュール、興行ランキングや評論家のコラムなど、映画に関する話題を網羅している。

『映画.com』が提供している映画情報はPCのブラウザーだけでなく、スマホ用アプリでも閲覧可能だ。そのため、『映画.com』の月間UU数は1600万、月間PV数では1億2000万という驚異的な数に上る。また映画ニュースを各ポータルサイトやSNSにも配信しているので、同社の映画情報に触れたことがないという人はいないかもしれない。

同社の代表取締役であり、編集長でもある駒井尚文氏は「『映画.com』の最大の強みは、最新の映画情報を網羅的にお届けしていることだと思います。国内の映画はもちろん、アメリカやヨーロッパなど世界中の映画情報もです。例えば、アカデミー賞の情報提供は20年くらい前から行っていますが、アカデミー賞特設サイトを『映画.com』内に設けて、3名の映画評論家が受賞者を事前予想。当日は受賞結果の速報も発信しています。いろんなメディアや映画ファンもチェックしていて、こうした幅広い情報提供を行っていることに定評があります」と語る。

同社は2007年、『価格.com』を運営している株式会社カカクコムのグループ企業となった。カカクコムグループといえば、グルメコミュニティサイト「食べログ」や、旅行ポータルサイト「フォートラベル」などの運営も行っている東証一部上場企業だ。カカクコムのグループ企業となったことで、事業の基盤がより強固になるだけでなく、4万5000件以上の作品や26万件にも上る人物情報のデータベースを構築することができた。これによって、以前は月間UU数が20万だった『映画.com』へのアクセス数が、2年で200万にも拡大したという。

他にも、「午前十時の映画祭」の公式サイトの運用代行や、東京国際映画祭などイベントのオフィシャルニュースの企画・制作なども行っている。「映画のことなら『映画.com』」というのが同社のキャッチフレーズで、「日本で一番映画に強いメディア」を自負している。

実は『映画.com』がリリースされた1998年当時、株式会社エイガ・ドット・コムは存在していない。同社の代表である駒井氏が1997年に設立した映画のPR会社、株式会社デジタルプラスのサービスのひとつとして『映画.com』はスタートした。その後、株式会社デジタルプラスはスターキャスト・ジャパン株式会社と合併、現在は株式会社ガイエとして同じく駒井氏が代表取締役を務めている。

株式会社ガイエは、映画（エイガ）を逆から読んだ社名からも分かるように、やはり映画に特化したPR会社である。そのため、株式会社エイガ・ドット・コムと株式会社ガイエは兄弟会社のような関係性で、映画を専門にしたビジネスを展開している。そんな2つの企業を経営している駒井氏は、元々PR会社で映画の宣伝を行っており、映画一筋30年という経歴を持つ人物だ。

その駒井氏によると「誰もやってないことをやろう、というのが当社の考え方です。他がやらないうちにスタートしてきたのが当社の歴史でもあります。そして、成功すれば次を模索していきます」という。現在、同社の収益の70％は広告収入である。残りの30％はニュース配信や映画祭のコンテンツを制作するなどの委託事業による。業績は設立以来ずっと堅調で、安定した成長を続けている。しかし、これだけで留まることは考えていないようだ。

実際、2017年5月には各種ネット配信サービスにある映画を検索するアプリ『映画.now（ナウ）』の提供もスタートしている。そして2019年2月には、ホラー映画専門の配信サービス『OSOREZONE（オソレゾーン）』もリリース予定。

「新しいことをやり続けていくことが大切です。株式会社エイガ・ドット・コムと株式会社ガイエが手を携えて、新しいことを次々と開発していこうと思っています。そのため、元々別の場所にあった2社を同じオフィスビルに集約しました。この2社の人事交流を活発にしていくことで次を狙いたいですね」と駒井氏は語る。広告収入の次の柱を構築していくことが、同社のこれからの狙いのようだ。

同社で働く魅力やメリットを伺うと、「誰よりも早く新作映画を観ることができます。取材のためのマスコミ向けの試写会があるので、それに参加できますね。また、有名な役者さんに直接会えるのも、映画好きにはたまらないと思いますよ。もちろん、日本の役者さんだけでなくハリウッドの大物にも会えますよ」と駒井氏。時には公開直前の映画宣伝のために、若手の俳優が同社に挨拶に来ることもあるようだ。

「海外出張に行くこともあります。ハリウッドに取材で伺うことはもちろんですが、当社はアプリなども開発しているベンダーですから、シリコンバレーにある誰もが知る有名IT企業に、プロデューサーやエンジニアと一緒に行くこともありますね。テクニカルな内容を打ち合わせしたりします」。（駒井氏）

現在、同社は半蔵門駅の近くに本社オフィスを構えている。取引先である映画配給会社の多い六本木や日比谷へのアクセスも便利だ。また、SNSなどのプラットフォームを運営している大手IT企業と新サービスを共同開発するための打ち合わせを行うことも多いとのこと。

同社の平均年齢は30代前半だが、社歴の長いスタッフが多い。自社メディアの運営を行っている企業であるため、各スタッフが自分の担当する役割を全うさえすれば、あとは自由な仕事スタイルだ。社内には自分のデスクのPCで映画を観ているスタッフもいるらしい。やはり映画好きが集まっていることに加えて、こうした自由な社風であることも、長く働くことができる環境を作っているのだろう。

最後にどんな人材が同社に最適なのかを伺うと、駒井氏は「まずは映画が好きなこと。それに、アーリーアダプターと呼ばれるような流行に敏感な方がいいと考えています。人より一歩くらい先を行ってないと、この業界をリードできないですからね。また映画というと、オールドメディアという印象を持っている方が多いかもしれませんが、映画というコンテンツはなくなることがないでしょうし、インターネットと結びついたことで、これからもさらに面白くなると考えています」と語った。『映画.com』という巨大なネットメディアを運営しながら、さらに新しいことに挑戦していく面白さが、同社にはありそうだ。