クライアントの「信頼」を重視。30年以上にわたって堅実な成長を継続
株式会社アクトは、1985年の創業から大手機械、電機メーカーといった企業の基幹システム開発や運用を主に手がけ、長きにわたって堅実な成長を続けてきた。システムの提案、設計、開発、導入、サポートとオールインワンでサービスを提供できる強みを活かし、変動と競争の激しいコンピュータ・IT業界で30年以上、第一線で活躍を続けている。その歩みについて、代表取締役・原 基裕氏に伺った。
「創業時は、汎用機が中心の時代でした。コンピュータ業界の拡大に伴って、同時期にスタートした会社の中には大きく業績を上げていくところもありましたが、当社は着実に地歩を固めてきました。戦略は、まず安定するためにクライアントの信頼を勝ち得て、確固たる地位を築くこと。当社でいうと、基幹システムの開発から運用までを請け、先方からアクトがいないと困る、と認識されるアウトソースに近いレベルまでしっかりやるということでした」(原氏)
クライアント固有の課題や、業界ごとに異なる商習慣などを吸収するという地道な取り組みの結果、財務、販売、流通、生産、人事といった基幹システムにおけるノウハウと、信用という何物にも代えがたい「核」を築き上げた同社。今では、大手クライアントとの直接取引がメインとなっているが、そこだけに安住してしまうのは怖いと原氏は語る。
「今、業界はまた大きな曲がり角に来ていると感じています。需要は増えていますが、技術者が圧倒的に足りないというギャップが非常に大きなものになっています。そこで今、自分たちがいる位置と業界の将来を予測して、適切な方向へと舵を切ってターンしていかなければならないと考えています。同時に、特定の企業にべったりになってしまっては、技術の変化についていけなくなります。新しい需要にもついていけなくなるのが一番怖いところです」(原氏)
そこで、現在、新たな事業を立ち上げるべく準備を始めているという。同社がこれまで30年以上続いてきたのは、顧客とのつながりを重視し、その時代に合わせて社会的ニーズに対応しながら、信用を築いてきたから。同社は今、こうして積み上げてきた「資産」を未来につなごうとしている。
40代になってからプログラミングを学びはじめ、同社に参画。その後代表に就任。
「未来」を考え、人材育成を重視。中途採用では新風を吹き込んでくれる人材に期待
創業から、一貫して「信用」をベースに歴史を重ねてきた同社。
「関わる人や、ステークホルダーが増えてくると、みんな楽しく幸せになるというのが一番大きな目的になってきます。自分たちだけが利益を得ても仕方がないわけです。そのためには、ちょっと違ったことをして、周囲を喜ばせてあげられるような仕事をするよう心がけてきました」(原氏)
自分たちが、何のために仕事をしているのかという想いを社内で共有するようにしている。そのため、人材育成とコミュニケーションに力を入れて、社員一人一人に合わせて行うようにしていると原氏は続ける。
「未来を支えていくのは、次の世代に任せていきたい。そこで、当社でも人材育成を重視しています。教育には難しい面があって、自分でやる気にならなければダメ。付きっきりで教えても3日経てば忘れてしまいます。自発的にやる人はどんどん知識も知恵も増えてくるので、そういう人たちが勉強できる機会は個別に提供しています。幹部社員にはポジションに合わせた経営感覚等を伝え、リーダー育成を進めています。難しいのは、技術に特化して成長していきたいと考える人、マネジメントをしっかり勉強して経営に参画したいという人の適性を見極めること。それぞれに合わせて、会社にもクライアントにもプラスになる適切なルートを用意してあげたいと考えています」(原氏)
丁寧な教育体制もあって、新卒入社が多いのも同社の特徴となっているが、一方で「守り」に入りすぎないよう、中途採用者にも期待を込める。
「現状を守るだけではなく、新たなチャレンジにつなげていくため、違う文化を持っている人に来ていただきたいのです。その人たちが自由に活躍できて、皆の意識を今以上に外向きにし、多様性を持てるようにしたいという思いからの取り組みです」(原氏)
多様性、という点について、原氏はさらに付け加える。
「同じような考え方の人が集まった、金太郎飴のような集団では気持ちが悪いと思いますね。人は一人一人違うので、画一的にやっても上手くいかないはず。苦手なことは、上手くならないんです。やりたいことをやった方が、トータルの生産性は上がります。各自が思い求めることを深めて、そういう人々が交わることで、多様な価値観が出てくるわけです。新しい風を取り入れていきたいですね」(原氏)
しなやかで柔軟な社風。結果を出した人を積極的に評価
同社社員の年齢は幅広い。22歳から50代までが活躍しており、平均は30代前半。未経験の文系出身エンジニアも在籍するなど、バックボーンも多彩だ。
「社員の背景によって区別することはあまりないですね。元が文系でも理系でも仕事はしていけます。採用するときも、まず人を見るよう心がけています。経験はあった方が良いですが、一番見るのはコミュニケーション力や何にでも興味を持つような姿勢。クライアントが何を言っているか理解し、意向に沿った提案ができるようになるには、そういう力が必要だと思うからです」(原氏)
やる気があって学びたいという人を積極的に支援する環境が整っている同社。結果を出した人を評価することも忘れてはいないようだ。
「大きな結果を出した人を称える功労表彰制度もあります。アクト賞、最優秀賞、優秀賞があり、会場を借りて全社ミーティングを開催して、そこで表彰しています。社内のモチベーションアップにもつながっているようです。当社は全員が集まる機会が滅多にないので、社員旅行等のイベントを積極的に開催するようにしています」(原氏)
原氏が語るように、社内の交流やイベントが盛ん。数年に1度の社員旅行、2018年9月はグアムを訪れたそうだ。それを楽しみにしている社員も多いという。社員同士でSNSなどを使ったやりとりもよく行われている。客先常駐をする社員もいて、拠点も数カ所に分かれてはいるが、それぞれの距離感は近いようだ。
「他人に興味を持っている人、人間力のある人が当社には向いていると思います。人にはつながっていたいという想いがあって、お互いに興味を持ち合う姿勢が必要だからです。そうでないと、何か一緒にやろうよというときに同じ方向を見るのが難しい。それを当社は比較的できているように感じています。それが、社員旅行の高い参加率につながっているのかもしれません(笑)」(原氏)
同社は、今大きく、未来へ足を踏み出そうとしているところだ。