小規模事業者でも導入しやすい“初期導入時無料・月額固定利用料”モデルが強み
ITベンチャーの、株式会社エイチツー(H2)。2012年の設立以来急成長を続け、18年度の売上高は50億円を見込むという躍進ぶりだ。事業内容は、「ストアソリューション事業」「オフィスソリューション事業」「コンシューマーソリューション事業」の3事業。その内容は、次のとおり。全て独自のサービスだ。
◆ストアソリューション事業◆
~smao事業~
飲食店向けのタブレットによるセルフオーダーシステム「SMAO」の提供。従来、当該システムの導入には多額の費用がかかることから、大手チェーンにのみ導入されてきた。これを“初期導入時無料・月額固定利用料”というほかにない料金体系を打ち出し、個人経営の飲食店でも導入しやすくした。さらに、性別や年齢層など来店客の属性に応じてメニュー表示を最適化するサービスも付加。これにより、客単価の5~10%アップとスタッフの人件費削減や業務効率化を実現、収益向上に貢献している。
~MEO事業~
飲食店などに向けたGoogle Mapsの検索上位表示対策サービス「MEO対策」、およびMEO対策を通じて閲覧数や集客数などの分析結果を可視化する「G MAC」、Googleの認定を受けた同社撮影チームが飲食店やホテル、結婚式場などの室内のパノラマ写真を撮影し、ストリートビューにする「Googleストリートビュー(室内版)」がある。
◆オフィスソリューション事業◆
~クラウドIPフォン事業~
数千本のインターネット電話回線を保有し、主にコールセンターの運営を行っている企業に向けクラウドIPフォンを活用した諸サービスを提供。コールセンターに必要な機能を全て盛り込んだCTIシステム「Callmap」、圧倒的な低コストの着信課金サービス「CLOUD Free Call」、定額制0120・0800ダイヤルのかけ放題サービス「CLOUD Office Line」がある。
◆コンシューマーソリューション事業◆
NTT東日本・西日本の光ファイバー回線をエンドユーザーに提供するインターネットサービス「CONNECT光」、プロバイダサービス「P-コネクト」、約1,500社の不動産業者と連携し引越し先で利用するインターネットの取次を行う「NETコンシェル」、および不動産管理・オーナーに入居者向けの“初期導入無料”のインターネットサービスを提供する「FiL」がある。
これらサービスのほとんどが“初期導入時無料・月額固定利用料”モデル。このため、小規模事業者でも導入しやすい点が同社の大きな強みとなっている。
企業理念は、「圧倒的に人々を幸せにする」×「圧倒的に社員を幸せにする」
同社を創業した代表取締役の森田諒平氏は、通信系の営業会社3社の全てでトップとなるなど活躍。そんな時に、この世界でフルコミッションセールスとして仕事を始めようとする仲間と出会い、代理店として動いてもらうことになった。
「フルコミッションで働く彼らを見ていて、給料をもらっている自分も全てを自らの裁量で動くことにチャレンジしたいと思うようになりました。そこで、彼らと3人で2011年に現在のネットワークサービス事業の回線販売の代理店業をスタートさせ、12年12月に当社を設立したのです」と森田氏。
12年にコールセンターを設けて営業体制を一新。スタッフを100名ほどまで増やして月間約1,000件の契約を成立させるまでになった。
「それまで、1件あたりいくらの手数料モデルで運営してきましたが、スタッフをこの先何十年も雇用し続けていくのに、1人あたりの収益をより増やし、安定化させる必要があると考えました。そこで、14年に定期収入を積み上げられる初の自社サービス『P-コネクト』、15年に『CONNECT光』というふうに、独自サービスを増やしていったのです。現在では独自サービスが100%を占めています」(森田氏)
現在、約4万人のエンドユーザーを擁する同社は、毎月安定的に固定収入を得る構造をつくり上げた。こうして得た収益を積極的に新サービス・新規事業に投資して成長を図っている。次の新サービスとしては、「NETコンシェル」と連携したチャットアプリや、副業のマッチングアプリなどが検討されている。「事業が育ってきたら別会社化し、社員に経営を任せていきたいと考えています」と森田氏。
当面の目標は、2021年の第10期に“売上100億”“会員数10万人”“株式上場”を果たすこと。その先には、“時価総額1兆円のメガベンチャー企業創出”という大きな目標もある。
「収益を伸ばすには、お客さまに喜ばれ、支持されるサービスを常に追求し続けなければなりません。これからも、あらゆるサービスを磨き続けていきます」と森田氏は力を込める。
そんな同社の企業理念は、次のとおりだ。
「圧倒的に人々を幸せにする」×「圧倒的に社員を幸せにする」
その背景について、森田氏は次のように説明する。
「創業メンバーと山小屋に3日こもって、会社の存在意義についてずっと“壁打ち”をしました。命がけでつくりたいもの、後世に残したいものは何か。掘り下げれば掘り下げるほど、当社に関わる人の“幸せ”に尽きるとしか思えないのです。ここから、企業理念を導き出しました」
社名の“H2”は、“HUMAN×HAPPY”から名付けている。
高い目標にチャレンジする実力主義×仲がよく楽しい雰囲気の組織風土
2020年7月現在、従業員数は約135名(社員約75名、パート・アルバイト約60名)。男性比率が60%と高いが、「新卒の65%は女性が採用できているので、徐々に男女比率を均等にしていく」と森田氏。
森田氏は30歳で、平均年齢は27歳という若い組織だ。「この世代を代表するような存在となり、この数十年元気のない日本を変えていきたい」と森田氏は意気込む。
組織風土の特徴は、前述のとおり高い目標にチャレンジする実力主義。新サービス・新事業が次々に生まれ、新しいポストも続々とできているので、若くてもやる気のあるメンバーを抜擢。その結果、人材も会社も急スピードで成長している。
「といっても、決して体育会系的な社風ではなく、同年代が集まっているので仲がよく、楽しい雰囲気でやっていますよ(笑)」と森田氏。4月のお花見、7月の海水浴、9月の登山、10月の体育祭とハロウィンパーティー、12月の大忘年会など、2カ月に1度のペースで社内イベントを開催(自由参加)。遊びも全力で楽しみ、社員同士の繋がりを強め、風通しをよくしているのだ。
月1回、社員総会を開催し、各事業部の状況報告や、森田氏によるビジョンや経営の方向性などの共有が行われ、ベクトルを常に合わせている。半年ごとにMVPなどの表彰も行っている。人事考課は、業績とメンバー育成という観点から行われ、人材育成を重視。その人材育成策としては、元・ソフトバンクや元・野村證券といった企業で活躍した一流のビジネスパーソンを講師に招いて研修を実施。「年間3,000~4,000万円を社員教育に投じている」(森田氏)という力の入れようだ。
以上のような組織風土であるだけに、同社が求める人材像は、ベンチャーマインドを持って高い目標に積極的にチャレンジできる人や、主体的に裁量権を持って仕事をしたい人だ。「それだけでなく、協調性も大切にしたい」と森田氏は言う。
急成長を続ける若い組織風土の中、仲間と切磋琢磨しながら自らも成長したい人にとって、魅力的な環境が同社にはある。