中国のSoCメーカー Allwinner 社の日本総代理店として“日本と中国の架け橋”を目指す
“ARMで新しいアイディア、テクノロジーをカタチにする会社”を標榜している、株式会社瑞起。iPhoneに採用されて以来、爆発的に広まっている「ARMアーキテクチャー」をキーテクノロジーに活用し、さまざまなプロダクトの実現に貢献するとともに、“日本と中国の架け橋”となることを目指している企業だ。
同社は、中国のファブレスSoC(System-on-a-Chip)メーカーとして急成長中のAllwinner 社の日本総代理店。2017年4月現在、従業員数7名という規模ながら、多種多様な最先端のSoC製品を顧客の用途や目的に応じて提供する「商社機能」、同製品を活用したハードウェア・プラットフォームから組込みソフトウェアの設計までを一貫して行う「ODM機能」、提携先の中国メーカーでの量産化に対応する「OEM機能」を兼ね備えている。
さらに、Allwinner 社の戦略的パートナーとして蓄積してきた高度な技術と豊富な経験を活かした技術アドバイスや課題解決、中国および周辺国における市場開拓や輸出入のサポートなど、顧客のものづくりをトータルに支援する機能を揃えているところが最大の強みだ。
主な実績としては、国内の大手ゲーム機メーカーの家庭用やアーケードゲーム機、テレビメーカーの製品、フィードバック型クラウド農業制御システム、街頭防犯カメラシステムなどがある。少量多品種の時代にあって、従業員数数名のベンチャーにも積極的に対応し、新しいアイディアによるプロダクトの実現に貢献している。
さらに、中国の深圳と珠海にグループ会社を設立し、“スマート農業”のための独自のプロダクト開発にも乗り出した。
経済が発展し生活が豊かになった中国の消費者は、食の安全を求めるようになった。従来のような農薬に頼った農産物を「子どもには食べさせたくない」と望む人が急増しており、安全かつ効率的な栽培方法が求められている。一方で、都市部のホワイトカラーと農業従事者との間には5倍以上の収入格差があるといわれており、農産物の付加価値づくりも国家的な課題となっている。そうした状況に着眼し、同社はトマトの栽培環境を監視しリモートコントロールするための「IoTデータ収集ゲートウェイシステム」を開発。巨大な市場へのチャレンジを始めた。
ARMアーキテクチャーをベースとした世界最大のソリューションプロバイダを目指す
2012年10月に同社を起業した代表取締役の呉 成浩(ゴ・セイコウ)氏は、中国の出身。日本の電気製品に衝撃を受け、2000年に20歳で来日。日本の大学で電気工学を専攻後、2006年に国内のEDAメーカーに入社する。製品の設計開発などに従事し、「250社ほどの日本のエレクトロニクスメーカーをサポートした」(呉氏)という。日本での定住を決めた呉氏は、“日中の架け橋になる”と心に決める。しかし、同社で高度な技術力を身に着けることはできたものの日本企業による日本企業へのサポートに終始する仕事に疑問を感じ、「“日中の架け橋になる”ことを経験してみたい」と、2011年に中国との貿易を手掛ける小さな商社に転じた。
「“石の上にも三年”ということわざがあるのを承知していましたが、その会社のやり方を見て『自分ならもっとこうする』というイメージがつかめたこともあり、思い切って1年で独立しました」
そう語る呉氏は、2007年にiPhoneが登場したとき、ARMアーキテクチャーに感動を覚えたという。それまでの半導体はインテル製が中心であったが、モバイル機器向けにつくられた低消費電力・高性能のARMアーキテクチャーの存在を知って、「これで世の中を変えられると思った」と述懐する。同年に、中国の珠海全志科技股份有限公司(Allwinner Technology CO., Ltd.)がARMアーキテクチャーを採用したSoCをリリースすると、呉氏は同社にアプローチして関係を深めていった。そこから、今日の瑞起の事業構想を描いていき、5年後に実現させることとなる。
今後のビジョンについて、呉氏は次のように語る。
「夢は大きく描いたほうがいいと思っていますので(笑)、今は“ARMアーキテクチャーをベースとした世界最大のソリューションプロバイダになる”と決めています。国内外に競合先となるような半導体商社や回路/基板メーカーはたくさんあると思いますが、当社はそのどちらでもなく、両方の機能プラスアルファのテクノロジーを備えていると自負しています。だからこそ、大手セットメーカーも当社を選んでくれていると考えています。この強みをさらに強化して、グローバルに規模を拡大させていきたいですね。」
また、“日中の架け橋”においては、これまでAllwinner製品など専ら中国のプロダクトを日本に導入する“一方通行”であった。
「日本には数多くの中小メーカーがあって、それぞれが素晴らしい製品や技術を持っています。にもかかわらず、国際化の時代にあって日本国内にとどまっているところが少なくありません。こうしたものを、今後は当社が中国に紹介し広めていければと考えています」(呉氏)
規模が大きくなっても、社員の個性を最大限に生かせるように
今はまだ小規模の同社であるが、「規模が大きくなっても、社員の個性を最大限に生かす経営をしていきたい」と呉氏。本人のやりたいことをやりたいスタイルで行うことで、最も成果を上げることができると確信しているからだ。
「当社のビジョンに共感してくれた仲間として尊重し、その大きな枠の中で、本人が主体的かつ自由に業務を手掛けてもらえるようにマネジメントしていきます」(呉氏)
したがって、「こういうモノをつくりたい」という社員のアイディアは可能な限り実現させていくという。
人材育成は、OJTがベース。
「この『Green』では組込みソフト等のエンジニアを募集していますが、未経験であってもやる気がある方なら十分マスターしていけると思います。資格を取得したいという希望にも、会社が費用を負担して積極的に応援します」(呉氏)
忙しい同社ではあるが、「労働時間もできるだけ本人の希望を重視して柔軟に対応したい」と呉氏。“プレミアムフライデー”も導入する意向だという。中国人は家族をとても大切にする。アットホームな同社でも、社員の家族を招いての花見やBBQなどを実施し、親睦を深めている。
「自分の考えと行動力で、未経験の新しいことにチャレンジしていける誠実な方に、ぜひ来ていただきたいと願っています」と呉氏は呼びかける。