「継続と革新」アトラスの原点に立ち返る
株式会社アトラスの創業は1986年、日本のゲーム開発会社のなかでも老舗にあたる。「ペルソナ」「真・女神転生」「世界樹の迷宮」など人気のRPGシリーズを発信し続けており、「アトラスのゲームが好き」と"指名買い"するファンが世界中に存在する。2016年9月にリリースしたペルソナシリーズ最新作「ペルソナ5」も好評で、発売後一ヶ月足らずで国内出荷本数60万本、さらに2017年4月の北米/欧州版も発売し、全世界累計出荷200万本突破の大ヒットを記録。これには取締役の平岡直人氏も手応えを感じている。
「当社の信条は、お客様の期待を裏切らないこと。より面白いゲームを提供しようという価値観を社員全員が共有している会社です。『ペルソナ5』は開発が長引き、ずいぶんお待たせしてしまいましたが、今回も何とかご期待に応えることができたのではないかと思います」(平岡氏)
同社の開発力の源泉となるのは、やはり「人」だ。平岡氏によれば、アトラス社員の多くはほかのゲーム会社に見向きもせず、アトラスで仕事がしたい、アトラスのタイトルに関わりたいとの思いで入社してくる人が多いという。つまり皆が「アトラス大好き」なのだ。会社に対する帰属意識からか、離職率も非常に低く、「私がアトラスに入社して15年ですが、メインのメンバーはほぼ全員が残っている」。したがってチームワークはきわめて良好、「あうんの呼吸」でゲーム制作が進む。
「私自身、『真・女神転生』シリーズが好きで、よく遊んでいた世代。そのゲームをつくっていた会社に入社し、制作側に回っていることが、感慨深くもありますね。好きなことをそのまま仕事にしてしまったわけですが、幸せだと思います」(平岡氏)
そのアトラスは今、大きな変革の時を迎えている。これまで同社のゲーム開発部門は、第一、第二と2つのプロダクションに分かれ、前者は「真・女神転生」シリーズ、後者は「ペルソナ」シリーズなどを担当していた。しかし、2016年秋、新規タイトルの開発に特化する新たな組織である第三プロダクション「スタジオ・ゼロ」を編成。「これは会社が次のステージにあがるための組織改編です」と平岡氏はいう。
「おかげさまで『ペルソナ』『真・女神転生』シリーズには高い評価を頂いていますが、これらは既存タイトルの『続編』です。アトラスという会社の方針に「継続と革新」があります。継続という意味では、お客様にご期待いただいている既存タイトルをこれからもご提供していきます。反面、これまで「革新」の部分が手薄になっていたきらいがありました。今回の組織改編、そして新たな採用によって『革新』にリソースを投入、アトラスの原点である『継続と革新』に立ち返りたいと思っています」
RPGは人生経験を丸ごと生かせるゲーム
社員の多くは、他のゲームメーカーからの転職組。加えて、IT業界のエンジニア、イラストレーター、シナリオライター等、多才な面々が集まる。今回の募集においても「未経験者OK」として門戸を広く開いている。もちろんスキルがあるに越したことはないが「極論、腕は後からついてくる」と平岡氏。また前述の理由から「アトラスで働きたい」という気持ちを評価するのはいうまでもない。
「引き出しをたくさん持っている人にも興味がありますね。RPGというのはロールプレイングゲームの名の通り、なにかの役割を果たすゲーム。様々な仕事を経験していることは、絶対にプラスになります。世界中を旅してもいい。RPGは移動を続けるゲームでもありますから、各地を知っていることがモデリングに役立つ。RPGは人生経験を丸ごと活かせるゲームです」
もちろん、ゲームオタクも大歓迎だ。「ファミコンが発明されて早30年で、今となっては「完全に新しいゲーム」を発明するのは無理だろうと思っています。私たちがやりたいのも『新しい発明』ではなく『新しい提案』。そのためには、映画、アニメのことも知っていてほしいですし、他社様の様々なタイトルもプレイして引き出しを持っていてほしい。ゲームオタクであってほしいと思いますね」
ゲーム開発は数十人が協働するチーム体制。メンバーそれぞれの長所短所を組み合わせ、補っていくのが常だ。それは未経験者であっても例外ではない。採用するからには長所を見込んでのこと。平岡氏が望むのは「その長所を生かしてほしい」ということだけだ。
「意見があれば誰でも自由に発言してほしい。当社では、新卒社員だってキータイトルにアイデアを出しています。会社によっては、企画は企画、プログラムはプログラムと分担されている場合もあると思いますが、当社にはほとんどありません」
人材教育も「長所を伸ばす」ことに重きをおく。チームの一員として経験を積むなかで自分の長所を自覚、それを伸ばそうとする努力を会社が全力でサポートする。それはプロモーションやマーケティングなど非開発職でも同じ。チームとして働くなかで、周囲の先輩社員や上司が成長を後押しする。
「必要であれば社外のカンファレンスや勉強会にも参加してもらいますし、社内の勉強会に出てもいい。我々はの一員で、グループ内での技術交流もあります。様々な場面で自己鍛錬をしてもらいたいですね」
期待を超え続けることにクリエイティブの喜びがある
「お客様の期待を裏切らない」と言うは易し。だが「期待に応えられるソフトになるまではリリースしない。たとえ発売時期がズレても開発コストが上昇したとしても、自分たちが納得するまでは出さない」とまで断言するのが同社の凄みだ。
期待を超え続けることで、アトラスのブランド力は世界にも届いた。同社のタイトルは日系メーカーとしては飛び抜けて海外での評価が高く、「他社は日本で10売れたタイトルが海外では1、2になるケースもあるなか、アトラスは日本と海外で同じぐらい売れている」というほど。
「特段、『世界で売れるゲーム』は意識していないようにしているんですけどね。むしろ海外の人が求めているのは『これが日本だ』というゲームだと思うのです。『ペルソナ5』にしても主人公は日本の高校生、たとえば給食や修学旅行の描写があっても、海外の方には判りづらいと思います。しかしそれが『アトラスはジャパニーズサブカルチャーを代表している』という評価につながっているのではないかと思います」
しかし困ったことに、超えるべきハードルは年々高くなってくばかり。「毎回、ハードルは上がっていきます」と平岡氏もこれには苦笑するほかない。
「おかげさまで『ペルソナ5』に多くの支持をいただいて、我々は1つの達成感を得ています。しかしここで止まっているわけにはいきません。以前『ペルソナ4』をつくるときは『ペルソナ3』を超えなければいけないというプレッシャーがありました。今度は『5』を超える『6』を作らなければならないでしょう。しかし『5』を超えるには、いまの陣容では厳しい。今後入社してくる皆さんと一緒に、この高いハードルを超えていきたいと思っています。大変であることは確か。しかし、そこにこそクリエイティブの喜びがあるとも思うのです」
世界を相手にやりがいのあるゲームづくりに挑戦をしたいと思っている方にはうってつけの職場ではないだろうか。