株式会社プラグ

キッコーマン株式会社の『わが家は焼肉屋さん』や興和株式会社の『QPコーワ』シリーズ、アース製薬の『消臭アロマパレット』など、よく目にする消費財のパッケージデザインを数多く手掛けている株式会社プラグ。しかし、同社は単なるデザイン会社ではない。マーケティングリサーチとデザイン、そして商品企画を掛け合わせた新しいビジネスモデルを武器に、着実に評価を高めてきているからだ。

企業が新たな商品・サービスを開発するときや販売戦略を立案するとき、消費者のニーズや嗜好を探るため市場調査を行う。その調査結果をもとに商品企画、販促企画を練っていくわけだが、マーケティングを行う部門と商品開発部門、販促部門が分かれていることが多いため、調査結果を伝える際に誤解や勘違いが生じることがある。また、企画立案後、パッケージなどのデザイン方針を外部のデザイン会社へ伝えるときも微妙なニュアンスを伝えるのは難しい。その点、プラグであれば、リサーチとデザイン双方の機能を持ち、市場調査から商品企画支援、販促支援までワンストップで対応できるので、顧客と共に伴走しながら、より良い商品開発に集中することができるわけだ。

「当社は、市場調査会社として40年以上の実績を持つCPPとパッケージデザインを中心に30年近い歴史を持つアイ・コーポレーションが合併して2014年に立ち上がった会社です。そのため、リサーチ事業であれば、最新のFGIルームを２つ所有し、18名のモデレータが年間1300件を超えるインタビューを実施するなど、高いインタビュー力に定評があります。

パッケージデザインについても、30名規模と大きいだけでなく、マーケティングを理解しているデザイナーを育成することで、リサーチ結果を的確に反映したデザインを発想できる体制を整えています。このように、単体でも奥深いノウハウを持つ２事業がコラボレーションすることで、お客さまのヒット商品開発に、より貢献することができる――それが、当社が考えるリサーチ×デザイン=商品開発という新しいビジネスの一つの姿です」（経営企画室HRM担当・高橋 恭平 氏）

「オリジナリティを大切にし、良い商品・サービスを数多く世に送り出すお手伝いをする」ことを会社のスタンスとしているプラグ。リサーチ×デザイン×商品開発という新しい事業領域も、このスタンスから生まれたものであり、「パッケージデザインランキング（PDランキング）」という新規事業もまた、そうだといえる。

「パッケージデザインは、発売されるまでに何度も練り直し完成度を高めていきます。ところが、費用などの問題もあって、発売後、そのデザインが消費者にどのように評価されたのか、後追いで調査することはほとんどありません。そこで、毎年春と秋の２回、上市されている消費財約500アイテム、計1000アイテムについて20代から50代の男女２万人以上に調査した結果を集計してランキング形式に整理し、デザイン的な特徴や流行などをレポートにまとめました。そのデータを、Webを介して提供するサービスが、PDランキングです」（代表取締役副社長・坂元英樹氏）

このデータを活用することで、顧客は商品デザインを検討する際の参考にできるだけでなく、自社商品が含まれていれば、消費者の声をもとに、より具体的にPDCAを回してデザインの訴求度を高めていくことができる。また、自社商品がランキング上位に入っていれば、販促に活かすことだって可能だ。

「パッケージデザインをデータ化するという手法は、企業のグローバル展開をサポートすることにもつながります。たとえば、中国市場のデザイン傾向を調べることで、中国市場への進出を検討している企業を支援することができます。このような体制を整えるため、すでに海外の調査会社やデザイン会社との提携など準備を進めているところです」（坂元氏）

他にも世界112万人のデザイナーからパッケージデザイン案を募ることができる「99designs」との提携や１万3000人以上の会員ライターがキャッチコピーやネーミングを考える「ワードワース」など、独創的な新規事業を次々と展開。さらなる飛躍に向けて、着々と地歩を固めているところだ。

今後も新規事業を積極的に展開するためには、柱である２つの事業、リサーチとデザインのさらなる成長が欠かせない。そのためには、社内システムのブラッシュアップも重要になってくる。

「まずは社内基幹システムの改修・改善を重ねて、効率化や生産性の向上に取り組んでいきます。特に、リサーチ業務では、調査結果をデータ化する際、無駄がかなりあるのが現状です。そのため、時代とともに移り変わる調査手法に適したシステムへの更新作業は随時必要になるでしょう。また、新規事業についてもシステム面からどんどんアイデアを出してもらいたい。これからの事業はWebサービスをいかに活用できるかが鍵になってくるので、企画だけでなく、できればデモ機くらいはつくってもらいたいとも思っています」（坂元氏）

このように、同社の社員には職種にかかわらず、マーケティングを理解することが求められる。そのため、研修制度が充実しているのも特長だ。ビジネスマナーなどの基礎研修から事業理解を促進するための「リサーチ×デザイン事例研究会」、「マーケティングリサーチ研修」など、その数は20を超える。

「若い会社なので、先輩が自分の知識やノウハウを後輩に伝えていこうとする意識が強いんです。そのため、研修以外でも、先輩たちは質問に丁寧に答えてくれます。もちろん、忙しいときは業務を優先すると思いますが（笑）。その他、社外セミナー受講費やスキルアップのための資料代も会社が負担しています」（高橋氏）

しかし、このような環境を活かせるかどうかは本人次第。だからこそ、「当社の社員には受身にならず、主体的に自らの仕事を作り出し、取り組んでいける姿勢が大切」だと坂元氏は続ける。

「一言でいえば、プロであること、でしょうか。自分が何をすべきで、どのような責任を伴うのかを意識して、最後まできっちりとやりきる気持ちと行動力が大切です。あとは、夢を持って仕事をしてほしいですね。生活のために働くのは、とても大切なことですが、それだけで終わらず、興奮や感動ができる仕事を求めてもらいたいと思っています。当社には、それができる環境があると自負しています。一緒にワクワクしながら働きましょう」