株式会社イーグル・ヴィジョン

未曾有の不況や国家的財政危機といった背景を受けて、日本は、「作っては壊す」を繰り返す社会インフラ構築のあり方を変えることを余儀なくされている。エコロジーの観点からも、補修、補強に注目が集まっているが、それを高い次元で実現する可能性を秘めた素材を発掘し、独占販売権を持って日本で普及を試みているのが、株式会社イーグル・ヴィジョンだ。

その試みは、綿密な技術・特許等のチェックを経て、2008年にスタートした。既に道路や橋、トンネルといった社会基盤構造物の補修の現場で高い評価を得ており、地方自治体あるいは国家レベルで期待を集めている。行政に関連する分野としては、異例のスピード感で受け入れられたその「革命的な素材」とはいったいどんなものなのだろうか。

その素材は、「EAGLE8」と呼ばれる粉末状の高機能セラミックだ。水を加えて練り混ぜるだけで硬化し、優れた強度を発揮する。

硬化が早いこと、圧縮・曲げ強度の強さ、硬化収縮がまったくないこと、耐水性、耐火性、耐熱性、断熱性、耐薬品性といった特性のほか、人体に無害であり、さらには製造時のCO2発生量がセメントの約10分の1と環境に優しいなど、まさにこれまでの建築現場の悩みの多くを解消するEAGLE8。

実は、米国エネルギー省が放射性廃棄物の処理のために研究開発したものがルーツである。このため、日本の行政関連機関においても受け入れられやすいのだ。

その特性から、工場や倉庫のほか、厨房、海中に立つ橋梁など、湿っていたり、塩分・油分等が付着し、磨耗しやすい厳しい条件下でも、環境に影響を与えずに構造物の強化補修が可能となる。また、硬化に時間がかからないため、稼動を止められない構造物でも使用できる。

「まさに夢のような素材に、阪神高速技術株式会社などがカタログの最初のページに載せてくれるなど、われわれの想像を超える反響があり、正直に言って驚いているくらいです。まったく営業活動はしていないのですが、既に複数の大手メーカーでも取り扱いが決まっており、これから普及に弾みがつくことを期待します」

そう語るのは、同社を立ち上げた代表の浦氏だ。東京海上火災保険株式会社のニューヨーク駐在員として、２回、計１２年間活躍した後、早期退職制度を利用し、大企業を離れ新しいビジネスに挑戦している。先入観や偏見にとらわれず、物事の本質を見きわめて道を切り開く人物のようだ。同氏のもとに、各分野で実績のある個性的な少数精鋭のメンバーが集まって同社を形作っている。

今後、鉄道や農業など新しい分野の開拓にも取り組んでいく方針で、数年以内に１００億円以上の売上を目指す。同社はその夢を一緒に実現に導く仲間を求めているのだ。当初はアメリカからの輸入により製品を調達していたが、2010年12月に国内の委託工場が完成。国内生産も開始された。

圧倒的なポテンシャルを持つ商材と、長年築き上げてきた人的ネットワークを武器に、同社が躍進を遂げる日はそう遠くないだろう。市場を創る過程には、誰も経験したことのない困難があることも否定はできないが、それをも楽しみ、自分の力に変えていけるようなしなやかさを持つ人にとっては、新しいビジネスを興すわくわく感を味わえるだろう。

「関わってくれる人すべてを億万長者にしたい」と語る浦氏。その意味は、一緒に夢を追い、がんばってくれるパートナーを何よりも大切にし、報酬の面でもその仕事に見合った待遇をしたいということだ。社員に対する同社の考え方が感じられる言葉といえるだろう。