電気化学工業株式会社

電気化学工業株式会社は、1915年の創業以来“デンカ”の名で親しまれる、東証一部上場の総合化学メーカーだ。本社を東京・日本橋に置き、研究所は東京町田市の中央研究所を中心に3箇所、国内生産拠点は6工場を有する。一方、海外拠点としては、シンガポールを中心にアメリカ、ドイツ、上海、蘇省、香港、台北に展開する。社員数は単独で2,700人と中規模ながらも、歴史に裏付けられた確かな技術力で現在グローバル展開を推進中の「ものづくり」企業だ。

1915年の創業以来、常に時代のニーズに応じた製品を開発し、同社の技術を蓄積してきた。戦前・戦中の農業需要に貢献するため石灰窒素（化学肥料）の製造から始まり、戦後はカーバイド法によるアセチレン系有機化学の分野に進出し、復興期の建材・接着剤などの需要増に応えるほか、余剰石灰石の有効活用のためにセメント事業も開始した。1960年代から石油化学であるスチレン系事業に参入、現在では電子材料・バイオテクノロジー分野まで展開している。1990年代以降の激変する経営環境においては、事業の再構築や設備の合理化に加えて、優位性の高い事業および海外への積極的な投資を行なうことにより、収益基盤の強化を行なって競争力を高めている。

同社の現在の事業領域は、有機系素材、無機系素材、電子材料、機能・加工製品の4つだ。

有機系素材事業においては、スチレン系樹脂、酢酸系化成品およびアセチレン系有機化学品の研究開発・製造を行なっている。包装資材や家電製品などに使われる 汎用樹脂から、光学用途や携帯電話、車載用オーディオ機器などの高機能製品向けの機能性樹脂まで幅広く扱う。また、同社の得意分野である高分子技術を基に、原料から最終製品であるプラスチック成形加工までの一貫生産体制をもち、製造・物流・販売面で高い競争力を誇っている。さらには、自動車関連向けに、物性バランスに優れた合成ゴムであるクロロプレンゴム、高圧ケーブルなどの導電や静電気防止用途にアセチレンブラックなど、ユニークな製品で世界的シェアを握っている。

同社において最も歴史の長い無機系素材事業においては、肥料・無機化学品およびセメント、特殊混和材を扱っている。肥料・ 無機化学品は、新潟県・青海工場の可採埋蔵量50億トンといわれる全山石灰石の黒姫山と、自家発電所が供給する16万キロワットの電力などの豊富な自社資源を活かし、石灰石からカーバイドを生成し、合成ゴムなどの有機化学品の原料となるアセチレンガスや、土づくり肥料のロングセラーである石灰窒素など、ユニークな製品を提供し続けている。セメントに関しては、日本海側随一の規模を持ち、北陸地方を中心に地域密着型の特色あるメーカーとして知られている。

電子材料事業は、機能性セラミックスなどの素材、これを複合化してより製品価値を高めた放熱基板・熱対策製品や電子部品搬送材料、半導体生産工程で使用される粘着テープ・機能性粘着剤等、多岐にわたる製品構成となっている。特に、半導体封止材向け溶融シリカフィラーは同社が世界トップシェアを誇り、エレクトロニクス製品の技術革新に寄与している。

機能・加工製品事業については、食品包装用材料、電気絶縁テープ、ファッションウィッグ用原糸、雨どいなど、幅広いプラスチック製品の生産・販売を行っている。また、特筆すべきは、医薬関連事業における関節機能改善剤「スベニール」だ。「スベニール」は、同社が独自に開発した高分子量ヒアルロン酸を原薬にして開発された医療用医薬品で、高齢化社会の進展に伴い増加傾向にある変形性膝関節症に効能があり、高齢者のクオリティーオブライフの向上に貢献している。また、同社のグループ会社である「デンカ生研」では、ワクチンと検査試薬事業を行っており、今後は医薬分野での成長も期待ができる。

同社の強みは、このように、培ってきた化学品に関する基盤技術から多くの複合的な素材を開発し、他にないユニークで優れた製品として、素材から最終製品まで一貫した体制で提供することができることだ。現在では、多くの分野の企業に対して安定的に素材を提供し、各産業を支え、私たちの生活に欠かせない存在となっているのだ。

同社は、2015年に設立100周年を迎える。これに向けて、2007年より「DENKA100」というプロジェクトに全社一丸となって取り組んでいる。具体的には、2015年までに営業利益を2006年度実績の2倍とする目標を掲げ、そのための6つの施策を 行なっている。

各部門では、目標数値に向けて事業の進化・深化に取り組むほか、GCP（Good Company Program）と銘打って意識改革・業務改革を進める。また、人財育成を強化し、社員のモチベーション向上の施策を打つほか、生産技術改革による製品の高付加価値化・生産性の向上により「技術力の進歩」と「現場力・組織力の強化」を図っている。研究開発においては、既存製品の強化とともに、地球環境に優しい新規製品群の開発を進めている。もちろん、企業活動のベースとして、CSRの推進も行なっている。

年齢に関係なく、やる気のある社員の力を引き上げ、研究テーマに説得力があればすぐにスタートできるような柔軟な体質を持ち、また化学分野のトップメーカーとして、工場製造設備、研究機関、分析機関において十分な環境を整えているからこそ、ユニークで多彩な製品群をそろえるまでに成長してきたのだろう。社員達が製品に誇りを持ち、部門を超えて一体感を感じながら、会社を盛り上げていることにも同社のパワーが秘められているといえるだろう。

成熟産業と成長産業の両方において強みのある製品を提供できる同社。この先の100年も積極的な事業展開で、高い技術力を保ちながら、「資源」から「価値あるもの」を生み出す企業となるために、礎を築いている。