株式会社しごとば

株式会社しごとばは、“IT機器運用×ロジスティクス”で高付加価値のサービスを提供しているベンチャーである。

同社の主力サービスは、IT機器運用サポート。クライアントの資産であるPCやタブレット、サーバー、ルーター、通信機器、セキュリティ機器といったIT機器全般の保管・シリアルナンバー管理、組立、キッティング、初期設定・テスト、配送、返却受付・回収、保守・検査・検証、HDD消去、買取・廃棄といった一連の運用を代行する。

同社の特長は、クライアントのニーズに寄り添い、オーダーメイドによるフルカスタマイズを行うところにある。
主要クライアントにおける、次のようなケースが代表的だ。

●賃貸アパート・マンション運営会社の場合
全国に約55万室展開している家具・家電付賃貸物件のテレビに設置する、動画配信サービス用デバイス等の保管から、設定、発送、回収、初期化・再設定、さらに一定条件下における廃棄・買取（再資源化）までのライフサイクルマネジメント（LCM）サービスを提供。

●ベッドメーカーの場合
病院や介護施設向けベッドに設置し、患者に様々な案内を行うタブレット等のモニターや表示動作用PCの保管・管理のほか、初期設定や動作確認を経ての発送までを行う。睡眠状態を監視するセンサーを搭載しているため、当該機能の設定や監視カメラとのペアリングおよび動作確認等も加わる。

●ネットワーク／セキュリティ機器メーカーの場合
官公庁や大手企業向けネットワーク／セキュリティ機器等の保管および個別の設定・動作確認を経ての発送までを行う。

同社では、一連の受発注を行うために、専用の独自システムも開発・提供。必要な作業・管理項目を網羅し、電話やメール等による不正確なやり取りを根絶している。
また、カスタムメイドの作業手順を工程ごとに明確化し、請求の基準ともすべく、全プロセスを分解し工数や時間に換算・数値化。これをISO9001（品質マネジメントシステムに関する国際規格）に準拠する形で遂行している。
「物流会社としては珍しく、どちらかというと製造業に近いプロセス管理を行っています」と代表取締役の野津裕之氏は言う。

こうしたサービスにより、クライアントに対してはBPOの実現によるコア業務への集中が可能になるといった価値を提供。BPOのレベルの高さにおいて、他社では代替できない存在感を発揮している形だ。
「お客様からそのような存在として認めていただき、中には当社の所在地がお客様のロジスティクス拠点としてホームページに記載されているケースもあるほどです」と野津氏はクライアントとの信頼関係の深さに胸を張る。

同社は、2012年に野津氏が設立した。野津氏はそれまで、物流業を中心にコールセンター運営や不動産仲介、通信販売、広告等の広範な事業を展開する、正社員数100名程度の企業のNo.3として事業運営を担っていた。
「軽トラ配送業として5名程度で設立された当時から参画し、経営陣の一角としてそこまで成長させてきた自負はありました。しかしながら、経営問題に忙殺されるようになり、本来自分がやりたかった『お客様が喜ぶサービスを提供する』ことが難しくなったのです。そこで、改めてそうしたサービスづくりに集中できる環境をつくろうと独立を決めました」と野津氏は振り返る。

経験を積んだ物流業としてスタートしたものの、物流だけにとどまらない会社にするという決意も込めて「しごとば」という社名を付けた。
「社名の由来として、“Shigoto-BA”には、“Shigoto”に感謝し、常に最良のパフォーマンスで応えることに努め、 顧客の立場に立った“Brain”となり、“Agent”となり、顧客にとって最良のパートナーとなることを目指すという思いを込めています」（野津氏）。

そして、前職時代に懇意にしていたクライアントから、たまたま新たな業務である“IT機器運用×ロジスティクス”の業務を依頼されたことを機に、当該業務を手掛けるようになる。
「私自身はIT領域と関わった経験はなかったのですが、当該業務に必要な人員体制や設備、ノウハウ等を一から学びながらサービスを組み立てていきました。そして、このサービスに関わるお付き合いの中から次々に新たなお客様をご紹介いただく形で今日まで成長させることができました」と野津氏は説明する。

現在の取引先数は約20社。売上の70%は直取引が占めている。間接取引含め、ユーザーは大手企業や官公庁が大半だ。
「お客様のニーズとして、IT機器に関する専門性をより一層深めたサービスが求められています。そこで、この『Green』で当該人材を採用し、体制強化を図りたいと考えています」と野津氏は強調する。

今後の成長戦略としては、大きな付加価値である“IT機器運用×ロジスティクス”のカスタマイズ内容の高度化とともに、LCMやBPOへのニーズに対応し業務領域を拡張させていく方針だ。
加えて、大手組織のPC端末の一斉バージョンアップにおけるキッティングといった量的ニーズへの対応も検討する。こうした点において、同社が属する企業グループ体制が力を発揮する。

同社は2021年に新潟を本拠地とするマルソー株式会社のグループ企業となった。同グループは23社からなる総合物流を主体とするプロ集団であり、マルソーはM&A巧者として知られる。
「当社単独としてだけではなく、グループ体制の中で成長させていく方向性もあります。いずれにおいても、ロジスティクスの高度化ニーズは増える一方と考えられ、市場としての可能性は極めて大きいと確信しています」と野津氏は力を込める。

同社が掲げるVISION（基本理念）は、次のとおりだ。

「私たちは、三方よし（売り手よし、買い手よし、世間よし）の精神で、事業活動（しごと）を通じて顧客や社会の期待に応えていくことで持続可能性（サステナビリティ）を保ち、常に成長していくことを基本理念とする。」

そして、この実現のために、社員がなすべきMISSIONとして次の5項目を掲げている。

●Shigoto-BAの由来と実行
●プロフェッショナル
●言い訳の無い品質
●チームワーク・仲間
●チャレンジ

以上のVISIONやMISSIONは、野津氏の仕事経験の中で最も重要なこととして考えてきた要素を抽出したものだ。一方、この浸透・促進は、幹部社員が自主的に提案・立案した人事評価制度の定性項目に組み込む形で推進している。
「5項目の中で、社員が共通して最重視しているのは品質だと思います。当社の商品は人材を通じた無形商材としてのサービスであり、これをISO9001に準拠させている要因もありますが、決められた手順に基づき一定の品質基準を担保させることが当社の信頼性を左右するからです」（野津氏）。

このため、オンタイムでは全員が業務に集中。一方、ランチタイムや休憩時間等のオフタイムは、活発にコミュニケーションを取るといったメリハリのある組織風土だ。

2025年10月現在、約20名の社員の大半は二つの課に分かれる。課内でまとまる縦割り傾向を緩和し、会社としての一体感を醸成すべく、両課の若手メンバーを横断的に集めてのグループ活動を実施。また、経営会議には課長以上が出席し、全社最適化を図っている。
スキルアップ策としては、IT関連等の資格取得を会社が費用負担する形で奨励。「さらに、取得したら奨励金を出す等の後押しも検討している」と野津氏。

そんな同社が求める人材像について、野津氏は次のように期待を寄せる。
「仕事は楽しいことばかりではなく、大変なことやつらいことも少なくないでしょう。そんな中でも真剣に取り組み、成果を上げ、お客様から喜ばれれば楽しくなり、個人としても成長できると思います。そこにやりがいを見出せる方、楽しく働ける方に来ていただきたいと願っています」

顧客オリエンテッドの精神を徹底し、なくてはならない、サステナブルな存在を目指す同社。そんな存在感には、やりがいが伴うことだろう。