レンジャーシステムズ株式会社

独立系ネットワークインテグレーター（NIer）のレンジャーシステムズ株式会社。同社は、MNO（携帯キャリア）やMVNO（格安SIM）、ISP、CATVといった通信事業者に対し、ネットワークの設計、構築、運用やコンサルティングを手掛けている。

同社は下請け、孫請けではなく全て顧客と直接取引している。「下請け、孫請けの多重構造が常識のIT業界において、当社の規模で100%直取引というのは唯一無二ではないか」と代表取締役の成田翔一氏は胸を張る。

唯一無二のポジションを築けたのには理由がある。

同社の競合は、大手のNIerやSIer、ICTベンダーであるが、こうした大手は顧客の予算が大きい領域にシフトする傾向がある。国内には多くの通信事業者が存在するが、予算が潤沢な事業者ばかりではない。しかしながら、通信は今や極めて重要な社会インフラであり、その維持は不可欠だ。
同社は創業以来、個々の通信事業者が抱えている課題に寄り添って支援するNIerとして業界から頼られる存在となっている。

「大手のNIerは顧客から言われたことしかやりませんが、当社は違います。プロジェクトに改善すべき点があれば直言しますし、先方が気付いていない問題点も指摘し、最適なプランを提案します」と成田氏は話す。

加えて、同社は通信サービスの可視化・分析、最適化を行うAppQoE（Application Quality of Experience）技術という特殊なスキルに強みを持つ。
最近の通信サービスは動画視聴やオンラインゲーム等、コンテンツのリッチ化が進んでおり、通信事業者は通信品質を維持するための設備投資を常に迫られている。ただ、需要の増加に合わせて投資を継続することは簡単なことではない。
そこで、サービスの利用状況を分析し、利用者の体感品質を損なわないようネットワークを制御することが求められるのだ。これによって通信設備の効率的な利用によるコスト削減が可能となる。

こうした分析・制御等を行う機器のトップメーカーが、米AppLogic Networks社。日本には、同社のほかに3社の大手SIerやNIerがディストリビューターとなっているが、「当社が最も精通していると自負している」と成田氏は言う。他のディストリビューターから導入した通信事業者から、トラブル等で同社への乗り換えを要請されるケースがよくあるという。
「当社は、AppLogicの日本法人やアメリカ本社とも頻繁にやり取りし、常に最新情報の収集や機能理解に努めています」（成田氏）。

24時間365日の運用監視においてもAIの活用や自動化を推進しており、エンジニアの負担軽減に貢献している。
以上のように、同社はネットワークの設計・構築や業務効率化、生産性向上を通じて通信事業者を支え、通信インフラの維持に貢献している。

同社は、取締役会長の相原淳嗣氏が2007年10月に創業し、数名の仲間と共に孫請け・下請けの立場からスタートし、徐々に現在のポジションを築き上げた。

そんな同社の社員数が10名ほどになった2013年、ネットワークエンジニアの成田氏が金融系SIerから転職する。成田氏はMVNO事業者の立ち上げ支援等、様々な業務で活躍し入社8年で執行役員に昇進。その後、携帯キャリアに転じ、再び次期社長として同社に入社する。そして2024年12月、2代目の社長に就任した。

そんな成田氏は、同社のミッションについて“通信業界を支えるラストリゾート”と表現している。ラストリゾートとは“最後の手段”といった意味だ。
「特に地方や中小規模の通信事業者は、大規模な設備投資が少ないことから、課題があっても大手のNIerはなかなか相手にしてくれず『相談相手がいない』『誰に相談すればいいか分からない』といった悩みを抱えておられます。そんな通信事業者が最後に頼る相手として、当社がいるという使命感があります。全国には400社以上のISPやCATV等の通信事業者が存在していますが、こうしたあらゆる通信事業者を支援したいと考えています」と成田氏はビジョンを語る。

2025年9月現在、同社の社員数は25名。男女比7対3、平均年齢39歳といった組織だ。

その組織を束ねる行動基準として、協調性や誠実さ、元気に挨拶すること、積極性、当事者意識等を求めるシンプルな8項目がある。その最後は、“学びと遊び”だ。

これに基づき、同社では社員一人当たり年間10万円の予算を組んで、社員同士による自由なグループ活動を奨励している。日常では得られない経験を共有するために、グループ毎に予算の使い方を相談し、様々な活動を行っている。登山やキャンプ、演劇鑑賞、清掃ボランティア等、活動内容に制限はない。

「職場をコミュニティと捉え、体験や経験を共有することで互いにリスペクトする関係を構築して欲しいです。この活動はあくまでも社員が自主的に運営しており、私は介入しません。口出しをすると社長の意思が加わってしまい、コミュニティの個性を損なう恐れがあるからです」と成田氏は説明する。

また、同社では毎年、熱海や日光といった近郊への社員旅行も実施している。同社ではリモートワーク比率が80%程度と高く、全社員が集まって親睦を深める機会として重視している形だ。
こうしたイベントを通じて社内の結束力や一体感を強化している。その結果、社員の定着率は高い。

人材育成の機会としては、JANOG（日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ）やJAIPA（日本インターネットプロバイダー協会）等の業界団体やコミュニティへの参加を強く奨励している。「社外のネットワークエンジニアや通信機器ベンダーと直接交流することこそが、幅広い情報収集やスキルアップに繋がるからです」と成田氏は説明する。

また、シスコシステムズのCCNA等の資格取得も、テキスト代や受検費用を会社が負担し、支援している。そのほか、社内で社員が主導しての勉強会も活発に行われている。

そんな同社の求める人物像について、成田氏は次のように話す。
「一言で言えば、人の話をしっかり聞ける人。いくら技術力が高くても、相手のことを考えず自分のやりたいことだけを主張していては仕事にならないからです。個々の技術は勉強をすればいくらでも身に付けることができます。顧客が何を求めているのか正確に理解することが何よりも重要であり、そのために傾聴する姿勢を持っていることが仕事をする上で必要不可欠な資質だと考えます。ですので、相手の話をしっかり聞ける方にぜひ加わっていただきたいです。」