独自の光技術で注目を浴びる映像伝送システム開発会社
ジャッカルテクノロジー株式会社は、放送業界や映画業界などで使用される映像伝送製品の開発・製造・販売を行う企業である。非圧縮による映像の光伝送システムを実現している当社は、世界でも希少な存在である。
同社が映像伝送用製品に特化し始めたのは、現在の代表取締役・杉村晃一氏が就任した2002年からだ。
同氏は大手通信企業で無線や光通信、LSIの装置設計に携わる技術者であった。かねてから「次世代の通信とはどのようなものか」について考察を重ねていたが、
「新しいものをもっとスピード感を持って創り出したい」「お客さんの顔が見えるところで仕事をしたい」という想いで独立を決めた。
通信のインフラが電話回線から衛星に向かう中、光通信技術で生きるためには、音声と映像をいかに簡便に扱う仕組みを作れるかに尽きると考えた同氏。
「インターネットの普及はその一環だと思いました。しかし、インターネットで動画を配信することは当社の規模では困難です。そこで、放送や映画の現場に光ファイバーを持ち込むことによって、光通信の定着率を高めていく方向にビジョンを見出していくべきだと考えたのです。」(杉村氏)
代表取締役就任から4ヵ月後、同社が開発した光伝送モジュールが、TVの天気予報などでお馴染みの定点観測用のカメラ装置に採用された。この分野においてトップクラスのシェアを誇る同社は、これを皮切りに映像業界との関係性を深めることとなった。
現在、テレビ局や映像制作プロダクション(テレビ番組、映画)、映画配給会社をはじめとする映像業界を中心に、大手放送機器メーカー、学校、公共施設などを顧客として、自社が開発する映像の伝送システム(伝送モジュール、O/E変換装置、光ケーブルなど)を販売している。放送・業務でのHD制作の需要が急速に進む中、特に光伝送システムの技術で注目を集め始めている。
を通して海外展示会にも出品
折れない光ケーブルや非圧縮伝送を実現する技術力が強み
同社が開発する光伝送モジュールは、あくまでも自主開発によって試作、設計、製造されているが、これまでは取引先であるメーカーの撮影機材の内部に組み込まれて市場に出荷されていた。しかし、「規模は小さくても独立したメーカーとして立ち上がって行きたい」との意向から、開発費を含め全てのリスクを背負って自主開発を続けてきた。2008年夏に公開が始まった映画の制作現場に製品を提供し、現場の評価や意見を取り入れながら、修正を重ねてきた。そこでの成果は、2007年11月の『InterBee2007』における、光伝送システム『IBOS(アイボス)』(同社光伝送製品群の総称)の発表に繋がっている。
同社の光伝送システムは以下のような特徴を持つ。
まず小型軽量化された伝送モジュール。従来の内蔵型モジュールと比較して、外部装置化されたことによって多機能化されたにも関わらず、撮影現場のカメラマンから取り回しの良さが評価されている。また、同社のモジュールは双方向の通信を行うことが可能で、送信機としても受信機としても機能するため、システム構築のバリエーションが拡がる。
そして、光ケーブルは、従来品の常識を覆す耐久性を誇る。なお防水性があるため、雨に濡れたり川などに落としても劣化しない。
さらに、同社がもっともこだわっているのは非圧縮による伝送だ。撮影したままの状態をキープして伝送出来るため、受信側ではリアルタイムで映像を見ることが出来る。
「当社が目指したのは、光通信技術を誰にでも使ってもらえることです。扱いにくいし、コストも高い、といったイメージを払拭するために、使いやすさを追求した結果として『IBOS』が生まれました。開発企業目線で作るのではなく、現場に即した使いやすい物づくりが基本だと思っています。」(杉村氏)
今後は、伝送部分を統合するシステムのパッケージ化を実現し、自社ブランドとして販売する目標を掲げ、着々と準備を進めている。
規格書を買い揃え、開発にあたる
“通信”と“映像”の融合で最先端を目指す
“あなたの夢を実現するためにお手伝いします”と謳うジャッカルテクノロジー社。その事業理念は、サバンナでトラやライオンの食べ残しを掃除する下働き役の“ジャッカル”を冠する社名にも投影されている。
杉村氏は、「できるだけ多くの人の意見を聞いて、それらのニーズを製品に反映し、“こうあったら良いな”を実現して行きたい」と抱負を語る。
同社には、大手グローバルメーカーと共に研究開発を行って共同特許を取得するなど、非常に強いコネクションがある。(製造には大手工場を使用するため自社工場は持たない。)
あくまで自主独立性は堅持しつつも、大手メーカーとの連携体制を崩さないことが同社の強みを形成しているのだ。
「当社はこれまでOEMや受託開発ではなく、自主開発した製品を大手メーカーの機材に合わせてカスタマイズし提供して来ました。現在、自社製品として外部装置を開発するにあたっても、機器をジョイントする各社製品のコンセプトに合わせた開発を行っています。それによって業界の流れが見えてくる。そして、業界の流れに即した最先端の製品を開発することによって、少人数であっても一歩先を進む会社でありたいと考えています。」(杉村氏)
2008年春、同社は、放送業界で長年に渡る経験を積んだプロフェッショナルな人材を迎えた。そして、これまでに蓄積してきた光通信技術に、映像業界の知識やノウハウを融合させることによって、さらなる進化を遂げようとしている。もちろん、その先ににらむのは海外展開だ。
同社の光伝送システム