株式会社Ridge-i

株式会社Ridge-iは、「技術の高みとビジネスインパクトの両方を追求した最高峰のソリューションを提供し、ビジネス・社会課題を解き、新しい社会を創る」というミッションを掲げているAIソリューションカンパニーである。

同社が手掛けているのは、カスタムAIソリューション事業。クライアントのニーズに基づくAIシステムの要件定義から開発、運用までを伴走型で提供する。
サービス領域は、次の5つがある。

●AI活用コンサルティング・AI開発サービス
コンサルティングファーム出身のビジネスコンサルタントとAIのスペシャリスト、エンジニアがワンチームとなり、クライアントの経営戦略とビジネスを深く理解し、要件定義および戦略策定をサポート。先端技術を取り入れた最適なAI・DXソリューションを提案し、開発からMLOps（運用・改善）まで一貫して実現する。次のような事例がある。
・ごみ焼却場のごみピットを撮影し、ごみの種類をAIが自動判別。クレーンの自動運転時間を5倍に増加させた。
・熟練の品質検査員のみが行える目視判定において、マルチモーダルAIに感性評価AIを組み込み、熟練者の感性の定量化を実現し、AIによる品質改善提案を可能に。
・白黒テレビ映像のカラー化の作業工数を生成AIにより60％削減。

●人工衛星データAI解析サービス
光学衛星・SAR衛星のデータとクライアントが保有する各種データを融合し、実利用可能な複合解析AIを提供。特殊な衛生画像・動画データ解析ノウハウとAIの知見を兼ね備えた希少な存在として、官公庁・民間企業に採用された実績多数。直近では、JAXAの「地球デジタルツイン研究に向けたAI の予備検討」プロジェクトに採択されている。
こうした実績により、内閣府主催「宇宙開発利用大賞」を史上初の3回連続で受賞している。
なお、この領域ではWeb上で確認できる全球変化検知アプリケーション『GRASP EARTH』という独自プロダクトもリリースし、森林伐採の検知などに活用されている。

●生成AIコンサルティング・開発サービス
最先端の大規模言語モデル技術を組み合わせ、生成AI活用に向けたDX戦略の構築からAIシステムの設計・開発、オペレーションの構築、人財育成に至るまで、ワンストップでサービスを提供。また、大規模言語モデルの研究開発やチューニング開発も実施している。


●データ＆アナリティクスサービス
データ活用の構想策定から基盤構築、可視化・分析までをワンストップで提供。AI技術を活用した高度な分析で、将来を見据えた経営判断、施策の実行を可能にし、データドリブン経営の実現を支援する。


●デジタルマーケティングサービス
子会社である株式会社スターミュージック・エンタテインメントが、大企業向けにマーケティングコンサルティング、広告制作、音楽原盤・出版収益の管理において、AI技術と業界知見を活用した新たなAIソリューションを創出・提供。

同社は、2016年7月、代表取締役社長の柳原尚史氏が創業した。

柳原氏は、東京にある有名私立大学の理工学部卒業後、エンジニアとして大手電気通信事業会社に入社する。その後、グローバル大手金融グループに転じて、電子取引や高頻度取引のシステム構築を手掛ける。そこでAIを活用する中、驚異的な可能性に触れて「一企業に閉じて活用するのではなく、広く社会で活用する仕事をしたい」と決意し、独立してRidge-iを設立させた。

データ駆動型社会が進展し、ディープラーニングやGPU等が急激に発展する中、ミクロでは戦略系コンサルファームの提案とシステム実装とのギャップや、SIerと発注者の目標不一致といった課題があった。そこで柳原氏は「コンサルでもSIerでもない、AIソリューション共創パートナーが求められる」と判断。技術の専門家とビジネスコンサルがタッグを組み、クライアントの課題を解決する一気通貫の伴走体制を構築し、パートナーが保有するデータやニーズにAIを組み合わせることで革新的なソリューションをスピーディーに提供するサービスづくりを目指す。

2017年の日本の公共放送番組の白黒映像のカラー化を皮切りに、2018年にはごみ識別AIプロジェクトや衛星画像による重油流出解析を手掛ける。2020年には1回目の「宇宙開発利用大賞」を受賞（以降、2022年、2024年と3回連続で受賞）。2021年には『GRASP EARTH』をリリース、2023年には生成AIサービスを開始し、東証グロース市場への上場を果たす。2024年にはM&Aによりデジタルマーケティング領域にも参入するといった成長を続け、創業10年目である2025年度の売上高は26億円強を見込んでいる。

今後の目標としては、2033年度に売上高100億円を目指している。そのビジョンは、「AI・最先端技術の“First Ask”となり、日本を代表するテックベンチャーとして、高みを目指し続ける」というものだ。

同社の強みは、日本におけるAI研究の第一人者など約10名の技術顧問を擁し、最先端の研究成果をいち早く導入できる体制を構築していること（社員との交流機会あり）。そして、①マルチモーダルAI、②感性評価AI、③少ないデータ量でもAIの精度を上げる仕組み、④最適なAIを自動で組み合わせる仕組みといった4つの独自のコア技術がある。
「AIなど最先端技術の研究論文などを常にリサーチし、パートナーとの協業も積極的に行っていち早くクライアントや社会の課題と結び付けてPoCを行い、社会実装します。また、その成果をプロダクト/サービス化して広く提供し、大きなインパクトを起こし続ける集団を目指します」と常務取締役カスタムAIソリューション事業部長の市來和樹氏は強調する。

同社の社員数は84名（グループ全体：2024年7月現在）で、平均年齢は33歳であるが、エンジニア部門に限れば29歳と若い。一方、コンサルタントは経験豊富な40代のメンバーもいるといった組織だ。

その組織風土をつくる基軸として、次のCORE VALUEとCORE COMPETENCYを掲げている。

●CORE VALUE
1.高め合う専門集団「Ridge」
自分の専門性を持ちつつ、異なる専門性を尊重して闊達に知見をぶつけることで、 1人ではたどり着けない、チームとしてのアイデアと成果を求めつづけていく。
2.プロフェッショナル思考
多角的な視点を持ち、提供する「成果」「価値」へのこだわり。
3.学び続ける。変わり続ける
変化に合わせて、過去に固執せず、全員が進化する。

●CORE COMPETENCY
1.自分ゴトで考える
2.想像を超える
3.プラスα歩み寄る
4.誠実である

これらは、人事考課の項目に組み込まれており、メンバーはそれぞれが行動目標を設定し、その度合いが評価されることを通じて浸透・促進が図られている。
「マネジメントの方向性としては、CORE VALUEの1番目のように各自の“人には負けない”という何か専門性を追求するとともに、異なる領域にも広く関心を持つ“T型”人材となることを求めています。当社の事業が独自開発型ではなく、クライアント対応型として様々な課題に応えるスタイルであることにも依ります」（市來氏）。

人材育成としては、各自のキャリアビジョンを踏まえたプロジェクトへのアサイン、異なるプロジェクト間の知見共有、技術顧問との交流、「Ridge University」と呼ぶ定期勉強会など様々な機会が設けられている。また、業務に関連する資格試験の学習や受験、書籍や備品の費用負担も会社として行っている。
ちなみに、MicrosoftやNVIDIAなどのビッグテックとのリレーションもあり、米国でのイベントに参加した実績もある。
さらに、業務の中で発明を行った場合は、特許出願時と権利登録時に報奨金が支給される。「毎年、対象者が出現している」と市來氏は話す。

また、新たに入社するメンバーには先輩社員がマンツーマンでつき、困ったことなどを何でも気軽に相談できる「バディ制度」が運営されている（バディ同士での飲食費サポート付）。
なお、働き方は週1日の出社が義務付けられているハイブリッド型。勤務時間は、エンジニアやコンサルタントは裁量労働制、バックオフィス部門もフレックスタイム制で柔軟に働ける。
社内コミュニケーション促進策としては、飲み会費用の支援やシェアリングランチ制度、歓迎会などが行われている。

そんな同社の求める人材像について、市來氏は次のように期待を寄せる。
「新しいことへの知的好奇心があるとともに、小規模組織として一人ひとりの役割が広がる機会をポジティブに捉え、チャレンジする意欲のある方にぜひ入社していただきたいと願っています」