株式会社システムフレンド

株式会社システムフレンドは、広島本社と東京支社の2拠点体制で事業を行うIT企業である。“社会を楽しく快適にするためにITエンジニアの力を役立てる”というビジョン、“すぐれた技術を、調査して紹介する、活用を支援する、活用した製品を作る”というミッションの下、ECサイト構築とXR（AR/VR/MR）の受託開発を二つの柱として事業を展開している。

まず、収益のベースを作っているのは、EC部門だ。特にオープンソースの『EC-CUBE』のカスタマイズによるECサイト構築と保守・運用に強みを持つ。2006年、オープンソース化された『EC-CUBE』の最初のパートナーとして、第1号店の構築を受託。以来、クレジット決済による定期受注を実装したデンタル商品の販売サイトや、基幹システムとの連携させたお茶の通販サイト、または代理店経由で介護事業者が購入できる介護用品の卸サイト、各種レセコンとの連携を可能とし150以上の医院が利用する診療予約サイト、国際イベントの公式グッズ販売サイト等、BtoC、BtoBを問わず、数々の実績を積んできた。初期構築だけではなく、保守運用の継続的なサポートまで含め受託。年商100億円に達する大規模なECサイトの保守運用も担う等、安定した収益のベースとなっている。

一方、XR部門は、光学センサーの技術を強みに、デバイスメーカーや医療業界に向けたアプリケーション開発を行っている。TOFセンサーを積んだスマートフォンに向けたアプリの開発キットを試作品開発の段階から受託する等、建築業界や運輸業界、不動産業界等、幅広い業界に向けた開発を行う。同事業を担うのは、Microsoft社のアワードで7年連続MVPを受賞した開発者が率いる11名のスーパーテクニカルチームだ。センシング技術を用い、現実空間と仮想空間を重ね合わせ、見えないものが見える、触れられる、感じられるようにすることを得意とするとともに、小規模チームならではの小回りを利かせながら、クライアントの多種多様な要望に応えている。

その技術は医療分野にも応用されている。広島の病院と共同でリハビリ用の動作解析装置『鑑AKIRA』を開発。関節の可動域をマーカーレスで測定できる利便性等が評価され、全国の有名大学医学部を中心に累計100システムの導入実績を築いている。

このように同社がEC領域とXR領域で築いてきた実績のほとんどが、エンドユーザーとの直取引によるものだ。オープンソースや新しいデバイスに関連した技術コミュニティへの支援活動を通して、技術的なセンスのある大手顧客企業と関係を構築し、直接受注。営業マンを介さずにエンジニア自身が窓口となることでディスコミュニケーションを防ぎ、顧客満足度の高いサービスを実現しているのである。

同社は、1997年8月、代表取締役・朝山俊雄氏が会社員時代の上司と二人で設立した会社だ。朝山氏自身、設立当時から出資者として参画しており、2019年に代表を引き継いでいる。

朝山氏は新卒で就職して以来、IT企業に在籍し、開発に従事してきたエンジニアだ。独立した当時は現在のように働き方を問う風潮はなく、特にIT企業で働くエンジニアは残業や休日出勤が当たり前の時代だった。朝山氏は、当時の上司と共に独立したきっかけを次のように語る。

「仕事が楽になる、便利になると言ってシステムを売っているのに、自分達は身を粉にして働いて何をしているのだろうという疑問がありました。ITで社会が便利になったり、楽しくなったりすることに貢献する会社であるために、まずは自分達がITをしっかり活用して、楽しく便利な仕事ができるモデルにならなければいけない。それが当社設立時の思いであり、現在にも通じるビジョンです」

設立当時こそ、地元の大手SIerからの二次請けを中心に幅広い案件をこなしていたが、低コスト・短納期から脱却するため、2007年に東京支社を立ち上げたことがターニングポイントとなった。その時期は『EC-CUBE』がオープンソース化された時期にも重なっている。人脈を辿った営業活動や、技術コミュニティでの活動でまいた種が実り、『EC-CUBE』を活用したECサイト構築を中心に直取引が増え始めたのである。

「企業が運用するシステムには社内向けと社外向けの2種類があります。社内向けはコスト削減のためのシステム、社外向けは売上を作るシステムである場合が多く、開発費が拠出されやすいのは後者です。そこで社外向けの取引に絞った結果、ECの売上比率が高まっていきました」（朝山氏）。

その一方では、社員の自発的な取り組みを尊重する形で、先端技術の獲得にも取り組んできた。その中から生まれたのがXR事業だ。2000年代に流行った光学センサーとデジタルカメラを活用したセンサー&デバイス事業としてスタート。ARやVR、それらを融合させたMR等の盛り上がりと並行する形で現体制を築いてきたのである。

今後、生成AIによってプログラムを書く仕事が劇的に変わる一方で、システム導入のニーズはますます増えていくことが予測される。システム開発会社は、いかに顧客の意図を汲み取ったシステムを作るかが重要となる。そこで同社は、少数精鋭のチームで顧客と直接対話するポジションで仕事をすることにこだわるとともに、顧客に有用な情報を提供するため、EC、光学センサーといった得意なジャンルに集中した事業を展開する方針だ。

「今後、ECは分業化が進んでいくでしょう。その中で、我々は自分達が得意な分野に特化し、『EC-CUBE』と連携して運用を自動化する等、独自のサービスを開発、提供することで独自のポジションを確立したいと考えています。一方のXRの領域では、以前から製品開発に向けた様々なチャレンジをしてきました。特に、ヘルスケアの領域で築いた大学の先生とのパイプを活用した取り組みを継続していく考えです」（朝山氏）。

“楽しく、便利に”。それは同社の事業展開だけではなく、組織運営にも一貫して通じる重要なテーマだ。例えば、先端技術の研究開発は、会社が特に方針として掲げているわけではなく、技術好きの社員が遊んでいる感覚で取り組むものだ。XRも光センサーが世の中に出たばかりで未開拓の段階から、一人のエンジニアが興味本位で取り組み、形にしてきた事業だ。「仕事は趣味に近く、企業が持つ課題をIT技術やツールを駆使して解決することに面白みを感じる」と朝山氏。

同社は創業時に目指した通り、国が働き方改革をうたい始める以前から、原則として残業や休日出勤のない働き方を実現してきた（月平均残業時間は10時間未満）。毎日定時で退社できる分、自由に使える時間が増え、個々の社員が生活や趣味の中で新しいITの適用分野を考えたり、新しい技術や知識を身に付けていく。そうして身に付けた技術は社外向けのシステムだけではなく、自社の社内システムにも反映され、さらなる業務効率に繋がるという循環を生み出している。

また、同社は働きやすい環境づくりにも注力してきた。同社は原則として出社型の勤務形態を採っているが、本人の病気、子育てや介護等、各社員の事情に合わせ、時短勤務やリモートワーク等、柔軟な対応を行っている。この他にも多様性を重視し、グローバル人材の採用に注力する等、国籍や性別を問わず、ビジョンやミッションを共有できる技術者なら誰でも活躍できる環境を整えている。直取引のため、要件定義から製造、インフラ構築まで、希望に沿ったスキルも積める。


同社のこのような一連の取り組みは、第三者機関からも高く評価されてきた。2022年から4年連続で経済産業省の『健康経営優良法人』に認定されるとともに、2023年にはGreat Place to Work ® Institute Japanによって『働きがいのある会社』にも認定されている。さらに、福利厚生ではコロナ禍に忘年会を廃止する代わりに、毎日8,000歩を目標に歩き、1カ月で25日以上達成すると賞品が獲得できる『歩こうキャンペーン』や、歯科医の受診費用を2万円まで会社が負担する『歯医者に行こう』キャンペーン等、顧客でもある医師たちのアドバイスも取り入れて健康に資する取り組みを実施した。

「社会に役立つことを追求し、企業としてあるべき姿を求めてきたことが結果的に働きがいに繋がっているものと考えています。ただし、世の中はどんどん変わり続けていますので、当社のチャレンジは永遠に続きます。顧客に近いポジションで、エンジニアとして蓄えてきた知識や技術を試してみたい方、ぜひ私達と一緒に仕事をしましょう」（朝山氏）。

朝山氏の考えでは、生成AIが台頭するこれからの社会でエンジニアが生き残るには、顧客とのコネクションをいかに形成できるかにかかってくる。顧客と直接コミュニケーションを取りながら開発を進めるスタイルを確立することで成長を遂げてきた同社には、新しい時代が求めるエンジニアへと成長する条件が整っている。