シナジーブライトン株式会社

シナジーブライトン株式会社は、AI画像処理・解析技術を核とした自動化ソリューションで製造業を支援するスタートアップ企業だ。中国の蘇州、マレーシアのクアラルンプール、そして日本では大手自動車部品メーカーが集積する愛知県刈谷市にオフィスを構え、グローバルに事業を展開している。

同社は、中国、マレーシアでモーターシャフトをはじめとする自動車用金属部品や生産設備等の製造・販売を行う日系企業・シナジーグループを母体として設立された会社だ。シナジーグループは2003年、同社でもCEOを務める桑原康宏氏が創業し、日本でTier1と呼ばれる自動車部品メーカーとの取引を行い、事業を拡大してきた。現在は中国とマレーシアに6拠点を構え、従業員数500名に達し、取引先は日本だけではなく、ASEAN、北米、ヨーロッパ等、世界へと広がっている。

その20年以上におよぶ事業経緯の中で、シナジーグループが製造業として培った経験をベースに、最先端のAI技術を駆使して誕生したのが、同社の提供する自動化ソリューションだ。2018年頃から研究を始め、検査や梱包、位置合わせ等、目的に応じたAIを開発。各種装置に組み込んで、グループ内の生産現場に導入して完全自動化に向けた取り組みとともに、グループ外の企業に向けた営業活動も行ってきた。既に中国やマレーシアの拠点を通じ、現地で生産活動を行う日系企業への導入実績もある。

日本では、既に導入を済ませたグループ外企業の日本本社や、これまでシナジーグループとして取引のあった国内自動車部品メーカーをはじめ、金属加工、食品、樹脂、電子デバイス、医療、成形・シート、日用品等、様々な業種の国内製造業を対象としたビジネスを展開している。取引先のほとんどが各業界を代表する大手企業ばかりだ。

同社が特に注力しているのは、これまで装置化が進んでこなかった検査の領域である。日本で開発するAI画像処理ソフトウェアと、中国で製造する自動化設備を組み合わせ、多種多様な自動検査機器を開発。従来目視で行ってきた検査を自動化することで、人手不足を補うとともに、コスト削減や検査レベルの向上に貢献している。

「我々のアピールポイントは、ソフトとハードウェアをセットで開発できることです。一般的な設備メーカーではソフトウェアは開発できません。当社は完成品だけではなく、ソフトウェアのみ、設計のみ等、お客様のご要望に応じた対応が可能です。特にAI画像処理ソフトウェアは、国内トップレベルの自負があります。不確定要素の大きな春巻きの皮の検査等、他社が不可能だと断った案件を当社の技術で可能にした事例も少なくありません。他社の自動検査機を導入したものの、誤検知や過検知が頻発して困っているというお客様のご相談にも応えています」（桑原氏）。

設立以前から中国、マレーシアで営業活動をしていたため、現時点では大手顧客を中心にしたビジネスを行う同社だが、会社設立に当たり桑原氏が使命に掲げたのは、中小製造業に対する支援だ。

桑原氏は大学卒業後、商社に就職。4年間の東京勤務を経て大阪へ転勤。大手自動車部品メーカーから相談を受けて、中国でベアリング鋼管の調達先を開拓して以来、一貫して自動車業界に関わってきた。その経験の中、桑原氏は、日本の自動車産業は数多くの中小製造業によって成り立っていることを知る一方で、中小企業の立場の弱さを実感してきた。中小製造業の価格交渉力の弱さと、顧客の要求を飲まざるを得ない状況を打破しない限り、日本経済の再興はあり得ない。その思いが同社をつくるきっかけとなったのである。

「日本の中小企業は世界に誇れる優れた技術を持っています。それは紛れもない事実です。特に製造は、管理も含めて群を抜いています。その一方で、検査や梱包の工程はまだまだ人力で行っています。その状況を変えれば、製造の強みも生きてくるのではないか。そう考えて検査や梱包を支援するために、自動化AIのソフト開発と設備の自動化支援に乗り出しました」（桑原氏）。

もちろん中小企業が抱える課題は自動化だけではない。桑原氏自身、製造業の経営を担ってきたことに加え、前職時代には中小企業診断士も取得している。いずれはその知識と経験を生かし、事業承継やM&A等、中小企業が抱える様々な経営課題を解決し、日本経済の再生に貢献していきたい考えだ。

その一方で、同社は、日本の市場だけを見据えて設立された会社ではない。設立当初から、シナジーグループ社が育ってきた中国に加え、北米、ASEAN等、マーケットが大きい国と地域での事業展開を見据えてきた。設立以前から中国、マレーシアで営業を行ってきたのもそのためだ。北米やASEANでも、既に営業活動を始めている。特に北米では現地採用を行い、拠点を開設する計画を進めている。

「現在、米国の相互関税が問題となっていますが、アメリカに比べて日本は人件費が安いため、現地で設備投資をしても1年で回収できます。たとえ25%の追加関税をかけられても、圧倒的なコスト競争力があります。十分に勝機はあると考えています」（桑原氏）。

このような事業展開の中心的役割を担うのが、自動化ソリューションの核となるAI画像処理ソフトウェアの開発と、国内外の顧客との商談や導入支援を行う日本法人だ。現在は桑原氏とCTO・鈴木涼也氏の2名が中心となった少数精鋭のチームだが、今後の事業展開に備えた組織強化が課題だ。鈴木氏と共にソフトウェア開発を担う技術者、将来国内で拠点展開をする際にコアメンバーとして活躍できる人材を募集している。

「“ブライトン”は輝かせるという意味です。お客様の強みと、我々の強み、お互いのシナジーによって輝かせる。社名はそんな思いから付けました。我々のソリューションを導入していただいたお客様にはハッピーになっていただきたい。万が一使われなくなってしまったら装置を回収して返金するとお客様には公言しています。それぐらい自信を持ってサービス提供しています」（桑原氏）。

そんな同社が目指しているのは、社員の成果に応じて評価・処遇するフラットな組織づくりだ。国内経済の停滞、超高齢化社会、労働人口の激減等、様々な社会課題を抱えた今、年功序列型の組織運営を続けることには無理がある。そこで同社は、上司と部下という構造ではなく、全員がフラットな関係性の中で、それぞれに与えられた機能をしっかりと果たせる組織づくりを進める方針だ。

「管理職はあくまでも組織の中の一つの機能に過ぎません。チームメンバーがパフォーマンスを上げられる環境を整えて、管理していくことが、管理職が果たすべき機能です。営業マンが成果を上げられないのは、管理職に管理能力がないことによる結果です。個人の成果によっては、管理職よりも高い給料が払われることがあって良い。全員が納得できる仕組みの会社をつくらなければ事業を継続することはできません」（桑原氏）。

同社が求めているのは営業職、技術職、どちらも経験者だ。技術者は設備が入ってきた後の調整や顧客の窓口を担える開発系のエンジニアを求めている。また、営業職は顧客のニーズやウォンツを引き出して、導入の成果までイメージしながら提案ができる人材を求めている。

「営業は出社する必要はありません。会議は中国、マレーシアのメンバーを含め、Webで定期的に開催しますので、情報だけしっかり集めていただければ良い。そのためにはある程度の経験と知識は必要です。製造業、商社等でしっかり経験を積み、世の中の仕組みを理解した方にご入社いただきたい。技術職の方で営業ができる方も大歓迎です」（桑原氏）。

居住エリアもこだわらない。適正が備わった人材がいれば、その人材が住むエリアに事務所を出すことも考えられる。

長年、海外でのビジネスを経験してきた桑原氏。日本経済が衰退した最大の理由は、成果に対する評価の仕組みにあると指摘する。パフォーマンスに応じてきちんと評価し、新陳代謝を高めながらも、一体感のある組織運営を実現し、日本経済の再建に貢献したいと抱負を語る。同社は、世界を舞台に自分の実力を試したいという意欲ある人材を待っている。