NAXA株式会社

“テレビ・エンタメ” 領域に特化したAIテックベンチャーのNAXA株式会社。特にテレビ業界のDXをリードするAIを活用したプロダクト開発を強みとしている。
「日本が誇るエンタメ業界ですが、機械学習モデル・LLMの活用においては、日本語というニッチな言語、ARIBという日本独自の放送規格が大きな壁となっています。日本のテレビ業界に特化したAI技術を活用したプロダクトを提供しているのは世界で当社のみです。」と代表取締役の中村将也氏は胸を張る。

同社が提供している独自プロダクトは次のようなものがある。

●放送字幕AI
日本の放送字幕生成に特化した独自の音声認識・話者認識エンジンを活用して高精度の字幕制作を行う。さらに、字幕を挿入する時間や位置、文字色、外字、ルビ表示等、従来は手作業で行っていた字幕制作作業を自動化。

●ショート動画AI
独自開発によるシーン検出、盛り上がり分析アルゴリズムにより、縦型ショート動画を自動生成。ワンクリックでショート動画、サムネを制作し、YouTubeやTikTokなどへの予約投稿、各種フォーマットへのエンコードが可能。

●メタデータAI
独自の音声認識エンジンにより、自動でメタデータを付与し、大量のアーカイブ素材を検索可能なデータベースにする。従来、アーカイブ素材から特定人物やキーワードに関するシーンを探し出すには大きな手間を要していた。本プロダクトを活用することで番組内容のセリフからディスクリプションを中心とした時系列メタデータを生成し、必要なシーンをキーワードで簡単に検索できる。

●音源分離AI
完成した動画素材からBGMやナレーションなどの音源を除去し、声とBGMと効果音を分離。フェーダーでそれぞれ音量バランスを調整し、出力することで、元素材の音声トラックを別のものに差し替えることが可能。配信時の放送素材の権利処理や、海外配信時のナレーションの吹き替え業務で活用される。

●デジタルプレイスメント（バーチャル広告合成AI）
ドラマや映画、アニメなどの動画コンテンツ内に映る建物や窓、道路といった広告枠候補となる物体を検出し、その物体があるシーンに溶け込むように広告素材のサイズや画質、色相、明度・彩度、遠近感等を調和させる処理を施したうえで、広告素材を合成表示させるAI広告合成技術。

同社では、放送局や番組制作会社、動画配信事業者などに対して、業務システムの受託開発を行ったり、上記プロダクトをカスタマイズして提供している。主なプロジェクトの実績としては、次のものがある。

・大手テレビ局：見逃し配信アプリの開発、低遅延ライブ配信技術支援、サイマル放送の実証実験
・大手テレビ局：見逃し配信アプリ、新広告技術、インカムアプリの開発
・大手テレビ局：縦型動画配信アプリプロジェクトの立ち上げ、事業計画作成、開発、運用
・大手通信事業者：ライブ・ストリーミング配信サイトの開発
・大手予備校：映像授業配信システムの開発
・ITメガベンチャー：ライブ配信アプリの開発

同社は2019年9月、動画配信アプリを開発するエンジニア数人で創業した。その後、2021年に中村氏がジョインし、現在の放送業界向けDX事業にシフトする。

中村氏のキャリアとしては、次のとおり。
大手SIerでリクルートの広告効果測定サービスの企画営業や新規事業開発に従事。その後、日系コンサルティングファームで大手企業の新規事業開発の支援やオープンイノベーションプロジェクトなどに複数参画する。その後、タクシー広告やマッチングアプリなど、複数スタートアップの創業メンバーとして起業に携わる。その中の1社であるNAXAに2022年4月に経営メンバーとして正式に参画し、同社のグロースに専念する。

中村氏はエンタメ領域に特化して取り組んでいる思いについて、次のように話す。
「日本のエンタメが世界一おもしろい！多様な業界の新規事業開発に携わる中、NAXAでテレビやエンタメ業界の関係者と深く関わるようになり、その思いは確信へと変わりました。しかし、その現場は非常にレガシーでアナログ。業務のほとんどは属人的かつ労働集約的でデジタル化を進めることが困難な状態でした。時代や技術が変わったのに、ルールや現場は変わらない現状を目の前にした時、「誰かがやらないといけないなら自分がやるしかない」と思いました。結果を残すのに時間は掛かっていますが、初志貫徹の思いで自己資本ながら、毎年200%以上の成長を達成することができています。」

現在の同社は、動画技術やクラウド、AIに長けたエンジニアを中心に36名が集まり、放送や通信業界などの大手からスタートアップ企業を相手に、上記のプロダクトやシステム開発を中心に取り組んでいる。テレビ・エンタメ業界に特化し始めてからは3年間で50件以上の開発プロジェクトを行ってきた。

そんな同社のビジョンは、「ジャパニーズエンタメを全開放する」。自社プロダクト提供や受託開発にとどまらず、IP開発や映像制作、およびその2次利用としてのIPコンテンツ販売や広告、マーケティング等の各領域に関わり、それぞれによる収益の最大化に貢献するというものだ。

そしてさらに、フード領域への進出も視野に入れている。

「エンタメは日本の強みですが、テレビを使って大きくプロモーションできるのは、「漫画・アニメ・ゲームなどのIPコンテンツ」と、「食」の2つです。現に、地方の放送局はサケやエビの養殖ビジネスに参入し始めました。1次産業としての養殖にとどまらず、流通や飲食店運営、さらには観光や体験型コンテンツ制作など、6次産業化による多様な展開が期待できます。テレビ局が自社事業として一次産業を行い、自社のフードブランドを持つことで、朝・昼、・夕方の情報番組やグルメ番組、ドキュメンタリーなどで幅広い露出が期待できる。当社としても、WebやSNSでのプロモーションに加え、画像解析やシステム開発といったコアテクノロジーを生かした養殖ビジネスや、ドローンやAIを活用した大規模農業といった技術支援を視野に入れています。世界一うまい日本の食べものをテレビとテクノロジーの力でプロデュースすることで、社会課題を解決するビジネスにできるはず。」と中村氏は意気込む。

同社の組織風土の特色は、“エンタメ領域に関わるGeek集団”であること。
同社には、フルスタックなWebアプリ開発のプロが多く在籍する。その他にも映像解析専門のAIエンジニア、マスター設備やARIB（Association of radio industries and business：電波産業会によって策定された標準規格）に長けた放送技術エンジニアなどが集まっている。同社オフィスは大学のサークルや研究室のような雰囲気で、社員は週2日は出社し、全体の状況を共有しながら、それぞれがで担当するミッションに取り組んでいくスタイル。
「毎月1～2名の新メンバーが入社し、プロダクトもプロジェクトも毎月多くの案件が動きます。常に変化を求めてチャレンジしていくことが重要だと考えています」（中村氏）。

そうした中で、掲げているVALUEは次の3項目。
●MAKE WOW！：新しい価値を
●TRY FIRST！：考える前に動く
●RESPECT FOR！：謙虚に敬う

「業界でオンリーワンの存在として前例の無いことにチャレンジしているベンチャーですので、何もないところから自分で考えたものを作ることを楽しめるような人はNAXAのカルチャーに合うと思います。当然、楽しいことばかりではありませんが、どんなに困難でもなんとかする力がつく環境ですし、なんとかできるチームだと思っています。」と中村氏は話す。

そんな組織にあって、カルチャーづくりの考え方としては“HRT”を重視している。
●H：Humility（謙虚）、R：Respect（尊敬）、T：Trust（信頼）
開発組織として、互いをリスペクトし、気持ちよく働ける関係づくりがポリシーだ。

人事評価は、中村氏が3か月ごとに成果や期待値を基に行っている。24歳で年収1,000万円のメンバーもいる。「1人で2人分の成果を挙げてくれている実力を高く評価している。働き方や稼働時間ではなく、本当の意味での成果が大事です。」と中村氏。

目先の利益よりも前例がないこと、おもしろいことを重視する。そして、世の中にインパクトを与えるものをつくる。Geek集団の一員として、そんな仕事をしたいメンバーを同社は求めている。