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インタビュー画像インヴェンティット株式会社 代表取締役社長・鈴木敦仁 法政大学社会学部卒業小売・ゲーム・IT業界にて、営業・管理・経営企画・事業企画業務を経験。 ダイエーグループにおけるスポーツクラブやアミューズメント施設運営を皮切りに、ドワンゴグループでのゲームビジネス、ホールディング企業の立ち上げやマネジメントに携わるなどエンターテインメント業界を中心に従事。 その後、2011年にBtoBのITサービス事業の創成期であるインヴェンティットに参画。CFO・COOを歴任し、2016年から代表取締役社長CEOを務めている。

はじめに、MDM(モバイルデバイス管理)についてわかりやすく教えてください。実際にはどのようなものなのでしょうか?

パソコンやタブレットなどの端末を遠隔から管理したり、セキュリティ対策などを行うMDM(Mobile Device Management・モバイルデバイス管理)のサービスが、いま企業や教育機関などから注目されています。 そのMDMを中心としたIoTビジネスの先駆けといえるのがインヴェンティット株式会社。創業14年目を迎えるベンチャー企業です。 現在政府主導で進んでいる「GIGAスクール構想」によって、「児童生徒1人1台コンピューター」となる学校へのMDM導入が順調に進んでいるさなか、コロナによってリモートワークを強いられる企業が急増。企業からのMDM導入の問い合わせも増えて来ています。 「いままでの人事、採用戦略を大きく変えていく」と積極的に動く鈴木敦仁社長は、コロナの影響によって消極的な採用にならざるをえない企業が多い中、社員数40名ほどのベンチャー企業にとっては大量採用といえる10名を超える中途採用を行いました。 MDMがリモートワークの生産性にどう影響するのか。MDMを知り尽くす鈴木社長に、人事戦略と共に伺いました。 ポイント ■ 強制的なリモートワーク化で浮き彫りになった生産性と管理の問題  ■ リモートワークを前提に、人事戦略を大きく転換  ■ インターンシップは新卒採用の布石だけではなく、技術者のレベルアップも図る  ■ 強制的なリモートワーク化で浮き彫りになった生産性と管理の問題  ■ リモートワークを前提に、人事戦略を大きく転換  鈴木敦仁社長(以下、鈴木氏):ノートパソコン、スマートフォン、そしてタブレットの3つは、高機能で持ち運びやすいという利便性から、多くの業種で欠かせないビジネスツールとなりました。その反面、盗難や紛失による情報漏洩のリスクがつきまといます。 MDMは、端末を遠隔から制御する技術ですので、紛失したときには第三者が使えないように、たとえばロックをかけたり、場合によっては初期化してしまうことが可能です。 遠隔で端末状況の見える化やコントロールができる、ということです。 −−このMDMが教育現場で広く利用されていると伺ったのですが、どのように使われているのでしょうか。 鈴木氏:「GIGAスクール構想」によって、「児童生徒1人1台コンピューター」というICT(情報通信技術)教育環境が急ピッチで整備されています。学校は主にタブレットなのですが、生徒1人1台のタブレット授業では、先生1人で生徒全員の端末を管理・運用することになります。設定やアプリのインストールといった授業の事前準備から、授業中に使用制限をかけたりといった運用までを1人で効率的に行うには、MDMの技術がたいへん便利です。 なぜなら、先生の端末から生徒全員の端末を一括制御できるので、準備や運用が楽になりますし、忙しく時間の限られた先生のICTに関するトラブルを回避できることは、授業を効率的に進められることにつながります。また、MDMを導入している学校のでは、コロナ対応の為の休校をオンライン授業でサポートしているところが増えてきました。その他、とある進学塾でも今年からタブレットを全生徒に配布し、MDMを導入したICT教育に舵を切っていました。学習塾もコロナによる自粛要請の対象施設になっているので、多くの塾では授業ができていない状況ですが、この進学塾ではリモートで授業を行っていますので、授業の進行維持に役立っているようです。

コロナによって、企業はリモートワークを強いられています。企業からの問い合わせが増えているのも、職場にMDMを導入しようという流れなのでしょうか?

鈴木氏:モバイル端末の導入が増えているからですね。企業においては、情報を守るため、資産を守るために遠隔でモバイル端末をコントロールする必要があります。 リモートワークが広がった今、MDMは必須のソリューションと言えます。 その上で「生産性が上がらない」「社員の管理が難しい」といった問題も浮上しています。 鈴木氏:「つながりにくい」「音声が途切れる」「動画が止まる」などのトラブルは、回線の問題であるケースがほとんどです。これは今のところ残念ながら、社員各自もしくは会社がネット環境を整えるしか方法がありません。 環境を整えたうえで、生産性を上げるポイントは、テレカンで行うコミュニケーションを社内で行うコミュニケーションと同様のレベルにまで引き上げることです。そのためには「働き方の見える化」が必要だと考えています。 −−「見える化」と、言葉でいうのは簡単ですが、具体的にはどのようにすれば? 鈴木氏:端末にMDMを導入することで、「いつ、誰が、どのアプリを、どのくらい活用したのか」を視覚的に把握することができます。リモートワークでも生産性を落としていない社員と、落としてしまった社員の端末の使い方を比較すれば、使い方に違いがあることがわかります。「どのようにすればリモートワークでも生産性が上がるのか」というノウハウを社内で構築することで、生産性を向上させることも可能となります。 さらに生産性には、社員の体調やコンディションも大きく影響します。これはリモートワークでも同様ですよね。オフィスで働いていれば、社員の不調に誰かが気づいてフォローすることができますが、リモートワークでは中々できません。例えば、「昨日は根を詰めすぎて寝不足なんだ。だから少し調子が悪そうなんだね」といった、出社するからこそ把握できる社員の体調やコンディションも見える化できれば、リモートワークでもコミュニケーションの質をさらに上げることができるのではないでしょうか。 さらに、働きすぎの防止による体調管理を通じて、企業としてのコンプライアンス遵守へも繋がります。 −−そのようなことは可能なのでしょうか。 鈴木氏:ウェアラブル機器が進化していますから、体調やコンディションを計測することは難しくありません。(特に以下は削除可)弊社の『コネテク for ヘルスケア』というプロダクトが、「オムロンヘルスケア株式会社」のウェアラブル血圧計『HeartGuide』に日本国内で初めて対応(2020年4月8日現在)しました。『HeartGuide』は、日本で初めて医療機器認証を取得した腕時計タイプのウェアラブル血圧計ですが、血圧だけでなく歩数などの活動データや睡眠時間などの睡眠データの計測も可能です。 弊社は2年前に、障害者福祉施設の協力を得て、利用者とスタッフのコミュニケーションを補う実験を行いました。表面的な対応だけではコミュニケーションが難しいところでしたので、利用者のバイタルデータやスタッフの日報などを、電子カルテと連携して見える化したのです。スタッフはそのカルテを日常的に参照しながら、利用者とのコミュニケーションを築いていきました。すると利用者からのクレームが減り、どの利用者も表情が穏やかになり、スタッフのストレスも軽減されました。結果的に業務効率も向上したのです。 物理的に別の場所にいることで、「ヒト」に対する情報量が圧倒的に少なくなるリモートワークも、体調やコンディションを見える化することで生産性は向上すると思います。 −−御社は中途採用によって組織を拡大してきましたが、やはり「即戦力の採用」には中途採用がベストという考えだったのでしょうか。 鈴木氏:スタートアップやベンチャーでは、サービスの立ち上げを早期に行うこと、マーケットを捉えること、そして事業を継続していくことが最も重要です。一から教育する時間的余裕はありません。「即戦力になるかどうか」を第一に考えると、どうしても中途採用になります。

−−その技術者の採用基準を大きく変更したそうですが、その理由はなんですか?

鈴木氏:特に技術者に顕著なのですが、即戦力となる技術者には職人気質の人が多く、組織の中でも一匹オオカミ的な存在になりやすいのです。 会社の規模が小さい創業段階では、取り扱う案件やプロジェクトも小規模のものが多いし、想定外のことを含め幅広い範囲を少人数でこなす必要があるので、個人のマンパワーが重要です。しかし、会社が成長し、ユーザー数が増え運用規模が拡大していくにつれて、チームや組織といった総合力が問われますので、今まで長所だった点が今度は弊害となってしまうのです。 弊社は現在のコロナ対応の前よりリモートワークを行なっていますが、リモートワークは今まで以上にコミュニケーションの質が生産性に大きく影響するようになります。 そこで、この中途採用の基準を大胆に見直すことにしました。これまでの技量と経験を中心とした技術者だけではなく、コミュニケーション力があり総合職的な視野で会社全体の成長に貢献できる技術者層を増やしていく採用に舵を切ったのです。 −−総合職的な視野を持った、会社全体の成長に貢献できる技術者とおっしゃいますが、具体的にはどのような人材を採用することにしたのでしょうか。 鈴木氏:いままでは、営業部門からの要望、言わば社内で発注された仕様に対して、いかに正確に開発できる技術力があるかを重視して採用してきました。これからはコミュニケーション力を駆使して想像力を働かせて、いかに顧客を満足させられるかという視点で開発できるかどうかを、判断基準として採用します。 とはいえ、そう簡単に見つかるものではありませんので、「個人として成長したいという意欲」の高い人を採用して、結果として会社も成長させたいと考えられる人に育てていく計画でいます。 −−具体的には、どのように育成していくのですか。 鈴木氏:既存の社員にも問題意識を持ってもらうために、弊社も1on1ミーティングを導入しました。少なくとも1か月に1回、部門のトップと社員が1on1ミーティングを行い、会社の方向性と個人の意識にズレがないかを定期的にチェックしています。個人の実績が会社の方針、会社の成長に合っているかどうかが、評価の最大ポイントになることを認識してもらいました。 もちろん社長と部門トップの1on1ミーティングも月に最低一回は開き、会社の方向性や目的意識を常に共有することも行っています。 また、今後はコロナ緊急対応が収束した後も、引き続きテレワークも織り交ぜていくことになりますから、いかにミーティングの質を落とさずに行えるか。その仕組み作りがポイントになっていきます。弊社のヘルスケアIoTサービス『コネテク』を使ってバイタルデータを可視化することにも社内で取り組んでいきたいと考えています。 −−組織運営に関してですが、御社はこれまで、事業の中核的な存在である技術者の開発チームでは、「スクラム」によるチーム運営を行って来ましたが、御社なりの特徴はありますか? 鈴木氏:「スクラム」はアジャイル開発の手法の一つで、トヨタ自動車がGMとの合弁会社を作った際に効果を出したことでも有名なトヨタ生産方式が基礎とも言われる「PDCAの手法」です。2週間を基本単位とし、3か月先、6か月先などに達成すべき目標に向けて、今やることをチェックして実行します。2週間たったら再検証して、うまく機能していればそのまま続行しますが、そうでない場合は計画を見直して、新しい計画のもとで、また2週間やってみる、という手法です。 元々はウォーターフォールに近い形で開発を行なってきた弊社ですが、スケジュールの厳守と品質のバランスを取る為、開発チームに導入してきました。弊社にとって開発部門は成長のエンジンといえますので、基本的な経営方針とズレたまま開発部門が突っ走ると、会社として大きな損失になってしまいます。 リモートワーク環境での社内コミュニケーションにはズレが生じる可能性が高くなるリスクがありますから、そのズレを極力なくすためにも、この手法を他の部門やソフトウェア開発ではないプロジェクトにも広げていこうと考えています。

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