株式会社羅針

株式会社羅針は、2006年の創業時より「ハイクオリティをロープライスで」をモットーに、ブランド時計の販売・買取を展開している。

高級ショッピングの中心地である銀座に2店舗、大阪心斎橋に1店舗、さらには2025年1月に新宿店をオープンした。有名ブランドの最新モデルから、流通数が少ないアンティーク品まで、幅広い商品ラインアップで顧客ニーズに応えている。ロレックスやパテックフィリップ、オーデマピゲ、オメガ、グランドセイコー等、取扱商品を「高級時計」に絞っているのが特徴だ。

「当社が扱う時計の多くは、20万円以上の高級時計。中には、数千万円する腕時計もあります。銀座に店舗を構えているのは、日本国内で高級時計を売るのに最も適している街だからです。ブランド品を求めて日本全国どころか、現在は全世界から人が集まる銀座だから成立しているビジネスだといえなくもありません。当社の店舗がある銀座8丁目界隈は、同業他社がひしめく激戦区です」（取締役・田中拓郎氏）。

同業他社が多い高級時計のビジネス。その中で同社が存在感を示せているのは、顧客からの「信頼」に重きを置いて、誠実にビジネスを展開してきた過去があるから。顧客の信頼を得るために、同社は取り扱う商品の「品質」にこだわっている。

「当社で販売する高級時計の大半が、買取品です。ブランド時計は高額な商品なので、買取時も販売時も、お客様に満足していただけるように心掛けています。中古時計となるため、販売前のメンテナンスには細心の注意を払っています。中古時計のネガティブなイメージを払拭したい。そんな思いを胸に、細部までこだわったハイクオリティなメンテナンスを行っています」（田中氏）。

新品と見分けがつかないレベルまで外装をきれいに磨く。内部メンテナンスに関しても、買取った時計は必ず中を開いて正しく動作しているかチェックする。必要な場合は、しっかりオーバーホールして、次の所有者が心地良く使えるようにしている。ムーブメントの状態は、国家資格である「1級時計修理技能士」を持った人材がチェックする体制を整えている。

「リユース業界でも高級時計に特化したビジネスを展開しているだけに、販売する時計のクオリティでは他社に負けない自信があります。自社にメンテナンスのチームを持つほか、外部にメンテナンスを依頼する際も、当社が求めるクオリティ基準をクリアできる会社としか取引をしません」（田中氏）。

高級時計の販売・買取で、同社は「EC事業」に力を入れてきた。常時1,500点以上の高級時計を販売する『GINZA RASIN公式サイト』は、2022年に2万店以上の中から選ばれ、ネットショップ大賞「総合グランプリ」を獲得。『GINZA RASIN楽天市場店』は、2019年から2021年にかけて、楽天市場の年間ベストショップを表彰する「ショップ・オブ・ザ・イヤー 腕時計ジャンル賞」を3年連続で受賞。「GINZA RASINヤフー店」も、4年連続「年間ベストストア（腕時計部門第1位）」を獲得している。

「EC事業は2009年にスタートしました。当時は、数十万円から数百万円もする高級時計をインターネットで売買するのは、一般的ではありませんでした。ブランド品は“偽物”や“模造品”が多い世界だけに、現物を手に取って確かめることができないネット販売は、高級時計とは相性が良くありません。しかし、ネット販売ができれば、事業は大きく成長します。当社がネット販売を成功させることができたのは、クチコミによる信頼の積み重ねとITへの積極投資です」（田中氏）。

同社では、ITシステムを積極的に活用している。在庫管理や出品作業、顧客管理といった煩雑な作業はできる限り省力化するためにシステムを導入。同社が展開する全サイトを自動連動させる自社システムを開発し、店舗間の在庫が24時間365日、自動で更新される。注文も専用のシステムで一元管理。メールや電話でのお問い合わせに関しても、クラウドで一元管理をして、全スタッフが情報共有できる体制を整えている。

「Webサイトを社内で内製しており、変化に対して迅速に対応できる体制を構築しています。商品の徹底した品質管理とシステム化によるスピーディーな対応で、顧客から良質なクチコミを集め、高級時計のネット売買を可能にしました。検索エンジン広告の運用やSEO対策、Webマガジンの運営等にも積極的に取り組み、Webサイトへのアクセスを伸ばしてきました。（田中氏）。

高級時計は、資産価値がある。もちろん株と同じように、その価格は日々上下する。同社では、市場価格から大きく乖離しないよう、他社サイトを定期的に自動クロールしてデータ収集。Webサイトやリアル店舗での販売価格に反映させている。

「ECサイトの運営では、他社の動向を逐一チェックしています。価格だけでなく、キャンペーンや決済手段、発送までの期間等、他社の動きには即座に反応します。楽天市場のレビューは現在『4.94』、Yahoo!ショッピングも『4.89』。クチコミの内容や評価点をかなり強く意識してビジネスを進めています」（田中氏）。

同社の社員数は、店舗スタッフやEC事業の物流担当、商品の在庫管理等を含めて約120名。マーケティング課は7名が携わっている。リアル店舗は年末年始以外休みなし。ECサイトも年中無休で稼働しているため、営業企画やバックオフィス部門もシフト制勤務となる。

「土日も店舗が営業しているため、本社スタッフもシフト制となっています。休みは比較的自由に取れるので、自分のスケジュールに合わせて休めるため、プライベートで土日以外に楽しめる趣味を持っている人には最適かもしれません。土日に休みたいなら、それも調整可能です」（田中氏）。

残業代は全額支給。「みなし残業」がないため、定時に帰ることもできる。というよりも、そもそも残業がほとんどなく、特に残業が少ないマーケティングの部署は、月間3.5時間程度だという。

「成長企業なので、当然売上利益を追っている側面もありますが、マーケティングの部署は、ゆったりとした時間が流れています。無理のないスケジュールでタスクを管理していますので、自分のペースで仕事を進めることが可能です。
また、成果を出すことと同じくらい、健全なワークライフバランスを大切にしています。残業は最小限に抑え、リモートワークのオプションを活用しているスタッフも存在します。」（田中氏）。

中古品のマーケットは、3兆円といわれている。2030年には4兆円に達するとの試算もあり、毎年10%以上の高成長を遂げている業界。中でも、ブランド時計の中古品市場は注目を集めており、投資ファンドが積極的に投資をしているという。

「高級時計の業界は、ロレックスのブランド戦略の成功に牽引される形で、市場が伸びています。当社もファンドの出資を受けていますが、投資ファンドが注目している業界です。高級時計の多くが『機械式』と呼ばれるムーブメントを採用しており、しっかりとメンテナンスをすれば数十年使えます。そのため、資産として高級時計を所有する人も多く、今後も順調な成長が予想されています」（田中氏）。

世界市場の盛り上がりによる安定経営と、高級時計のEコマースを切り開いてきた成果が合わさり、同社は順調に成長している。

「インバウンド需要が戻ってきて、経営は右肩上がりです。EC事業をさらにもり立てれば、会社の経営基盤はより確固たるものとなります。IT系の新規事業も進んでおり、関東以外への進出も加速させたいと考えています。いずれにしろ、マーケティングの人材は、今後の当社の成長に欠かせないピース。大いに活躍を期待しています」（田中氏）。