株式会社arounds

株式会社aroundsは、札幌市に本社を構えるECサイトの運営代行事業を展開している会社だ。2008年、D2C事業を行うECH株式会社の一事業部として業務を開始し、激しい変化に対応しながら、顧客のニーズに応え続けている。契約継続率は80%台を維持し、契約期間が10年以上に及ぶ顧客も稀ではない。クライアントは、広く名の知れた大企業をはじめ、全国の大小様々な規模、幅広い分野のD2C企業だ。

特徴は、ECサイトの運営に関わる業務を一括して対応できる社内体制だ。顧客の窓口となる専属ディレクターを中心に、デザイナー、コーダー、受注対応等の専門スタッフが顧客ごとにチームを組んで対応。ECサイトの構築、集客・販促、効果検証、サイト改善までワンストップでの対応を可能とする。競合他社では対応し切れない細々とした業務までサポートできるところが、顧客から評価されるポイントだ。代表取締役・高階孝典氏が語る。

「ECサイトの運営では、SNSやメールマガジン等も含め、やらなければいけない業務は沢山あります。それらを外注しようとすると、複数の会社に依頼せねばならず、却って手間暇がかかってしまうこともありますが、当社なら一括対応できます。特に手間がかかる、面倒な業務を支援していることも多く、クライアントを柔軟にフォローさせていただいています」（高階氏）。

同社サービスを支えるのは、サイト分析・解析のスキルだ。ヒートマップやABテスト、アクセス分析ツール等を組み合わせて現状分析を行い、課題を抽出。同社サービスのミニマムプランは、サイト分析・解析とシステムフォロー（各種ツールのセットアップや操作説明等）だが、分析結果から抽出した課題の解決策を提案することでアップセルをとっていく。顧客によってサポート内容は変わるが、結果的にフルサポートとなるケースも少なくはない。

また分析・解析を起点に課題解決していく際、考え方のベースとなっているのが、OODA（ウーダ）ループというフレームワークだ。PDCAサイクルとは異なり、OODAループは、観察（Observe）、状況判断（Orient）、意思決定（Decide）、行動（Act）という四つの工程を回していく。

「PDCAサイクルのPlanは顧客が担うべき工程です。当社が担うのは、あくまでも顧客が目的達成に集中できる環境を整備することです。そのため当社の動きにはOODAループの方がマッチすると考えています」（高階氏）。

コロナ禍の下、国内でEC化率が急速に進行する中、EC運営代行のニーズも拡大。同社への問い合わせも急増している。同社は現在、顕在化したニーズに対応するための体制整備と、潜在的なニーズを確実に拾っていくための仕組みづくりに注力中だ。

同社の親会社であるECH社は、白髪ケアのサプリメントを製造販売する会社だ。ECからスタートして、全国規模の有名雑貨店への卸業務等に業容を拡大している。そこで培ったノウハウを生かして外部のEC事業を支援し始めたのが、2008年。それを本格展開するために札幌に拠点を構えたのが2010年。それが同社の母体となっている。

ターニングポイントは2015年。設立以来、顧客から寄せられるあらゆるニーズに応えることで事業を広げていったが、さらなる飛躍を遂げるため、自社の強みを明確に打ち出す必要が生じ、事業戦略の見直しを図ることになった。その中心的な役割を担ったのが、流通業界出身の高階氏だ。

高階氏は、新卒で小売業界に就職。接客販売やバイイングの経験を積んだ後は、大型ショッピングモールの販促や、テナントリレーション等に携わった。そういった業務経験の中で、ECやWebに触れる機会を持ったことが、EC業界に転身するきっかけとなった。

親会社のEC事業でマーケティング、バックオフィス業務等、ディレクターとしての経験を積んだ後、受託部門の事業部長に就任し、事業戦略の見直しに着手することに。そこで着目したのが、現在同社のコアスキルに位置付ける分析・解析業務だった。

「業務を洗い出して、全案件の共通点を探しました。我々がクライアントに提案する際のベースとなるのがサイト分析です。それは自身の強みでもありました。小売店やショッピングモールに関わっていた時も『MS Excel』を使って分析し、それを起点に戦略を練っていました。ただ、分析そのものは同じツールを使いますので、誰がやっても似たような結果になります。分析すること自体より、そこから何が生まれてくるかが大事です。そこでたどり着いたのが、分析を起点にOODAループを回していくという現在のスタイルです」（高階氏）。

その後、2020年12月に親会社から業務分割で独立。社会的な背景もあり、順調に業務を拡大してきた同社だが、まだ課題は残っている。ビジネスモデル自体は人的リソースに依存するため、積極的な新規営業がしづらい状況は変わらない。その状況を打開するために取り組んでいるのが、分析・解析を軸にパッケージ化したサービスの開発である。ミニマムなサービスで裾野を広げることで、特定のクライアントに売上が集中するリスクを低減する意向だ。

また積極的な事業拡大に舵を切れなかった理由は他にもある。人材育成の問題だ。コロナ禍の渦中で会社を設立したこともあり、同社はリモートワークを採用してきた。現在は、札幌本社、東京営業所の2拠点を構えるが、9割はフルリモートで業務を行っている。そういった環境で、自社の考え方やスタイルを共有しながら人を育てるのに時間がかかってきたという背景がある。

しかし自社のスタイルを確立してから7年が経過し、人材も定着してきた今、人材を育成する体制も整ってきた。これまで以上に採用にも注力する計画だ。現在（2023年7月）、同社の従業員は14名。まずは従業員数を20名程度に増やし、クライアント数の倍増を目指していく。

同社は現在、親会社からの干渉を受けることはほとんどない。資本関係以外の事業運営では独立した組織だ。その中で設立以来、高階氏が目指してきたのはマイクロマネジメントをしなくても、目的のため進化し続けるティール型の組織づくりである。

「縦割りされた組織体はイメージしていません。私自身、社長として代表のポジションにはいますが、各スタッフの業務を細かくチェックすることはありません。ディレクターだけではなく、各職種とも担当一人ひとりが自立して、クライアントの支援に向き合えるフラットな組織づくりを目指してきました」（高階氏）。

クライアントへの支援は、1社に対しディレクター、デザイナー、コーダーの三人体制で臨む。クライアントとの窓口はディレクターが務めるが、その内容は、メールも含め、チーム全体で共有している。その共有された情報の中で、チームメンバーがそれぞれ自身のタスクを判断し、業務を進めていくという流れが完成されている。

そのベースとなっているのが“とりあえずやってみる”“もっと簡単に。もっと楽しく”“ひとりひとりがプロフェッショナル”という三つの行動指針だ。日々の業務を簡単に、楽しく対応するためにできる方法を考え、各自がECサイト運営代行のプロフェッショナルとして、責任を持って対応する。社員同士は上下関係ではなく、並列の関係で、常に情報共有と相談をしながら、クライアントの悩みや課題に向き合う。

同社には勤続年数5年以上の社員が多く、このような文化を共有し、維持する上で困ることはないが、リモートワークの環境で人数が増えてきたこともあり、高階氏による1on1ミーティングや各チーム内のミーティングで課題共有を行うといった、社内コミュニケーションの強化にも取り組んでいる。

今後採用する人物像に関しては、限定的なイメージは持たず、多様な人材にアプローチしたい考えだ。まずは応募者の経歴を見て、求めているスキルを最低限持ち合わせているかどうかを判断。その上で高階氏が直接面談し、会話等のコミュニケーション面で問題がなければ採用する方針だ。

「私の方から求める人物像は特にありません。実際にいろいろな方と会って、話をしてみたいと考えています。当社は他社と比べても、個人の判断力や裁量権を与えている会社だと自負しています。いろいろな意味で自己実現がしやすい環境が当社の魅力です」（高階氏）。

親会社の安定した経営基盤の下で安定して働けることも安心材料の一つ。Web未経験でも、小売業界等の他業種での接客販売経験を生かし、ディレクターとして活躍する人材も在籍する。同業、異業種、どちらからでもステップアップを目指せる会社だ。全国からの応募を待つ。