新経営陣のもと、2020年3月期の上期決算で4期連続赤字からV字回復
東京・南麻布にあるエキサイト株式会社(Excite Japan Co., Ltd.)は、主に一般ユーザー向けに無料でのコンテンツ提供をおこなっている会社だ。このメディア事業のほか、課金事業、ブロードバンド事業も展開する。会社設立は1997年8月で、2018年10月にXTech HP株式会社によるTOBが成立し、同社の100%子会社になった。
【主な事業】
メディア事業:ウーマンエキサイト、ローリエプレス、エキサイトニュース、Eレシピ、エキサイトブログ、翻訳など
課金事業:電話占い、お悩み相談室、婚活、エキサイトフレンズ、睡眠促進アプリ「cocorus」など
ブロードバンド事業:エキサイト光・エキサイトMEC光(インターネット回線)、エキサイトモバイル(格安SIM・スマホ)など
収入源は広告収益の他に、ユーザー課金(従量制、サブスクリプション制)やプロダクト販売もある。新経営陣のもとで抜本的な改革がおこなわれ、現在は2015年から4期続いた赤字決算からV字回復中。2020年3月期の上期決算では、エキサイト史上最高の営業利益・経常利益をあげた。
企業価値をさらに高めるため、新規事業開発にも注力している。すでにD2C事業、SaaS事業が本格スタート。技術面では各サービスともにオンプレからAWSへの移行が進められていて、新サービスには新技術を取り入れることが多い。
代表取締役CEOを務める西條晋一氏は、1996年に早稲田大学法学部を卒業後、新卒で伊藤忠商事株式会社に入社。財務部、為替部を経験し、2000年に株式会社サイバーエージェントに移った。同社の専務取締役COOなどを務めた後、2013年にベンチャーキャピタルの株式会社WiLの共同創業者ジェネラルパートナー、2014年にSmart Tagで知られるQrio株式会社の代表取締役を務め、2018年にXTech株式会社、XTech Ventures株式会社の2社を創業。XTechの子会社であるXTech HPを通じて、エキサイトを完全子会社化した。
新経営陣のもとで社員が一丸となった結果、過去最高益を達成したエキサイト。人材への投資の重要性を強く認識し、今後の新規事業を担う人材への投資を決めた。
技術でレバレッジをかけたアイデアとともに、未来はもう始まっている
現在のエキサイトは、メディアプラットフォーム、ヘルスケア、ブロードバンドの3つの領域を主軸とするサービスを展開している。
ヘルスケア事業では、もともとエキサイトフレンズというマッチングサービスを源流に、課金事業の柱として電話占いやお悩み相談室等のユーザーに寄り添うサービスを展開。現在もオンラインでのヘルスケアにまつわる新規サービスを開発中であり、個人のココロの健康維持・増進のためメンタルヘルスケアに特化した事業となる。
ブロードバンドサービス事業では、広帯域で高速・大容量のデータ通信が可能なインターネット接続サービスを展開している。中でも「エキサイトMEC光」は次世代ネットワーク(IPv6 IPoE)を採用し、混雑なく安定した通信を可能とする。
その他の新規事業は、D2C(Direct to Consumer)やSaaS(Software as a Service)が既に本格スタートしているほか、BtoB、とりわけ金融領域でのSaas系新規事業を立ち上げる。詳細は未公表だが、東証一部上場の大手金融企業と業務提携し、企業のお金のやり取りにまつわる課題・悩みを改善するためのシステムを開発中。初期段階のシステムはできあがりつつある。
エキサイトの各サービスは、自社で企画・開発をおこなっている。エンジニア、デザイナー、プロデューサーとともに企画立案、設計、開発、運用をチームで一貫して手がけるため、サービス開発の全工程に関わることができる。その過程で得られるチームメンバーの発言や発案を大事にして、全員でサービスをつくりあげる。
今後のエキサイトは、メディア事業など既存事業の底上げを図りつつ、将来の技術トレンドを見極め、その先にある未来をイメージし、世の中の潜在的なニーズを満たすべく、まだ見ぬサービスのアイデアを具現化していく。旧来の思考や資産にしばられることなく、役員・従業員一人ひとりの意識を未来志向に切り替え、自らも楽しみながら行動することで、社会に影響を与えていく。具体的には、新規事業を事業の柱に育て、企業価値を高めた上で早期の再上場を目指す。
スピード感が増した「新生エキサイト」で、多くを吸収し成長できる
2020年12月時点の従業員数は約170名で、男女比は55:45。新卒・中途の割合は28:72となっている。XTechの人材が続々とエキサイトに転籍して既存社員に刺激を与えているが、フラットな関係性、フレンドリーで協力的な風土は維持されている。さまざまな分野のプロフェッショナルと一緒に仕事ができ、また、経営陣との距離が近く「壁打ち」ができるので、経営者視点も身につく。
月の平均残業時間は20時間程度。評価制度はOKR(Objectives and Key Results)を採用し、高い目標を定め、結果と同様にその過程も評価する。福利厚生は、社会保険完備(IT健保)、ベネフィットステーション、住友生命の団体定期保険など。産休・育休からの復帰率は100%だ。
社員コミュニケーション活性化のため、社内には広々としたカフェスペースや、16の会議室が設けられている。社員のアイデアや情報を気軽に共有しあえる環境づくりを進め、クリエイティビティ向上に役立てている。
今回の採用では、技術職の場合はエキサイトが展開するビジネス、特に新規事業への強い関心を求める。ビジネス職の場合は、新規事業や起業への興味が評価される。学歴の壁はないが、高学歴が好まれる傾向。中途採用され活躍されている人は、新卒で大手→ベンチャー企業→エキサイト、というキャリアの人も多い。求める人物像は、取り組む事業や業務に対しての熱量を保ち続け、フルコミットをやめない人、素直で前向き、周囲を巻き込む力がある人だ。
2018年10月にXTechグループ入りしてから、直間比率を見直し事業部門に人材を集中させ、シンプルな組織体制にした。事業推進と意思決定のスピードをあげるべく、あらゆる業務フローや意思決定プロセスを抜本的に見直してきた。生まれ変わった“新生”エキサイトは、改革により確立された収益基盤を活用し、新規事業や人材採用の強化など積極的な投資をおこなう。変革期の真っ只中で、「自分たちが新しいエキサイトを創っている」という実感を得られるに違いない。