製品納入後のアフターサービスの充実を目指し、デジタルを活用していく
ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、発電設備などのインフラ関連領域や、航空・防衛・宇宙領域など幅広い分野でソリューションを提供している三菱重工。そんな同社のデジタル化を担う新たな部署が立ち上がり、エンジニアを募集している。
「三菱重工は数十の機械製品事業から構成されていますが、この15年くらいで各製品事業を機動的に経営するために事業会社化を進めてきました。ビジネスITについても事業会社ごとで取り組んできました。事業会社のデジタル化をさらに加速していくために、2018年1月に本社側にデジタル部門を立ち上げ、現在の『成長推進室・デジタルエクスペリエンス推進グループ』に至っています」
そのように語るのは、同グループを取りまとめるプリンシパルエンジニアの川口賢太郎氏。
組織としての具体的な役割は、各事業会社ごとに事業のKPIに効くデジタルの活用法を考え、システムの開発から運用までを一気通貫で担うことだ。
三菱重工では「Triple One Proportion(トリプルワン・プロポーション)」という経営目標を掲げている。事業規模・資産・時価総額の比率が1:1:1となるバランスのとれた状態を目指す大きな目標だが、デジタル部門の取り組みは、その中の時価総額に寄与する「収益性」に貢献することにフォーカスを当てている。
「産業機器メーカーですから、お納めした機械の多くは、その後、何十年もお客さまのところで稼働します。これまでは製品の性能で勝負をするために、設計や生産に多くの投資がなされてきました。一方でカスタマーサービスへの投資が十分ではなく、お客さまにご不便をおかけしてところがありました。そこをデジタルの力で解決していこうと。そしてカスタマーサービスの品質は製品の採用に影響してきます。デジタルでカスタマーサービスの品質を向上させ、利益の向上に貢献していきたいと考えています」
具体的には、カスタマーポータル、CRM、IoTといったシステム構築やデータ分析に取り組んでいる。
「製品をご購入いただいたお客さまとのデジタル上のタッチポイントとなるカスタマーポータルがない事業会社もまだあります。カスタマーポータルを整備したり、問い合わせ管理のCRMを構築したり、納入製品をコネクテッドしたうえで管理するIoTシステムを開発したりと、多岐にわたります。また、ユーザーがいろんなシステムを横断的に利用するためのユーザー認証基盤、システム間のデータ連携基盤、情報分析基盤なども構築しています」
業務環境の高度化を担う、いわゆる「情報システム部門」は社内に別組織として存在する。その意味で、デジタル部門は「顧客経験の高度化(デジタルエクスペリエンスデザイン)」を担う貴重な存在なのだ。
「既存システム活用」と「独自システム開発」の両軸で顧客課題の解決にアプローチ
開発環境について川口氏は、「新しいものを入れやすい環境」だと話す。
「若い組織なので技術的な負の遺産がなく、現時点でベストだと思えるものを柔軟に取り入れています。クラウドを活用したアジャイルでの開発を基本としています。正直なところ、デジタル化に出遅れていると思っているので、いち早くキャッチアップするためにも、世の中に既にある『ベストプラクティス』の数々を存分に活用しようと考えています」
解決すべき課題に応じて、SaaSでよいものがあれば積極的に採用するし、なければPaaS(マネージドサービス)を活用して独自システムを開発していく、と川口氏。「だからこそ、SIerでの開発経験も、Webサービス会社での経験も、事業会社での経験も、それぞれ活かせる環境があります」
同社が最も重視しているのが、実行し、見える成果を出すこと。その方法論は最初から答えがあるわけではないからこそ、「こうすればうまくいくんじゃないか」といろんなことを試し、学んでいく姿勢を大切にしたいと語る。
組織文化として大事にしているのが、次の4つだ。
●「学んでいこう」・・・学びながら正解に近づいていこう
●「やってみよう」・・・失敗しながらでもまずはやってみて正解に近づいていこう
●「引っ張っていこう」・・・それぞれの立場でリーダーシップを発揮していこう
●「見せていこう」・・・アウトプットしていこう
精度を上げるために時間を使うよりも、5割くらい見えてきたら一気に前に進め、うまくいったらグロースさせていく…。そんな仕事の仕方が推奨されている組織だ。
現在の規模は30名弱。事業会社側の経営課題や業務課題をしっかり理解して拾い上げていく「プロジェクトマネージメントチーム」と、今回の募集の中心となる、システムエンジニアリングを進める「プロダクトディベロップメントチーム」の2つのチームで構成されている。
「事業会社側は事業戦略は持っているものの、デジタル戦略については解像度が低い場合が少なくありません。どのようにデジタルを活用していけば、事業KPIに効いてくるのか、早い段階からディスカッションに入ります。並行して、お客さまやパートナー企業、従業員の体験を調査し、改善策を考案します。そして事業KPIに効く改善策から、実際のシステムに落とし込んでいきます」
ビジネス領域への越境など、多様なキャリアパスを選んでいける環境
いろいろな事業会社がDXに取り組んでいるが、その取り組み方は各社各様である。同社の取り組み方について、川口氏は次のように話す。
「一言で言うと、『モダンなテクノロジーを活用して、課題解決を継続していくこと』だと考えています。課題解決を継続することが企業競争力を構築していくことだとも考えています。なので、課題解決に必要なモダンなテクノロジーを人任せにはできません。自分たちの手の内にしていきます。」
そのために内製化、つまり人材の強化は必須だ。
「求めるのは、基礎力、ラーニング、アウトプットの3つの要素です。これから組織として色々な山を登っていかないといけないので、色々な山に対応できる総合力・基礎的な能力を求めたいです。新しいことを学ぶ意欲も必要ですし、内省やフィードバックにもつながるアウトプットできる力も重視したいです」
働くための環境整備については、惜しまないという。「開発環境はエンジニアにとってのモチベーションに繋がる重要なこと。これからも重視していきます」
コロナウイルスの影響で、それまでほとんど活用されていなかった在宅勤務制度が一気に使われるようになり、現在はリモートワークが中心となっている。そんな中でもコミュニケーションや生産性は悪くなるどころか良くなっているということで、一体感のある組織運営がされているようだ。
「当社の製品をご利用いただいている多くのお客さまが既にいらっしゃって、そのお客さまに価値を届けられることが、間違いなく仕事の醍醐味ややりがいにつながるはずです。加えて、エンジニアであってもビジネス領域に越境したい人がいれば、チャレンジできる環境があります。もちろんエンジニアとしてキャリアを重ね、その道を究めるような働き方も可能です。いろんな選択肢をとっていける環境ですし、海外プロジェクト担当も十分にあり得ると思います」
広く世界中でビジネス展開する大企業の中にあって、まさに社内ベンチャーともいえる今回の募集部署。貴重なチャンスを見逃さないでほしい。