医療従事者を対象とした専門的な情報発信事業で成長を続ける
「ITを通じて医療情報を発信するネットワークを構築」というモットーを掲げ、2016年に設立されたMedikiki.com株式会社。現在同社では、医療機器情報サイト『Medikiki.com』や、医療従事者の情報発信サイトの制作支援サービス『ホームページ広場』、医療関連人材紹介サービス『Medicarematch』、医療機関における機器管理システム『MMS(Medikiki Management System)』の運用・運営を中心に事業を展開している。それらの同社のサービスに関して、代表取締役兼CEOの中前真也氏は次のように語っている。
「『Medikiki.com』は、医療従事者の方々が医療機器の情報を入手できずに困っている現状を変えるために立ち上げたサービスです。たとえば、血圧計を必要とするドクターがインターネット上で情報を検索しても、表示されるのは一般向けの血圧計に関する情報ばかりで、手術室で使うような血圧計の情報はなかなかヒットしません。そうした課題を解決するために、全体的な情報源として活用していただけるサイトを立ち上げました。また『ホームページ広場』は、医療従事者の方々が研究会やセミナーを開催する際に、その情報を発信するサイトを無料で制作するというサービス。ひとつひとつは小さな情報サイトですが、数多くのサイトが集まることによってバリューが生まれると考えて取り組んでいます」。
2020年の12月に新たな機能を追加する大規模な改修を予定している『Medikiki.com』に関しては、機器の販売代理店が出稿主となる広告収入によって収益を上げている。現在そのメインクライアント数は10社を超え、医療機器に特化したプラットフォームとしての価値を高めながら顧客数を増やしている。また、全国の医療従事者を持つ『ホームページ広場』に関しても拡大は続いており、設立から4期連続で増収増益を果たしながら急成長しているのが同社の姿だ。そして、今後の事業展開については新たな動きがあると中前氏は説明する。
「2021年からは、MMS事業を拡大していこうというのが私たちの考えです。医療機関においては、ある医療機器が院内に何台あるか、その医療機器はいつ購入したものか、という情報の管理が徹底されていないケースが多く、そのために無駄な機器を購入してしまう、必要な機器が不足するといった問題が起こっています。その問題を解決するのがMMSというシステムであり、医療現場をより良い環境にしていくのが私たちの使命だと考えています。最近、大手企業であるリコージャパン株式会社との協業によるプロジェクトもスタートしましたが、今後はこのMMS事業を当社の“核”として展開していこうと思っています」。
リコーグループとの協業によってさらなる発展を目指す事業展開
同社の新たな取り組みとなるリコージャパンとのコラボレーション事業は、2020年10月に発足。2021年早々には、リコージャパン社内に事業部が立ち上がり、本格的な全国展開が始まるということだ。
同社のMMS事業を発展させる取り組みに関し、そのパートナーにリコージャパンを選んだ理由について、中前氏は次のように説明する。
「リコーというブランドのプリンタ、複合機は多くの企業、そして医療機関が導入しています。そして、リコー製の機器のメンテナンスを担当する拠点が全国に約340カ所、サービスマンは約4600名存在します。そのネットワークを生かし、当社のMMSというものを実際に多くの医療現場で活用していただきながら機器のメンテナンスを行うことで、医療機関のお役に立つサービスとなると考えたのが、リコージャパンさんとの協業を決めた理由です」。
プリンタや複合機のメンテナンスを行うサービスマンが、同時に医療機器の管理を行うことで、常に正常に稼働する機器による処置を患者に提供できる。そうした取り組みは、医療の質を向上させるとこにもつながり、また管理件数が増えることによってデータが蓄積され、医療機関にとって適切な機器導入を実現することにもつながるというのが、同社の考えだ。この事業アイデアに対し、複数の企業から協業の申し出があったと語る中前氏は、そのパートナーとしてリコージャパンを選んだもう1つの理由について説明してくれた。
「リコーさんは、当社がこのサービスを推進しようとしていたのと同じタイミングで、医療関連事業の推進を始めていました。ブランドとして自社で医療機器の開発を進めるなど、試行錯誤も繰り返していたそうですし、医療をサポートしたいという強い思いに、互いに共感できたという点が決め手になりましたね」。
リコーという企業に関しては、創業者のチャレンジ精神を受け継ぎ、さまざまな事業への挑戦を続けてきたという特色がある。その部分にも共感を覚えたという中前氏は、これから本格化するコラボレーション事業に注力することはもちろん、その先のさらなる展開も視野に入れていると語ってくれた。
「患者さんが日常で使っている医療機器の管理に関しても、AIやIoTといった技術と連携させることで医療の質を上げることが可能になります。そうした取り組みを、当社の人員体制も強化しながら、リコーさんをはじめとする企業や大学などの研究機関と共同で行っていきたいと思っています」。
ビジネスに共感し、自身の目線から新たなチャンスを発掘する姿勢を歓迎する
医療機器に関連するサービスに特化し、臨床工学技士たちが扱う機器を最大のビジネスアイテムとしてクローズアップしているという特徴を持つ同社。その事業コンセプトの背景にあるのは、広く使われるようになったIT技術を活用したサービスを展開する上では、自らが知見を有する専門分野で強みを発揮することが重要だという強い信念だ。
「扱う商材を変えれば、当社が展開しているものと同様のサービスを真似することも不可能ではありません。一般消費財に関しては多くの物販サイトが存在し、旅行やチケットの予約サイトが数多くサービスを展開していることからもそれは明白だと思います。しかし、医療機器という専門的な分野に特化しているサービスサイトは存在せず、その事業者として初めての存在になるためにチャレンジしている部分が、当社の最大の特徴だと思っています」。
これまでにない専門サイトである『Medikiki.com』、そして支援を受けた医療従事者を会員として獲得することで価値を生み出してきた『ホームページ広場』の運営により、医療というフィールドにおいて確固たる地位を築いてきたことは、同社の大きな強みだ。設立から間もない企業にもかかわらず、日本を代表する企業グループとの協業を実現できたのも、その高い専門性があるからだと言える。
「リコーさんという大企業が、当社のような小さな会社に興味を持ち、共同事業に取り組もうと言ってくれている現実は、私たちの自信にもつながっています。この状況の中で、私たちは自らの強みである医療関連ビジネスのノウハウ、そしてシステム構築に関するスピード感を発揮しながら、事業の成功を目指したいと思っています」。
これから入社するエンジニアにとっては、大手企業との共同事業への参画という大役を担いながら、AIやIoTといった新たな技術分野にも積極的に取り組める同社は、自身の成長の可能性やビジネス開拓への寄与という魅力を実感できる環境となるはずだ。その環境で活躍する人材への期待をにじませながら、中前氏は次のようなメッセージを送ってくれた。
「ビジネスへの共感という軸がぶれなければ、エンジニアが好きなように、好きなことをやれるのが当社の環境。エンジニアがやりたいと思ったことであれば、我々も一緒に勉強しながら推進するという考えなので、チャンスがあるし面白いチャレンジができるはずです。エンジニアの目線から積極的な提案もしていただきながら、実績をベースにした新しい挑戦によって一緒に会社をつくっていく喜びを、ぜひ分かち合いたいですね」。