“世界最速”のインターネットサービス「NURO光」で“第4の通信キャリア”にチャレンジ
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(SNC)は、ソニーグループのネットワークサービス企業として、ISP、NURO光、モバイル、IoT、法人サービスと多彩な事業を展開している。
これまでの主力事業は、「So-net」ブランドで知られるISP(インターネット接続サービス)。国内におけるインターネット黎明期の1995年11月にスタート以来、同社の祖業として“安心・安全”をキーワードにサービス運営に力を入れ、会員数においては、独立系ISP事業者として国内トップ、全体でも3本の指に入る規模を持つ。
そして、新たな主力事業は、固定通信事業での“第4の通信キャリア”を目指し力を注いでいる「NURO光」である。
「NURO光」は、2013年4月にリリースした、国内の個人宅向け超高速固定通信サービス。下り/上り最大20Gbpsという世界最速(※)の回線サービスだ。
同社が固定通信サービスに力を入れてきた背景は、次のとおり。
国内の固定通信回線は、ダイヤルアップからADSL、光回線と進化し、通信速度は改善の一途にあった。それでも「もっと速く」というユーザーの要望は絶えず届いていたのである。
国内の光ファイバーによる固定通信回線には、もっぱらシステムがよりシンプルな「GE-PON」という伝送技術が用いられてきた。一方海外では、システムが複雑で設備にコストがかかるものの、より通信速度の速い「G-PON」という伝送技術が用いられていた。
スマートフォンが普及を始め、モバイル通信が進展する中、通信キャリア各社の投資はモバイル領域に向かう。「GE-PON」が一巡している中で、技術革新の投資が固定通信に向く公算は低いと判断。同社はそこにビジネスチャンスを見出し、「G-PON」による「NURO光」事業の進出を決断、通信設備メーカーに協力を仰ぐ。
「しかし、2010年代の始めの当時、社内外には『光回線サービスが十分に普及している国内に、G-PONの市場はほとんどない』、『国内にG-PONの成功例がない』といった否定的な意見が大勢を占めました。そんな中でも、担当責任者は今後の可能性を信じ、説得を続けて『良いサービスならやってみよう』というコンセンサスを得たのです。そして、自前の設備投資に踏み込みました。ここに、ソニーのDNAといえる先見性やチャレンジ精神が息づいていると感じます」と取締役 執行役員の会田氏は話す。
新型コロナウイルス感染拡大を機にリモートワークが急速に広がり、今後、定着することが考えられている。「NURO光」には、まさに大きなフォローウインドが吹いているといえるだろう。
(※)個人向けFTTH市場(月額$100未満)で世界1位であり、NURO光20Gsが対象です。(Omdia2020年3月時点調べ)
ソニーグループの事業拡大戦略「リカーリングビジネス」の一翼を担う
同社のもう一つの特色は、ソニーグループのネットワークサービスを担っているポジションにある。
ソニーは、事業成長領域の拡大戦略の1つとして「リカーリング」というキーワードを掲げている。「Recurring=繰り返す」という意味で、プリンターの販売後にインクを継続的に販売するように、製品の販売後も顧客から継続的に収益を上げるビジネスモデルを指す。「月額固定料金」を意味するサブスクリプションモデルとはやや異なる。
ソニーは、「Play Station」向け有料サービスや、カメラ「α」のレンズ、高音質ストリーミングサービスなどリカーリング型事業を強化している。1995年以来、ネットワークサービスで会員に向けて継続的にサービスを提供してきたSNCは、ネットワーク技術、リカーリングビジネスに必要な会員管理や請求・入金管理などのプラットフォーム、法人向けにインテグレーションサービスを展開する部隊も有しており、ソニーグループのIoT/AIを中心とした新たなリカーリングビジネスの創出を担う役割として期待されている。
SNCでは、まずはスマートホーム、ヘルスケア、通信、AIソリューションといった分野からサービスを展開しており、
家族やペットの見守り、防犯、家電製品のリモート操作などができるスマートホーム「MANOMA」や、モーションセンサや画像解析といった独自技術を活用し健康状態を計測・記録する「ヘルスケアIoT」、IoTサービスで集められたデータをAI技術でビジネスに活用する「AIソリューション」、独自の通信規格「ELTRES」を用いたIoTネットワークサービスなど、積極的に新規事業にチャレンジ/投資をしている。
IoTサービスには、ハード、ソフト、ネットワーク、クラウドといった技術領域の緊密な連携が不可欠です。逆にいえば、スムーズな連携が“壁”になりがちですが、すべてのアセットがグループ内にそろうソニーグループの場合、ここが最大の強みになり、今後のソニーのリカーリング戦略において、同社の重要性は増す一方といえるだろう。
バリュー“挑創楽夢”による、自由で自主的な風土
同社は、“挑創楽夢”というバリューを掲げている。
・挑(Challenge):スピードと行動を重視し、変化を恐れず新しい「挑戦」を行う
・創(Creativity):お客様にとって魅力的なサービスを見極め、新しい価値とライフスタイルを「創造」し続ける。
・楽(Enjoyment):一人ひとりがプロフェッショナルとして、お互いの多様性を尊重し、働く事を「楽しむ」。
・夢(Dream):当社に関わるすべての人に喜びと誇りをもたらし、それぞれの「夢」を実現する。
このバリューを推進していく上で大きな存在となっているのが、同社ならびにソニーグループにおける年1回の新規事業コンテストだ。SNCの社員は、自由にエントリーできる。プランが採用されると、事業としての“一人立ち”をサポートするという大きなメリットが得られる。
また、自主性を重視する風土づくりにも力を入れている。社員一人ひとりがキャリアプランを立て、自己成長を図れるよう「自己申告制度」や「社内公募制度」などのキャリア支援制度を用意。BtoCからBtoB、また職種の枠を超えて個々が実現したいキャリアを後押ししている。また、育児や介護によるプライベート時間の確保のための多様な勤務形態を揃えた「両立支援制度」や「テレワーク制度」など多様な働き方を実現できる制度も充実している。
人材育成においても、「階層別研修」「選択型研修」「選抜型研修」「通信教育」などのほか、エンジニア向けの「ハッカソン」まで多重に運営されている。また、ソニーグループ内では技術やビジネスノウハウなどを共有する場や他のグループ社員との交流、講演会といった様々なイベントが、参加は自由です。
同社には“自由”と“自主性”を重んじている風土を様々な場面で感じ取る事ができた。