医療動画共有プラットフォーム『iryoo.com』
株式会社メネルジアは、医療動画共有プラットフォーム『iryoo.com』を運営しているベンチャーだ。『iryoo.com』は、医療機関や介護施設、および医療従事者や介護スタッフ向けの「メディア」と「ツール」の両方の側面を持っている。
●メディアサービス
医療に関わるセミナーや講演会、業務効率化のノウハウといった独自制作による動画コンテンツと、製薬会社や医療機器メーカー等からの受託制作による製品PR動画コンテンツを配信。いずれも、メネルジアが企画から制作、配信、効果分析まで一貫して手掛けており、600本を超える動画が公開されている。
●ツールサービス
特定の医療機関や介護施設内に限定した、教育や業務効率向上、情報共有・連携等のための動画ツールを、“人”“時間”“場所”といった多様な切り口で視聴管理できる機能を提供。誰に、どの動画を、いつ、どこで配信するかといった管理がワンストップで可能なサービスだ。さらにはコミュニティ内のライブ配信機能や、音声の自動テキスト化機能、視聴者が試験問題を解答した結果の集計や評価・フィードバックができるeラーニング機能もある。
さらに、特許出願中の『自動動画ダイジェスト機能』も2020年冬にリリース予定だ。例えば、5時間ほどに及ぶ外科手術のシーンを5分程度に自動的にダイジェストできるというもので、視聴者の属性別に編集可能だ。複数の視聴者が、ダイジェスト前の動画を視聴時に重要と感じたり、面白いと思った箇所で“いいね!”をクリックすると、その数が多い箇所を自動的にダイジェストするという仕組み。
これを視聴者の属性別に加工すれば、当該属性に最適化されたダイジェスト動画を自動生成できる。5時間に及ぶ外科手術を全て視聴しなくても、執刀医や助手、看護師、麻酔科医といった属性別に重要と思われるシーンだけをピックアップして視聴できる利便性を提供するものだ。
『iryoo.com』は、2016年12月にメディアとしてスタート。2020年2月にツールサービスを投入するまで、ユーザー数は1,000人ほどであったが、ツールサービス投入後、半年間で2万人と一気に急増する。
「当初は主にtoCとしてのメディアサービスを個別の医療・介護従事者に向けて提供していたのですが、toBとしてのツールサービスを投入してからは、大学病院や公立病院といった大手医療機関や業界団体等への導入が進み、ユーザーが一気に増えました」と代表取締役社長の宇賀慎一郎氏は言う。
「医療業界のエネルギー源」となり、社会を元気に
メネルジアは、2016年12月に設立されたベンチャーだ(当時の社名はiryoo.com株式会社)。その背景について、宇賀氏は次のように説明する。
「情報流通ビジネスが成立する背景には、“情報の非対称性”、つまり情報格差という課題が存在しています。医療業界にも、エキスパートのドクターとインターンの間、ドクターと患者の間といったところに情報格差が存在しています。かつ、医療業界はIT化が遅れている状況がありました。ここに着目し、ITや動画を活用して情報格差の解消を支援することにより、医療の質を高め、社会に貢献できるのではとの思いがありました」(宇賀氏)
しかしながら、スタート後は試行錯誤の連続で、ユーザー数も伸びなかった。そんな2018年12月、3代目のトップとして宇賀氏がスカウトされる。
宇賀氏は、1998年に新卒で外資系医療機器メーカーに入社し、5年間営業職を経験。その後、外資系グローバルヘルスケア企業で4年間、営業やマーケティングを手掛ける。2005年からは、医療機関等ヘルスケア業界に特化したコンサルティングファームで12年間、コンサルタントやCOOを歴任する。20年間以上一貫して医療業界の課題解決に取り組んできたプロフェッショナルだ。
「同じ医療業界にいた関係で、私も同社のことをよく知っていました。新しいことに熱心に取り組む一方、伝統や文化も大事にするというバランスが取れたカルチャーに魅力を感じていたのです。そんな会社が取り組んでいた『iryoo.com』を面白いサービスだと思っていました」(宇賀氏)
宇賀氏は2020年4月、現社名への変更を行う。MENERGIAは、スペイン語で医療を表す“medico”と、エネルギー(活力、源)を表す“energia”を組み合わせたものだ。「医療業界のエネルギー源」となって社会を元気にしていきたいという想いが込められているという。
全員が経営者として、自ら行動を起こし、会社を創っていく
同社のメンバーは、10名(2020年8月現在)。営業、マーケティング、エンジニア、コンテンツ制作といったプロフェッショナル達で構成された少数精鋭のチームである。
「私は『作業要員は不要』と言っています。全員が経営者として、自ら行動を起こし、会社を創っていくことに加担してほしいと考えています。プロパーの社員は4名で、それ以外は他社からの出向者や業務委託のスタッフですが、立場の違いを超えて全員が“同じメンバー”だと思っています」(宇賀氏)
28歳から56歳と年齢の幅は広く、ベンチャーといっても、平均年齢40歳ほどの落ち着いた雰囲気。風土づくりの基軸としているのは、次の「“5co”の約束」だ。
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courage 道を切り開く
conscience 医療従事者と患者への思いを決して忘れない
comprehension 多様性を大切にする
comrade 感謝を忘れない
continuation 成長し続ける
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「この5項目は、自分自身がかくありたいとの思いを言語化したもの」と宇賀氏。あくまでも自由な組織であるが、自由には自律や責任が伴うことを言葉にしたものだ。
「人命に関わる医療の世界では、基本的に失敗は許されません。我々のビジネスは直接的には人命に関わらなくとも、間接的には関わっているのです。ベンチャーはトライ&エラーの世界であっても、その感覚のまま医療の世界で仕事をするべきではないと考えています。そんな基本的な考えの上で、“5co”の精神で仕事に取り組んでいくよう働きかけています」(宇賀氏)
そんな同社が求める人材像は、次の5項目。
1.成長意欲があること。
2.事業や会社の成長に関心があること。
3.自律や責任のもと、自発的に行動できること。
4.仲間や顧客への思いやりを持ち続けられること。
5.チームで医療業界を変えていくことに取り組めること。
「動画と創造力で、医療を変える」そんなビジョンを掲げる同社に関心がある人は、是非一度話を聞きに行ってみてほしい。