大手各社の出資のもと、電子書籍ストアのシステム開発と運営をトータルにサポート。
電子書籍に関連する様々な事業を手がけている株式会社ブックリスタ。コンテンツの取次(出版社からコンテンツファイルを仕入れてストアに卸すこと)、ストアシステムや配信プラットフォームの提供などのASPサービス、プロモーションの企画など、電子書籍事業をトータルにサポートしていることが大きな特色だ。
同社は2010年7月に設立、10年目を迎えた現在は株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、KDDI株式会社、凸版印刷株式会社、株式会社朝日新聞社の4社から出資を受けている。
幅広い事業の中のひとつ、コンテンツの取次にフォーカスするだけでも、同社の実力は明らかだ。コンテンツマネジメントシステム(CMS)を通じて、著者・権利者・出版社から電子書籍ストアへのスムーズな作品提供と、膨大な数のコンテンツファイルの効率的な管理を実現。リアルタイムに売上状況を把握できる管理画面も提供している。仕入先となる出版社は1,800社を超え、取り扱いコンテンツ数は、小説・コミック・雑誌・写真集を合わせて60万点以上にのぼる(ともに2020年3月現在)。
その中で、電子書籍事業について包括的なパートナーシップを結んでいる電子書籍ストアは2つ。“Reader Store”(運営:株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)および“ブックパス”(運営:KDDI株式会社)である。両ストアに対しては、ASPサービスの開発・提供をはじめ、販売分析、コンテンツ企画、ストアの編成業務、施策・キャンペーンの企画、ユーザーサポートなどをトータルに行っている。
小説・コミック・雑誌・写真集などを手がけていることは両ストアに共通だが、それぞれの特色は異なる。“Reader Store”は、運営会社の事業柄、文字&音声によるオーディオブックの配信や、タレントをジョインしたイベントによる販促など、エンタテインメントとの融合による運営に特色がある。一方の“ブックパス”は、通信キャリアならではの圧倒的な会員数を持ち、定額読み放題というサブスクリプションサービスのパイオニア的存在だ。そして、作品の特徴からユーザーの読書傾向までを把握し、両ストアの特色を活かした戦略的なアプローチでバックアップする点に、同社の優位性がある。
その優位性を、“Reader Store”と“ブックパス”以外のストアに横展開していないのは何故か。そこには同社の企業理念が大きく関係している。事項で詳しくふれよう。
感動との出会いの場を提供するため、ストアの運営者と水際までにじり寄る。
横展開していない、と書いたが、それはあくまで株式会社ブックリスタが守りに入っているということではない。事実はむしろ逆だ。同社は現在ASPサービスの開発・保守の内製化を積極的に推進、さらなるビジネススピードの向上を目指している。その目的について、経営企画管理部 グループマネージャーの横手寛子氏は次のように語る。
「目的は2つあります。より優れたASPサービスを構築し、電子書籍業界全体にその評判が広まれば、新しい取引先が開拓できます。それによって、ASPサービス単体での収益を上げる。それが第1点です。
第2点としては、内製化によって開発スピードをつねに高く保ち、エンドユーザーの買いやすさにつなげたいということです。すでにレコメンドエンジンには力を入れていますが、より利便性を高めることでエンドユーザーの購入単価を上げる。そうすればストアの売上は伸び、当社の収益もさらに向上しますから」。
ただし、ASPサービスの提供を通して、包括的なパートナーシップを結ぶ協業先を増やすかどうかは別判断である、と横手氏は語る。ASPサービスの領域を強化することが最終目標ではないからだ。
同社は、“電子書籍での多様な取り組みを通じて多くの人々へ感動との出会いの場を提供しつつ、新しい価値を生み出していく”という企業理念(一部抜粋)を掲げている。つまり電子書籍というコンテンツを通して、“感動との出会いの場を提供”することが最終目標なのだ。そのために同社がやるべきことは、ASPサービス単体の提供にとどまらない。前項でふれたように、ストアの特色を踏まえたコンテンツ企画、ストアの編成業務、施策・キャンペーンの企画、ユーザーサポートまで、文字通りトータルに関わっている。
「感動との出会いの場を提供するために、ストアの運営者と一緒になって、(エンドユーザーのいる)水際まで。それが当社の目指しているものです」。
現在パートナーシップを結んでいる2つのストアですら、それぞれに特色があり、水際までのアプローチは異なる。その違いは、各ストアを担当する社員の仕事ぶりにも影響を与えるほどだ。言い換えれば、パートナーシップを結ぶことは、それぐらい“入り込む”ことなのである。だからASPサービスの導入先を広げることと、協業先を増やすことは、別の判断が必要なのだ。同社はそれほどまでに、“感動との出会いの場を提供”することにこだわっているのである。
評価制度、研修制度のベースとなり、社員の成長を促す5項目の“行動指針”。
株式会社ブックリスタは、内製化を進めるため、2021年3月までに約20名の採用を計画している。
対象となるのはプログラミングなどの実務スキルを持つエンジニアで、配属先はシステム部だ。基本的に同社の社員は、出退社時間を自らの裁量で決められるが、システム部の社員はその自由度が最も高い。生産性に影響がない、あるいはさらに高められると判断すれば、午後からの出社でも、終日リモートワークでも問題はないという。そして、その自由な働き方に惹かれて転職してきたエンジニアも多いとのことだ。
もっとも、約20名の採用というのは、同社にとってインパクトのある数字だ。現在の社員数は80名。予定通りに採用が進んで100名体制になれば、入社1年未満の“新人”が2割を占めることになる。前項で紹介したような基本理念のもとで、ブレることなく事業が進められるのだろうか。そこで重要になってくるのが、“行動指針”である。
同社の行動指針は、“自由を楽しもう” “挑戦を楽しもう” “違うことを楽しもう” “責任を楽しもう” “お客さまと楽しもう”という5項目によって構成されている。
協力会社に対する管理が中心だったシステム部では、実際に手を動かしてプログラミングができる、つまり実務スキルを持ったエンジニアの採用が課題だ。しかし、スキルがあれば良いわけではなく、上記の行動指針5項目に共感し、一緒に行動できる人材であることが採用の可否を分ける。入社後の評価制度にも、行動指針は盛り込まれている。それほど重視しているのだ。
一方で、研修制度を通してエンジニア一人ひとりの成長もバックアップしている。評価をもとに“目指してほしいエンジニア像”を上司と本人で共有。その本人に必要な集合研修を研修会社と共同でカスタマイズし、研修で必要な知見を身につけてもらうという流れだ。その結果、実務で成果を発揮したエンジニアは、行動指針に照らし合わせて評価を行う。行動指針とその前後のプロセスに、一気通貫のストーリーが描かれているのだ。
横手氏は言う。
「エンジニアに限らず、社員一人ひとりの成長が会社を成長させ、企業理念の実現につながると信じています。そのための行動指針であり、決してお題目ではありません。これから当社に入社してくださる方とは、しっかり目線を合わせ、一緒にゴールを目指したいと考えています」。
株式会社 ブックリスタの社員の声

40代後半
2020年07月入社

30代前半
2015年04月入社

40代前半
2018年06月入社
...続きを読む