業務系全般と物流業界向けシステムに強み。ノウハウを活かして自社製品も
アルケー情報株式会社は、システムの受託開発、海外ソフトウェアの輸入・導入、及び自社開発のAI・IoTプロダクトの製造・販売を手掛ける会社だ。業務系システム全般を得意とし、海外ソフトウェアは、主に物流業向けの音声システム『Vocollect Voice(ヴォコレクトヴォイス)』を取り扱っている。2011年に富山県で創業した。現在も本社は富山にあり、システム開発の部隊は、東京と海外の拠点で活動している。
受託開発とソフトウェア導入は、いずれもクライアントと直接取引している。両事業は切り分けられるものではなく、ソフトウェアの導入から取引が始まり、他の業務システムの開発へと発展するケースも多い。アルケー情報の課題解決力や技術力、真摯な対応等から信頼を得て、発展していく形だ。そして、これらの実績とノウハウが結実した自社のプロダクトが、自走カート『NAJM.』だ。AIによる自走制御のソフトウェアを搭載した小型カートで、倉庫内等での利用を想定している。現在は、試験的に導入を進めている段階で、評判は上々だ。今後、本格的な展開を目指す。
アルケー情報は、コンピューター関連サービス会社出身の千葉祐基社長が立ち上げた。「創業時は固定の顧客がいたわけでもなく、ゼロからのスタートでした」と当時の話をするのは、ソリューション事業部 事業部長の林氏だ。林氏自身は、富山県の有名メーカー系列のシステム開発会社で、業務アプリケーションの開発に携わっていた。「自分のスキルを上げたい」という気持ちと、アルケー情報の企業姿勢への共感から、2013年に参画した。
共感した企業姿勢とは「人工(にんく)の積み上げで金額を提示するような関係とは違って、お客様にとって真に価値あるサービスを提供し、それに見合う金額を提示し、もしそれがお客様の投資能力に見合わない時は正直に伝えるような、お互いに良い関係で仕事をすること」だと林氏は言う。その姿勢は創業以来、今も変わらない。誠意ある対応と実際に提供するサービスの品質の高さ等から、声がけも徐々に増え、現在に至っている。小規模な会社ながら光るものを持ち、AI×IoTという最先端の技術を駆使した自社プロダクトを展開するまでになった。
アメリカの研究開発機関とも共同研究中。可能性あふれるAI搭載自走カート
自社プロダクトのAI搭載の自走カート『NAJM.』開発のきっかけとなったのは、アルケー情報の主力取り扱いパッケージである『Vocollect Voice』の導入時の経験だ。『Vocollect Voice』は、倉庫の作業員が使う音声ピッキングのソリューションで、ヘッドセットを装着し、音声の指示通りに動いて必要な商品を取ってくるというものである。
アルケー情報では提案時に、作業員の作業風景をビデオで撮影し、動きを分析した上で、導入により、どの程度作業が効率化し、どの程度の人員削減が見込めるか、といったことを具体的に示してきた。この丁寧な提案が奏功し、『Vocollect Voice』の導入やその後の受託開発へと繋がってきたのだが、効果は、それだけではなかった。提案過程で撮影した作業風景の映像が、貴重な資料となったのだ。
「ビデオを撮りながら、作業員の方々の歩いている時間が、かなり多いことに気付きました。この時間をカットするプロダクトを実現できれば、ニーズがあるのではないかと考えたのです」と、林氏は言う。そこで、自走カートというアイデアが生まれた。「ただし、我々にはITのバックグラウンドしかありません。機械のことは分からないので、カート業界に競合として乗り込むのではなく、カートに乗せるAI、IoTのソフトウェアを作ってメーカーに提案しよう、パートナーになろうと考えました」(林氏)。
このアイデアが実を結んだ『NAJM.』は、既にハードウェアもソフトウェアも完成し、お客様先でフィールドテスト中だ。しかも、アメリカ・テキサス州に本拠地を置く世界的な独立研究開発機関とAI部分を共同開発中という本格派でもある。
『NAJM.』の特長は、AIによる位置認識と経路計算、衝突回避の機能を組み合わせた自走制御と、複数カートの同時制御ができることである。そして、ハードウェアを問わず組み込むことができ、幅広い展開可能性を持つことだ。「例えば病棟での入院患者への配膳業務や、掃除ロボットへの搭載、空港内の手荷物カートの最適配置等にも展開できるでしょう。既に、倉庫業界以外からも関心を持っていただいています」(林氏)。
多方面からの関心を受け、どう展開できるかと知恵を絞る。アルケー情報の強みは「テクノロジー屋さんではないこと」だと林氏は言う。「現場の仕事を理解し、具体的にどのように活用したらお客様のためになるか、それをどう製品に落とし込むかと、これまでもずっと考え、実現してきました。技術に詳しいだけの会社ではなく、現場を語ることができる会社です」それはそのまま、同社におけるやりがいや仕事のおもしろさでもある。
育児中の方も歓迎。国際色豊かで働きやすい職場。多様な挑戦機会も
アルケー情報のもう一つの特色は、国際色が豊かであることだ。江戸川区にあるオフィスを訪れると、出迎えてくれたのはインド人のお母さん達だった。日本のIT企業に勤務するインド人技術者の配偶者である。本人も高い技術を持っているのだが、育児との兼ね合いでフルタイムでは働きにくい状況に陥っているのだ。インドにも複数の開発パートナーのエンジニアがいて、現地と回線をつなげ、連携しながら、時差を活用した24時間の開発体制を実現している。
執務スペースの隣りには和室があり、時には、学校を終えた子供達がやって来る。あるいは諸事情で保育園に預けられない時等も、子供の居場所になる。もちろん日本人のワーキングマザー(ファーザー)も大歓迎だ。時間の制約等で働くことを躊躇している人がいれば「是非来てほしい」と林氏は呼びかける。一人一人の事情に寄り添った働き方が実現できるのは、この規模の会社ならではだろう。
同社は、創業間もない時期から国際色豊かだった。日本のIT技術者不足から優秀な海外のエンジニアに着目した。伝手を頼ってミャンマーでエンジニアを採用したのが最初だ。その後、進出したマレーシアでは、同国に留学に来ていたヨルダン人エンジニアと出会う。AIの研究をしている優秀なエンジニアで、『NAJM.』開発の中心人物として活躍した。現在も研究の傍ら、アルケー情報とパートナーの関係にある。現在、社員の構成は日本人、ミャンマー人、インド人、マレーシア人、台湾人と多国籍だ。人の広がりと共に、仕事も世界に広がっている。海外ユーザーに向けたソリューションの輸出や、現地法人でのアプリ開発等も手掛けている。
「東京のオフィスには、私を含めて日本人が2人しかいなくて…」と林氏は笑う。日本の顧客向けに、日本での採用も強化する。これから入る人は、まず物流システムの導入に携わる。現場の経験を積むなかで様々な気付きや着想もあるだろう。将来的にはそれらをベースに、『NAJM.』のような自社プロダクトの開発に挑戦する等、積極的に仕事を広げていくことを期待している。
「プログラムを書くだけでなく、開発環境づくりもネットワークも、何でも自分でやります。自分のアイデアを製品化することも。大きな会社ではできない多様な経験ができるので、それを面白いと思う人に来てほしいです。『NAJM.』も、ラジコンを買ってきて作ってみたり、そんなトライをしながら作りました。ものづくりが好きな人には楽しいと思います」と、林氏は言う。挑戦、スピード感、国際色、働きやすさ等、魅力の多い会社だ。林氏は続けてこのように話した。「英語は、働いているうちに慣れるので大丈夫」挑戦したい人を待っている。