オンラインゲームを礎にVRやAI、通信ミドルウェアという技術領域で躍進!
monoAI technology株式会社は、ゲームをベースに、VRやAI、ネットワーク(通信ミドルウェア)といった技術領域で躍進を続ける4社を束ねる管理・持株会社として、2013年1月「株式会社モノビット」として設立され、2019年11月に「monoAI technology(モノアイテクノロジー)株式会社」へ、社名変更を行った。
グループを構成しているのは4社。「monoAI technolog(モノアイテクノロジー)株式会社」はゲーム制作、AR/VR等のXR開発、AIを使った品質管理事業を、「モノビットエンジン株式会社」では、通信ミドルウェアというゲーム関連ソフトウェアのライセンス販売事業を、「モリカトロン株式会社」では、AIの開発を、「株式会社AVOCADO(アボカド)」は“地元でゲームを作ろう”をコンセプトにゲーム制作とVR開発をしており、高知市、山口市、宮崎市に拠点を持つ。
同社は代表取締役社長の本城 嘉太郎氏が、19歳の頃に『Ultima Online(ウルティマオンライン)』 という世界初のMMORPG(多人数同時参加型のオンラインRPG)に出会って強い衝撃を受けたことをきっかけに創業された。
「monoAIグループでは、プレイステーションやスマートフォン用ゲームの開発、VRの開発をしています。現在ではグループ全体で190名ほどの社員がいて、神戸が本社で東京が支社です。3年前に神戸に本社を移しました。日本のほとんどのゲーム会社と取引があります。コンシュマーゲーム主流の時代からネットワークゲームの研究開発を続け、その成果を元に、2013年から『モノビットリアルタイム通信エンジン』を販売しました」(本城氏)
CEDEC(ゲーム業界の技術力向上と情報交流を促進するカンファレンス)での講演がトップクラスの評価を得て、CEDEC AWARDSの選考委員を務めるなど、技術力の高さは広く知られている。加えてオンラインゲーム業界の技術を牽引するトップランナー・中嶋 謙互氏がCTOとして加わったことも話題となった。
monoAIグループは高い技術力をもって「世界で一番面白いゲームを創る」をコンセプトに事業を展開。
ゲームに魅せられ、ゲームに用いられている技術を活用して世の中に価値を生み出そうとしている。
ゲームなどエンタメ分野から産業分野まで、VR技術力で業界をリードする存在
monoAI technology株式会社のグループ4社の事業のカギは「技術力」。同社を代表する技術のひとつであるVR関連製品について、本城氏は言う。
「KDDIと『Linkd-door』というタイトルを「東京ゲームショウ2016」で発表しました。これはゲームというよりVR体験デモです。電話がかかってきたら、VRグラスをかけてVR空間に入り、そこでコミュニケーションする近未来の世界を体験できるものです。当時の展示には、複数で同時に遊べるVRコンテンツがなかったため反響も大きく、テレビなどで多く取り上げられました」(本城氏)
同社のVR関連技術は、ゲームの領域以外でも注目を集め、産業分野でも利用されはじめている。
「自動車等の生産ライン製造では世界一といわれる平田機工(株)が、VRとモノビットリアルタイム通信エンジンを使って『CADVR』という産業用のVRソフトウェアを当社とともに開発しています。自動車の製造工場を作るとき、VR空間に製造機械等を配置して、世界各地の拠点からアクセスして設計を検討できる“遠隔工場設計システム”です」(本城氏)
他にも、産業分野では、サン電子のスマートグラス製品「AceReal」に同社製品が使われている。工場で作業員が研修を受けずに現場に入っても、スマートグラスを付ければ管制室から指示やマニュアルを視覚的に伝えられる。産業分野ではVRが注目を集めており、同社の技術を採用した企業への問い合わせは多いようだ。とはいえ、もともとオンラインゲームを得意としてきた同社。もちろんVR技術をエンターテインメントにも活用している。
「現在は高知(アボガド)でしか遊べませんが自社開発した『Trip Trap Travelers』という、多人数対応型脱出ゲームをリリースしています。また『バーチャルキャスト』(ドワンゴ)のVR空間でのコミュニケーションはすべて当社のエンジンで構築されています」(本城氏)
さらに、社内にVチューバー(Vtuber)用のスタジオを用意したり、高知市でVR体験スペースを運用したり、同社の施策は魅力的なものばかり。同社はこれからも、未来のテクノロジーを使って「VR空間で生活できる」世界を作り上げ、広めていきたいという
「VR空間にオフィスができたら、バーチャル出社ができるため物理的な移動が不要となり、遠方の人や子育て中の人も動くことができます。空間の制約を取り払うテクノロジーとして提供していきたいと考えています」(本城氏)
VRとAI、ネットワークの先端テクノロジーを用いて人々の生活を豊かにする
monoAI technology株式会社の技術力を代表する技術として見逃せないのが AIだ。グループ内でAI分野を担うのはモリカトロン株式会社である。モリカトロンは2017年8月に創立。創立メンバーに、プレイステーション用ソフト『がんばれ森川君2号』等を手がけたクリエイター森川 幸人氏がいることで話題となった。森川氏は、1990年代からAIのテクノロジーを前面に押し出したゲームデザインをすることで知られている。
「昨今、ゲーム業界でもAIを活用しなければという声が高まっています。欧米に比べると日本はAIのゲーム利用は遅れている面があります。そこをフォローしていきたい、森川が培ってきた技術を世界に広めたいという想いでモリカトロンを設立しました。
ゲームキャラクターが人間のような心を持って、我々と暮らしていけたらとても面白いと思いませんか? MMORPGでは、最終的にAIと人の見分けがつかない状態となってコミュニケーションしていくと考え、AIの研究に力を入れています」(本城氏)
monoAIグループの中で、このゲームAIのほかに見逃せないのがもう1つ。
現在グループ内で急成長している、AIを用いた品質管理事業。monoAI technology社が今後、注力していくジャンルでもある。
「この事業で“AIデバッグ”を進歩・進化させていきます。今後、IoT、自動運転など、あらゆるものにソフトウェアが組み込まれていきます。これまでは人手でソフトウェアテストをしていましたが、人手不足の時代になることもあり、AIの力を使って自動化していくべきではないかと考えています。当社はゲームのデバッグをスタート地点として、世の中のソフトウェアに拡大していきます」(本城氏)
優秀なデバッグ技術者の力と標準化した手順でテストする技法を組み合わせ、AIの機械学習を活用して自動化することで「最強のデバッグ事業」を作るのがコンセプトだ。monoAIグループでは、すでに『モリカテスター』というテスト自動化ソフトウェアを開発し、稼働させている。対戦ゲーム等を完全自動でテストすることができ、労力を革命的に削減することに成功したという。
このように、多様な技術を持つグループ企業4社からなるmonoAIグループ。ゲームのテクノロジーを用いて人々の生活を豊かにし、エンターテインメントを通じて充実した人生を送れるようにするビジョンを持っている。グループ企業間の柔軟な横連携もあり、強力なシナジーを生み出し、活躍の場はすでにゲームを超えた広がりを見せている。今後、さらに羽ばたいていこうとしているのだ。
これまでにない新しいテクノロジーへ、エンターテインメントをベースに向き合っていきたい意欲がある人には、魅力的なグループだろう。