人の喜怒哀楽に寄り添う”想い出エンターテインメント”を全世界に
株式会社ソルトワークスは、“想い出エンターテインメント”を事業ドメインとして、独自のWebサービスを提供している会社だ。創業は2008年で、北海道・札幌に本社オフィスを置く。現在まで250以上のWebサービスをリリースし、ユニークユーザーは200万人を突破している。
主力サービスのひとつ、デザイナーズ年賀状作成アプリ『つむぐ年賀』は、2017年から4年連続でAppStoreの「今日のAPP」に取り上げられた大人気アプリだ。自社のデザイナーが手がけた豊富なテンプレートやスタンプを自由に使い、手軽にハイクオリティな年賀状を作ることができる。選んだ写真を自動で切り抜いてスタンプにできる機能を搭載するなど、年賀状作りそのものを楽しんでもらえることも人気の理由だ。
このように、ユーザーがワクワクできるサービスを札幌から世界へ発信すること、そのために自分たち自身もワクワクしながら働いていこう、それがソルトワークスが大切にしている理念である。
現在リリースしているサービスの中には、子どもの成長記録アプリ『グロースナップ』、加工した写真をコンビニで気軽に印刷できるアプリ『つむぐコンビニフォト』など、大手企業とタッグを組んで開発・運営するサービスや、コロナ禍での断捨離ブームとともに売り上げを伸ばしている、ビデオダビングサービス『想い出ビデオDVDダビング工房』などもある。
当社サービスと、他社の類似サービスとの違いは、まずはコンセプトにある。「いずれもはがきやDVDなどの成果物をお届けするサービスですが、売っているのは単なるモノではなく、ユーザーの“喜怒哀楽”や“思い”をカタチにとどめ、エンターテインメントにまで高めたものであると自負しています」(代表取締役CEO・鶴尾康氏)
また、“デザインとテクノロジーの融合”も特長だ。例えば、デザイナーズ年賀状作成サービス『年賀家族』にある“ナジーム”機能は、ベースとなる画像にパーツの画像をあたかもそこにあったように角度や色をぴったり調整して合成できる当社独自の加工技術だ。サービスをよりよく、もっと面白くさせるにはどうしたらいいだろう?クリエイター人一人の強い想いが、家族・友人・仲間との幸せな想い出をカタチにする「人情味あふれるサービス」に反映され、ユーザーの高評価に繋がっている。
大学卒業後3年以内には起業すると決意し、1992年にはそれを実現。現在の礎を築いた。
「最初の3年間で100の自社サービスを立ち上げる!」との決意で創業
「父親や親戚は皆経営者という環境でしたので、自分も高校時代からいずれは経営者になると思っていました。ですので、3年で独立することをコミットして採用してもらいました」(鶴尾氏)
計画どおり92年に独立し、札幌で広告代理店を創業する。流通業をクライアントに業績を伸ばし、年商14億円まで育て上げた。
「当時の広告代理店は、一業種一社でなかったり、料金体系が不統一であるといった問題点がたくさんあったのです。そこを真っ当にしたところ、評価してもらえました」と鶴尾氏は述懐する。しかし、「この業態では、自分が成長できたと感じていてもクライアントに何か問題が生じるとうまくいかなくなる」というジレンマを抱えるようになる。そこで鶴尾氏は、「いかにリピーターを増やすかが事業を継続させる肝になる。B to Cなら自分の成長がそのまま事業の発展にリンクするはず」と考えた。モノを提供するサービスに着目し、「最初の3年間で100の自社サービスを立ち上げれば軌道に乗せられる」と転進を決意、2008年にソルトワークスを設立する。
「そう決意した時、社内にはデザイナーと経理担当がいました。そのメンバーでできることを考え、片っ端からいろいろなサービスをつくってはリリースしていったのです」(鶴尾氏)
試行錯誤の連続の中で、最初にヒットしたのが、結婚はがき作成サービスだった。ポストカード事業に光明を見出し、現在の事業ドメインに収れんしていく。
今後は、“デザインとテクノロジーの融合”をさらに先鋭化させ、事業ドメインである“想い出エンターテインメント”のサービス拡充に取り組む。Webデザイナーやグラフィックデザイナー、エンジニア、アートディレクターなどがタッグを組んで画期的なプロダクトやサービスを開発していく。
「例えば、子育て中の家庭に置かれたAIスピーカーでママが子どもを叱る声を記録し、その音声を使った“今日までありがとうメッセージ映像”を子どもの結婚式で流すのです。感動の嵐になると思いませんか? 同様に、故人の人柄を心に刻む動画作成サービスなど、画期的なメモリアルビジネスを展開していきます」と鶴尾氏は意気込む。
感動を生み出すサービスをつくるために、”自立したクリエイター集団”を理想に掲げる。枠にはまらず、ワクワクできる自分の考えや想いを持ち寄り、それをきちんとカタチにできる人の集まりを目指す。チームワークよく、お互いのスペシャリティをぶつけ合って全身全霊を込め、自分たちの手で新しいサービスをつくり上げていく構えだ。
挑戦者が称えられる風土”やってみるべや”
試行錯誤の中から発展要因を見出してきた同社には、“失敗から学ぶ”ことを奨励する企業風土がある。大切にする価値”やってみるべや”は”やってみよう”の北海道弁。目的を達成するために必要なことを失敗を恐れずに挑戦すること、また挑戦する仲間を称えること。
「そもそも“3年で100個のサービス”と無謀なことを掲げてスタートした会社です(笑)。一通りの失敗は経験し、その効用も知っています。ですから、社内には『将来のために失敗せよ』と話しています。そんな会社はあまりないのではないでしょうか」と鶴尾氏。
メールやSNSなどのメッセージツールが進展していく中、同社はいつまでも年賀状サービスが続くとは考えていない。しかし、優れた人材さえいれば、常に新しいサービスをつくり会社を存続させることができる。だからこそ、結果的に人が育つ「失敗」にポジティブであり、採用にも「本気で何かに取り組みたい」人材を求めて力を入れているのだ。
そんな同社には、「この会社なら、ワクワクできる自分の考えをカタチにできるかも」と思ってもらえるようなユニークな制度も多い。例えば、社内ではお互いをあだ名で呼び合う“ニックネーム制度”。役職に関係なく無くフラットに意見交換ができる関係を推進するために取り入れられ、コミュニケーション活性化につながっている。また、自社サービスの会社ならではの社内コンペ「アイデアボンバー」もある。具体的なサービスのプロトタイピングと検証を行い新規事業サービス案として提案する場で、新規事業として認定されたプロジェクトは、会社の正式な取り組みとして世の中にローンチされます。
また、居心地の良いオフィス環境も魅力だ。同社のオフィスは2フロアあり、1フロアは“ソルトパーク”と呼ばれ、広々としたフリースペースや会議室が集まる。その一角にはバーカウンターも設けられており、グラスを傾けながらのコミュニケーションの場になっている。ソルトパークでは社内イベントや学生を対象としたワークショップ形式のインターンシップなどが行われる。もう一方のフロアは執務スペースとなっているが、主に執務スペースとして使用されるもう一方のフロアも、職種を越えたミーティングを活発に行えるよう様々なフリースペースが設けられ、社員同士、気軽にミーティングを行い、コミュニケーションを取っている。
最後に、同社が求める人材像について、鶴尾氏は次のように呼びかける。
「“デザインしたい”、“システムをつくりたい”という人ではなく、自分たちの手で“サービスを生み出したい”というマインドの方に来てほしいと願っています」