主力の「アイドラッグストアー」は、医薬品ECで20年の実績
株式会社オズ・インターナショナルは、医薬品や化粧品、美容雑貨の輸入や販売、輸入代行、企画・開発を手がける会社だ。売上の90%以上が自社で運営するBtoCやBtoBのECサイトを通じたものが占める。リアルなモノを扱う会社ではあるが、IT企業としての側面が極めて大きい会社でもある。
創業は1980年。元は美容雑貨の輸入・卸の会社としてスタートした。だが進取の気性に富んだ会社で、1997年とかなり早い段階でECビジネスに進出。そのときにスタートしたのが、今も同社の主力のサイトとなっているアイドラッグストアーだ。
海外の医薬品や健康食品、サプリメントなどを扱い、世界中から探してきた最新の医薬品や優れた健康食品をユーザーに届けるサイトだ。その後、2000年にスタートしたのが、アイドラッグストアーと並ぶ同社の主力サイトに育っているアイビューティーストアーだ。国内外の有名ブランド化粧品など、名前の通り美容に関する商品を取り扱い、特に日本で未発売のブランドや商品が充実していること特徴である。
会社のルーツである美容や、これからの需要拡大が期待できる医療という領域における企画力といったノウハウに、あの楽天の創業と同時期に立ち上げたECビジネスに関する技術についての深い理解と実績を掛け合わせ、同社はこれまでに数多くのECサイトを水平展開してきた。
現在は前述の2サイトに加え、医療従事者向けの専門サイトであるアイアールエックス・メディシン(日本で未承認・未発売の海外の最先端の医薬品を提供するサイト)や、身近な健康不安に寄り添ってジェネリック医薬品や市販薬を取り扱うアイジェネリックストアー(消費者向けにより広く医薬品を取り扱うサイト)、メイソンピアソン(イギリスの高級へアブラシメーカー、メイソンピアソン社製品を取り扱うサイト)、フォーエバービューティー(国内外の最高品質の美容、コスメ商品を提供するサイト)の計6サイトを展開する。
取締役も含めて総勢20名程度の少数精鋭の会社ながら、直近の年間売上高は約50億円に上る。売上の大半が海外の製品であるため、商品の価格や売上高は為替レートの変動にも影響されるが、ここ数年はちょうどEC・通販市場全体の成長ペースに歩みを合わせる形で堅調に推移している。
ユニークな輸入代行で急成長、独自のサプライチェーンが強み
同社の運営するサイトは、どれも一見、一般的なECサイトに見えるが、実はそのスキームは長年のノウハウを反映した、極めて独自性の高いものとなっている。例えば、取り扱いアイテムのなかで大きな割合を占めている海外製医薬品について取り上げれば、同社は、これを販売しているわけではない。同社のユーザーが、個人的に輸入する手続きを代行している形を取っているのだ。
なぜかというと、本来、海外の医薬品を日本で販売するには、製造販売業の許可を取り、さらに商品ごとに厚生労働省の承認を取る必要があるからだ。ただし、個人が自分で使うためであれば海外で買ってきたり、輸入をしたりすることは許されている。そこでオズ・インターナショナルは、日本のガチガチの医療の規制に唯々諾々と従うのではなく、海外の薬を少しでも安く、便利に入手したいというユーザーのニーズの方に向き合うことにした。もちろん、あくまでも法に則ってである。そこで編み出したのが、輸入代行という形だった。
海外から物品をインターネット経由で買うのは、個人ユーザーにはややハードルが高い。一方、同社のサイトを使えば、手続きの所々に「輸入代行」である旨や、同意や確認を得るプロセスもあるものの、使い勝手としては、普通の物を購入するECサイトと同じように自然に進み、いつの間にか輸入に必要な手続きや決済が終了。ユーザーは商品が届くのを待つばかりとなる具合になっている。
この仕組みを編み出し、海外の医薬品を手軽にユーザーの元に届けられるようにしたのが、オズ・インターナショナルの創業者でもある先代の経営者だ。そして医薬品で培った輸入代行のノウハウを、化粧品やサプリなどへと展開し、今日の形へとビジネスを広げた。個性的な人物で、海外のサプライヤーとの豊富なネットワークもその時代に築かれたたものだ。現在、同社のサイトの大きな強みでもある、膨大な商品数はこの有形無形のノウハウに支えられている。ただ、こんな斬新な仕組みを武器にしたビジネスには横槍が入ることも多い。様々ないきさつから現在、創業オーナーは同社の経営から引退し、現在は東京都心部の不動産を中心とした資産を保有する安定的な事業オーナーが経営権を保有している。
同社で、現在実質的な経営に携わっているのが常務取締役の瀧澤 泰盛 氏だ。日経BP社で長くIT業界の取材に携わり、業界の動向や様々なITベンチャーの事業展開などをつぶさに眺めてきた人物だ。
折しも同社は、中小企業から中堅企業へと脱皮し、第二の創業ステージにある。これまでは創業者のオリジナリティの強い個性でここまで成長してきたが、今後は瀧澤氏の下、持続的な成長を目指し、改めて社内の制度や体制を整えていく考えだ。そのために今、新たな人材を求めている。
医療・美容にもっと選択肢を!和やかな社風と教育制度も魅力
「輸入代行は実は参入障壁が低く、個人が1人で手がけている例もあるほど。それだけに、サービスの品質や信頼性には著しい差があります」。業界が直面する課題を、瀧澤氏はこのように捉える。実際、業界全体を見渡せば、商品が届かない・違うものが届いたといったトラブルは多いと聞く。そのような他社の姿をアンチテーゼに、オズ・インターナショナルは取扱商品の品質や信頼性の担保に気を配る。本来は、輸入を「代行する」だけの立場であるが、同社では定期的に主要商品の品質検査を実施し、結果をサイト上で公表する。コールセンターも設け、質問や相談にも丁寧に応じる。
ECサイトの運営開始から20年来の実績があり、多くの顧客を抱え、信頼を得て来た同社だからこそ、業界を代表するという矜持で実施していることだ。今後は、業界全体の信頼を高めるべく、他社も巻き込んで品質向上への取り組みを働きかけていく考えだ。
「当社がやっているのは選択肢を増やすこと」。瀧澤氏は言う。
「例えば通信の世界では、昔はNTTしかありませんでしたが、規制緩和でユーザーに様々な選択肢ができた。医療、医薬品の世界では、そこまでドラスティックな変化は起こらないにしても、国民皆保険でみんなが同じメニューの治療や投薬を受ける時代から着実に変わり、患者の選択肢が増えていくはずです」(瀧澤氏)
その変化の一翼を担っている存在が、オズ・インターナショナルだ。
「今はまだニッチな存在だけど、ユーザーからの支持は確実に広勝手いる。医療サービス全体の中でも、新たな議論のきっかけを作る存在になっていきたい」。瀧澤氏の、そして同社全体の志だ。コスメの世界でも同様に、ユーザーの選択肢を増やし、より便利によりハッピーになる方向でサービスを展開したい考えだ。社内は年齢の近い社員が多く、和やかな雰囲気だ。転職してきた人が「仲が良くて、まるで学校みたいな雰囲気」と驚くほど。語学やITの教育に力を入れていることも特徴で、海外での語学研修や海外のIT資格取得キャンプなどを体験してきた社員もいる。特別に研修制度として確立しているわけではないが、意欲ある社員にはどんどん海外にも目を向けてほしいと瀧澤氏は願う。
世界中から商品を集め、競争が激しく、目まぐるしく状況も変わるECビジネスの世界で勝負をしているだけに、同社では常にグローバルに、最先端を見る目が必要だ。
海外のカンファレンスにも、積極的に社員を派遣していく計画だという。創業時からの進取のDNAを大事にし、さらにパワーアップさせていく。それを担うのは、今いる社員とこれから加わるメンバー達だ。医療をより身近に、選択肢を増やしていく、という志に共感し、ECサイトを通じて多くの人にサービスを提供することに喜びや手応えを感じる人の参画を待っている。