大ヒットタイトル『BFB』シリーズを開発・運営。新タイトルも続々登場へ
サイバード社の看板ゲームの一つ、サッカークラブ育成ゲーム『BFB2018』とその新シリーズ、思考型シミュレーションサッカーゲーム『BFBチャンピオンズ2.0』。『BFB2018』は、旧タイトルの『バーコードフットボーラー』時代からの累計で350万DL、『BFBチャンピオンズ2.0』は、2016年6月の配信スタート以来、世界29カ国で既に100万DLを達成している。この人気タイトルの開発と運営を担っているのが、株式会社サムライ・ソフトだ。
サムライ・ソフトは2012年に、セガ・エンタープライゼス(現・セガゲームス)出身の井上敬介氏が創業した。セガ時代に『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』シリーズに携わり、その経験からBFBに参画。このシリーズの成功と発展に貢献してきた。
こんなビッグタイトルを手がけるサムライ・ソフトだが、少し前までは、BFBを事業の柱に据えつつも、並行してメンバーが個々に客先に常駐し、ゲーム開発に携わる、よくあるアーリーステージのゲーム会社だった。この3年ほどの間にメキメキと地力をつけ、客先常駐はなくなり、BFBに続く柱になりそうなビッグプロジェクトもスタートした。詳細は明かせないものの、2018年夏にリリースされ、出足は好調だ。第二弾の開発もスタートしている。このほかにも、大きなタイトル2本の受注が決定しており、同社の業績は右肩上がりだ。数々のカジュアルゲームの開発や、運営や技術サポートなども手がけている。
ほんの3年前は社員と外部スタッフ合わせて10名の体制だったが、今ではライン4本、40名の体制になった。ただし急拡大したため社員の採用が追い付かず、現在社員20名で、残りは外部の力に頼っている状況だ。40名すべてを社員に置き換え、完全に内製化できる体制を目指している。
競合がひしめき、消えていく会社も多いなかで、同社が成功できたのは「ひとえにメンバーのおかげです」と、社長の井上氏は言う。メンバーの力を結集し、受注した案件やつかんだチャンスで確実に結果を出してきた。井上氏の言葉には、様々な経験を持つメンバーがいて、そのスキルとノウハウがそのままサムライ・ソフト社のナレッジになり、メンバーの数だけ同社の守備範囲が確実に広がっていることへの感謝がこもる。
実際、BFBに続くビッグタイトルは、サッカーとは全く違うジャンルのものだ。それでもしっかり結果を出す。井上氏は、「一緒に仕事をした会社とは、ほぼ次につながりますね」とも。これがまさに同社の実力の表れだろう。
セガ出身のエンジニアで、ヒット作『 Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!』シリーズの開発に携わった。
累計350万DLを超えるサッカークラブ育成ゲーム『BFB2017』も生み出したヒットメーカーだ。
日本に貢献し、世界で戦う決意を込めた社名。100年続く企業を目指す
急成長中のサムライ・ソフトは先ごろ、池袋にある築浅の洗練されたオフィスに移転したばかり。執務スペースは明るく広々とし、快適だ。立派なエントランスには、書家が書いた「侍」の文字が掲げられている。創業時から変わらず持ち続けているのは、「日本のソフトウェア産業に長く貢献できる会社ありたい」という願いと、「いつか世界で戦う会社になる」という強い決意だ。
ただし、決して一足飛びに実現できるわけではない。井上氏も重々自覚し、「まずは目の前のプロジェクトを一つ一つ成功させ、地力をつけることです」と気を引き締める。結果を出して次につなげるとともに、蓄積したノウハウを、いつか自社プロダクトとして結実させる決意だ。既に協業でタイトルを出す話が進んでいる。その挑戦を、成功に導くことが当面の目標だ。
原動力となるのは、やはり「人」。「これまで一貫して、メンバーを信じて裁量を与え、各人が最大限に能力を発揮できる会社を目指してきました。例えやったことがなくとも、『こうやりたい』という考えがあるなら、『やってみれば』と促します。すると期待に応えて、やり遂げてくれるのです」と井上氏は言う。このようなスタイルでマネジメントをするのは、井上氏自身が元々プログラマーで、現場の頑張りが、何より顧客へのバリューにつながるという信条があるからだ。実際、サムライ・ソフトはその通りに伸びている。
離職率の低さも同社の自慢だ。「この5年間で正社員を約20名採用し、離職者は1名だけです」(井上氏)。その1名が気になるところだが、どうしてもマンパワーが足りないときに急いで採用した人が、ミスマッチを起こしてしまったそうだ。逆に見れば、きちんとプロセスを踏んで「この人なら頑張れる」と確信を持てた人は、みんな期待に応えて成果を出しているということだ。
同社が本気で目指しているのは、100年続く企業。そのためにやるべきことは、次の世代の育成だ。「次を託せる人材を育てることが、私の最大のミッション」と井上氏は話す。中長期計画には、6年後の2024年までに子会社を3社作り、意欲と実力のある人材に、会社経営の経験を積ませる構想を盛り込んでいる。「子会社が大きくなって、サムライ・ソフトが飲み込まれたら、むしろ本望ですね」とも。目先の目標と、将来にわたるしっかりとした軸を持ち、結果として堅実で持続的な成長を遂げているのが、サムライ・ソフトという会社だ。
ゲーム好きが集う楽しい職場。ゲームの開発・運営はポリシーを持って真剣に
そんなサムライ・ソフトが生み出すゲームはどんなものか。
例えば、ロングヒットの『BFB2018』は、コアなファンに支えられ、確実に売上を上げていることが特徴だ。海外のビッグクラブと提携して、実在の選手を投入できることが訴求ポイントの一つだが、「ファンの反応や反響を見ながら、最適のタイミングで最適なキャラクターを登場させています」(『BFB2018』運営ディレクターの加藤峰樹氏)など、運営上の細かな工夫を施す。映画とタイアップし、ゾンビ選手が登場するといった遊び心も。ユーザーとしっかり向き合い、真摯に取り組むことが、サムライ・ソフトのポリシーだ。
詳細は書けないが、2018年夏からスタートした新たなビッグタイトルも、ユーザーに楽しんでもらえることに全力を尽くす。世界観をしっかりと作り、一人一人のキャラクターを掘り下げて描くことに加え、UX、UIにも一方ならぬ思いがある。「ストーリーやキャラクターがゲームの心臓だとしたら、それを一番外側で覆い、実際に触って自然なフィット感を出す皮膚に相当するのがUIです。胎児も脳と神経の次に皮膚ができると聞きます。UI、UXもそれほど大事なものだと思っています」(チーフデザイナとして、複数のタイトルを担当する蔵田雄一氏)。ターゲット層の属性を見極め、彼らの感性にフィットし、脱落させないように力を発揮するのがUI、UXを含めたデザイン全般だ。
社員20人が、それぞれの思いや得意分野を持って伸び伸びと力を発揮しているサムライ・ソフト。定期的に実施する社長との食事や面談では、自分のキャリアの志向や希望を話し、社長はそれに応える。例えば社歴3年半の柘植舞子氏は、客先に常駐する一スタッフからスタートし、今はプロジェクトのマネジメントも手がけるポジションにある。「技術を極めるよりはディレクションやマネジメントの方向に進みたい」という希望に沿って、キャリアを積んでいるところだ。今は、未経験で入った若手の育成も任される立場にある。
その若手メンバーの塚本健人氏は、業務系システムを取り扱うSIerからの転職組だ。元来のゲーム好きに加えて、巨大プロジェクトの中で一パーツのように働くことに疑問を感じ、サムライ・ソフトに来た。プロジェクトの全体を把握し、主体的に関われる今の仕事のスタイルに満足しているという。
そんなサムライ・ソフトは、もちろんみんなゲームが大好き。仕事中も、息抜きタイムもゲームの話で盛り上がり、仕事と趣味の境界が、いい意味で曖昧だ。「好きなことを仕事にできて、本当に幸せです」と話す柘植氏の言葉が、おそらく全員に共通の思いだろう。この良き会社で、共に頑張りたい新しい仲間を待っている。