デジタルコンテンツをセキュアに配信するSaaSシステム
各種情報が電子化され、インターネットを介して共有される昨今、電子ドキュメントは多くの脅威に晒(さら)されている。有料の電子書籍が不正にコピーされたり、企業の内部文書が中国の文書共有サイトで流出したりといったニュースは後を絶たない。データの配信に用いられている「PDF」や「EPUB」などのファイルは、多くのユーザに親しまれ便利な一方で、容易にコピーができたり再配布されてしまう。これらのデータの著作権や肖像権を守る「DRM」という概念がある。Digital Rights Management、すなわちデジタルデータの著作権管理システムだ。このDRMシステムにより、PDFやEPUB、Officeファイルのコンテンツセキュリティを確保しつつ配信できたら。そんなニーズをくんで独自にDRMシステムを開発したのがアイドック株式会社だ。
同社はSaaS形式のサービス(ソフトウェアの機能をユーザがネットワークを経由して活用する形態)として「bookend」、「KeyringPDF」、「HoGo」といったセキュアなドキュメント配信システムを提供している。コンテンツオーナーは、KEYRING.NETのライセンスサーバーにてコンテンツの暗号化を行い、閲覧権限を設定する。暗号化されたPDFやEPUBをユーザが閲覧しようとすると、サーバに自動的に接続し、ライセンスを確認。それが完了して初めて、そのファイルを閲覧することができるようになる。閲覧・視聴期限や印刷の許可、画面キャプチャなども自由にコントロールすることが可能だ。最新の「bookend」というサービスを使えば、Windowsのほか、iPhoneやiPadといったiOS、タブレットやスマホなどのAndroid、Macなどのマルチプラットフォームに向けて配信できる。さらにアイドックがクラウドサーバ上に用意する「Web書庫」というユーザー専用本棚を使えば、購入したコンテンツを自分の他の端末に簡単にダウンロードして複数端末で閲覧することも可能だ。
同社のDRMサービスの顧客となっているのは、出版社や電子書籍書店、新聞社、調査会社、教育教材会社などが多い。これらの分野においては既に、業界内でのデファクトスタンダードとなっている。顧客の代表例は、ビットウェイ・ブックス、マクミラン、集英社、ぎょうせい、医事新報、競馬ブック、キヤノン、ブリヂストン、サミーなどだ。
10階から桜田通りを見下ろす。
DRMを使って新しいビジネスモデルを可能にする
2011年に製薬企業と医療機関等との関係の透明性を確保するために策定された「透明性ガイドライン」に基づき、昨年から製薬企業各社は医療機関等への資金提供情報を自社Webサイトで公開を開始したが、公開情報を不正利用や意図しない利用から保護しながら、閲覧を希望する人にのみ確実に配信できるプラットフォームとして、多くの製薬企業がアイドックのサービスを採用している。
また、誰もが簡単に使えるWebサービスでありながら、PDF文書に高度なコピー保護をかけて配信する「HoGo」をサービス開始するなど、DRMを使った新しいビジネスモデルを広げている。
アイドックは現在、社員7名のベンチャー企業だが、大手も参入する市場で同社のサービスが認められ、多くの顧客から選ばれている。今後もPDFやEPUB、OfficeファイルのDRM管理の需要は高まっていくであろう。そこで、現在同社では、顧客の裾野を広げつつ、すでに次の展開への構想を練っている。あとは、それを実行していくメンバーが必要だ。