WAVE XROSS株式会社

コンサルティングファームの、WAVE XROSS株式会社。2023年9月に設立されたばかりのスタートアップであるが、既に次のような実績を上げている実力派である。

●大手生命保険会社の次期中期経営計画構想やコスト削減戦略の策定
●大手製造業の情報セキュリティ教育標準化およびグローバル拠点への展開
●大手製造業の子会社間データ統合プロジェクトや生成AIによるツール構築・導入

こうした大手企業のプロジェクトを受託できている要因としては、人的繋がりのある大手SIerと連携し、同社が戦略やビジネス面を担うという座組ができていることや、同社メンバーの前職時代からの信頼関係が挙げられる。

同社は2025年2月現在、36名のコンサルタントが①総合的な経営戦略領域、②サイバーセキュリティ領域、③先端IT技術活用領域の3部門に分かれ、エンジニア経験者等それぞれにおけるスペシャリストを揃えてコンサルティングサービスを展開している。なお、36名全員が大手から中堅・中小までの日系・外資系コンサルティングファーム出身者だ。

そんな同社の強みは、“伴走×リード型”のスタイルで、構想や戦略策定の上流から施策の実行（デリバリー）までを一貫して提供しているところ。
「コンサルティングファームは、パワーポイントの企画書だけを作成・提案し、その中身の実現までをフォローしない、とよく言われていますが、そういう傾向は事実としてあり、そこに疑問を持つメンバーが当社に集まっています。そして、当社ではクライアントの課題を理解し解決に至るまで伴走するとともに、DX等のクライアントにとって難しい課題に対しては我々が半歩先の立ち位置からクライアントをリードし、最短距離で結果を出すことをコンサルティングスタイルとしています」と取締役の渋谷尚（ひさし）氏は説明する。

そのためにも、将来の構想として自ら事業部門や事業会社を設立し、その運営を通じて取得したノウハウをコンサルティングに生かすことで、より確実な成果に繋げることを目論んでいる。
「コンサルティングファームがデリバリーまで手掛けないのは、利益率が下がることが大きな要因でしょう。しかし、デリバリーまで手掛けて課題解決を見届けなければ意味がないと思っています。これはクライアントのためだけでなく、自社のコンサルタントのためでもあります。クライアントと苦楽を共にしながら壁を乗り越え、成果を上げるプロセスを経験することで、コンサルタントとしてだけでなくビジネスパーソンとしても成長できるからです。それは、当社設立の契機となった問題意識でもあります」と渋谷氏は強調する。

同社は、2023年9月に渋谷氏と前職時代の有志3名の計4名でスタートした。
渋谷氏は、2009年の大学卒業後、日系・外資系、大手・小規模の計4社のコンサルティングファームで計15年間、コンサルタントとして経験を積んだ。
「様々な属性のコンサルティングファームを経験しましたが、コンサルティングという人材に依存する無形商材を扱っている業態であるにもかかわらず、人にさほどフォーカスした経営を行わない企業が多いことに問題意識を覚えてきました。人への投資をさほどしないのは、3～5年でコンサルタントが入れ替わることが当たり前の業界で、どうせ出ていく人に投資をしても仕方がないといった諦観があるからです。しかし、サービスの根幹が人であるのに、それで本当にいいのかとの思いがありました。ならば、自分達で人材ファーストのコンサルティングファームをつくるしかない。それが独立の契機になりました」と渋谷氏は経緯を説明する。

そんな思いに共感したコンサルタントが、1年半で30名以上集まってきた形だ。
その人材育成投資への姿勢は、次の経営理念に明確に表れている。

【失敗を科学し、豊かな社会の実現に導く】

人材や会社を成長させていくには、チャレンジが不可欠だ。チャレンジには、失敗が伴う。したがって、一度の失敗は許容する文化が必要となる。初めての失敗からしっかりと学んで、それを次に生かすことで成長に繋げる。これを“科学”と表現している。
そして、失敗を全員にシェアし、会社としてのナレッジにする。これによって、他メンバーが同じ失敗を繰り返さないようにするのだ。

同社が自ら事業を運営するビジョンには、事業にチャレンジして“失敗”を経験することも大きな狙いだ。このために、事業領域は“旧態依然”としてなかなか変わらない業種・業態を選択する方針がある。チャレンジするなら業界を変える実績に繋げ、コンサルティングに生かそうとの考えがある。

「この“失敗”というワーディングには、自戒を込めている」と渋谷氏は言う。コンサルティング業界では、成功事例は簡単にシェアされるものの、失敗はオープンにしたがらない傾向が強くあるからだ。
「コンサルタントはプライドが高い上に社内競争も厳しく、失敗が表面化してキャリアに傷が付くことを恐れるからです。だから、同様の失敗を他のコンサルタントが繰り返してしまう。これでは非効率で、成長スピードも上がりません。ですから、こうしたことのないように、戒めも込めてあえて言語化し、常に原点回帰できるようにしています」（渋谷氏）。
“失敗”との表現は、誠実さの表れでもあるだろう。

同社の組織風土づくりのポイントについて、渋谷氏は次のように話す。
「人員構成は経営・マネジメント層が30%、中堅・若手メンバー層が70%ですが、コミュニケーションが取りやすいようにフラットな風土づくりを意識しています」

働き方はハイブリッドであるが、客先常駐や在宅ワーク等様々なため、もっぱらコミュニケーションツールにチャットを活用。「書式的にどうしても一定の距離感が出るメールはほとんど使われていない」と渋谷氏。

また、チームビルディングを兼ねて各部門内のミーティングはあえてオフラインで行っている。
全社としては、年に1回の社員旅行を実施する方針。その第1回目は、1泊2日で鬼怒川温泉にあえて1台のバスで行った。
「現地集合では、会社近くの店に集まるのと大差ないからです。往復の車内でもコミュニケーションを取り、お互いの距離を縮めてもらいました」

さらに、オフィスにはワインセラーのほか様々な種類のお酒を用意し、終業後は自由に飲みながらのコミュニケーションを楽しむこともできる。
「飲み会も毎月のようにあり、もちろん自由参加ですが、用事がない限り参加するメンバーがほとんどですね」（渋谷氏）。

人材育成においては、1on1を重視。直属の上司だけでなく、事業部長等も対応し、複数の目で一人のメンバーのキャリアビジョンや成長策をきめ細かく考えている。成長へのモチベーションリソースは、一人ひとり異なる上に変化もするからだ。
実際の成長施策は、前述の通り上流から下流までを一貫して手掛ける一連の業務におけるOJTが中心であるが、一人当たり年間10万円までの書籍購入等の予算を設けて自己啓発も促進している。

人事考課は年1回で、売上等の成果と成長への取り組みの2軸で評価。なお、成果は個人ではなくチームで評価する。チームワークを重視しているからだ。
「そういう意味では、成果主義の人事ではないと思います」（渋谷氏）。

そんな同社の求める人材像について、渋谷氏は次のように期待を寄せる。
「好奇心が旺盛で、チャレンジ精神を発揮し行動を起こせる方。その上で、チームで協力し合いながら成果を出していける方。そして、仕事に誇りを持ち、サービス品質向上に取り組める方。そんな方のご応募をお待ちしています！」
唯一の経営資源である人材を第一に考え、大切にする。そこが同社の最大の強みと言えるだろう。