株式会社ソナー

株式会社ソナーは、不動産業界に特化し、100%直取引でWebを活用したワンストップソリューションを提供している企業である。同社の事業内容は、次のとおりだ。

●Webサイト構築・運用
物件の販促サイトや物件情報検索システムを含むサービスサイト、コーポレートサイト等のコンサルティング、プランニングから構築、運用、分析までをトータルに提供。
●システムインテグレーション
物件管理システムやCRMシステム等の業務システムの構築から保守運用までを一貫して受託。
●不動産インターネット広告
企画立案、クリエイティブ、メディア選定・配信、効果測定・分析までを担うコンサルティング型代理店。
●不動産情報データ化代行
独自開発による間取り図作成ソフト『S‘kit』の活用による当該業務や、物件情報ポータルへの情報配信業務のBPOサービス。

「不動産仲介会社を中心に不動産業界に特化し、以上のような業務をワンストップで提供しているWeb系ソリューション会社はほかにないと思います」と代表取締役の南史浩氏は胸を張る。

不動産業界には特有の規制やビジネススタイルがある。Webサイトや業務システムの構築・運用においては、こうしたレギュレーションを理解しておく必要がある。
例えば、Webサイトに求められるものは、見た目の美しさだけではなく、資料請求や展示場への来場を通じた見込み顧客と営業担当者との接点づくりや、膨大な選択肢の中からいかに理想の物件を紹介できるかがキーポイントとなる。

また、不動産物件を流通（仲介）するための物件データ項目は、極めて多岐にわたる。こうしたデータベースとして、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している「REINS」（Real Estate Information Network System：不動産流通標準情報システム）や、一般社団法人不動産流通協会が運営している「仲介標準フォーマット」といったデータフォーマットがあり、業界各社が準拠している。物件管理システムにおけるデータベース構築や情報配信代行といった業務において、こうしたフォーマットの知識は必須だ。また、複雑で多岐に及ぶことから、高い参入障壁ともなっている。

その点、不動産業界に特化し当該業務に精通している同社は、ディレクターはもちろん、エンジニアにおいても顧客に業務説明等の負荷を与えることなく対等な立場でコミュニケーションを取ることができる。その上で、コンセプト立案、企画から構築や更新、運用に至るまで的確な提案やスムーズなやり取りを可能とし、高い業務品質や顧客満足に繋げている。

以上のような強みにより、多くの不動産仲介大手と代理店やSIerを介さない100%の直取引を実現させている。

同社は、南氏が1999年12月に創業、2002年4月に設立した。

南氏は、大学卒業後に情報誌の制作やデータ入力、システム開発を行う情報サービス大手の子会社に入社し、親会社に出向して住宅情報誌の制作に従事。インターネットが普及を始めた当時、自社が開発した「物件チラシの版下を現場で簡単につくれるアプリケーション」を顧客である不動産会社向けに営業する業務を手掛ける。
「1999年の当時、不動産業界でもネットで情報を世の中に広く発信する動きが生まれた黎明期でした。私も不動産情報とインターネットの親和性が極めて高いと実感し、『これは面白いビジネスになる！』とワクワクしたのです」

南氏はそんな思いに共感する同僚のエンジニア等と共に独立し、自ら不動産業界向けにWebを活用するサービスを始めた。その後、Webディレクターを求めていた南氏は、友人と二人でWeb制作の個人事業を立ち上げていた平松真穂氏（現・ソナー取締役）と出会い、意気投合。そして、2002年に5名のメンバーと共に同社を設立する。

以来、今日までの20年以上、ブレずに不動産業界に特化した事業を展開してきた。この経営戦略による不動産仲介業務ナレッジの蓄積と顧客からの信頼を重視するマネジメント方針により、不動産業界に徐々に浸透し、信頼関係を構築。業界で知られた存在となり、営業担当は不在であるものの今日までに多くの不動産仲介大手と直取引に至っている。

今後の成長戦略としては、まだ数多く残る未取引企業の開拓が中心だ。そこで、紹介や口コミのほかに、『S‘kit』による間取り図作成のBPOを切り口に取引口座を開き、Webサイトやシステムの構築に繋げていくことを目論んでいる。
「今後も、業界特化を貫く方針です。不動産テックが台頭し、様々なSaaSやパッケージが登場して競合することも増えましたが、当社はスクラッチ開発・構築への特化も続けます。不動産テックはレッドオーシャン化しつつあって価格競争となっている上に、業務におけるお客様との関わる度合いも浅いからです。また、IT領域は日々進化しており、いち早くキャッチアップしてお客様のIT環境を刷新し、生産性の向上に繋げていただく使命もあります。その点、大手のお客様と信頼関係のある当社は、お客様と共にベストのシステムやサイトをスクラッチでつくり上げ、成果に繋げて喜ばれるやりがいがあります。ベストと信じて二十年以上続けてきたこのスタイルを止めるつもりはありません」と南氏は力を込める。

同社の役員および社員数は20名で、エンジニア集団のシステムソリューショングループと、ディレクター集団のUXソリューショングループ等に分かれる。このほど、デザイナーやコーダーによる制作グループを新設する運びだ。

こうした専門領域別のグループ体制であっても、顧客のプロジェクトごとに各グループからメンバーが集まって緊密に連携する体制が組まれている。したがって、日頃から社員間のコミュニケーション活性化に力を入れている。
「コロナ禍以降は、終業後に社内の談話スペースに三々五々と集まってビールを飲んだり、みんなでBBQに行ったり、会社からすぐ近くの私の自宅に集まって食べたり飲んだりしながらコミュニティーとしての関係性を深めています」（南氏）。

そして、こうした機会を通じて、南氏は「自ら機会をつくり、物事を動かそうとする気持ち」を持つことの大切さを吹き込んでいる。その思いについて、南氏は次のように話す。
「そもそも仕事とは与えられるものではなく、自分でつくり出していくものだという考え方で、前職時代に知って大いに共感しました。お客様に対しても常に自ら最新の情報をキャッチし、どのような価値が生み出せるかを考えて提案することが求められており、そこにこそ当社の価値があると思っています。そこで、メンバーがそういう状態になる“スイッチ”を探すことがマネージャーの役割と捉え、要望しています」

同社では、前述のように営業担当者が不在で、「顧客からエンジニアに直接相談や要請が入ることも日常茶飯事」と平松氏は話す。そんな要請にチームとして即応し、提案しながら関係性を深めてきた組織風土があるのだ。

なお、人材育成方針としても本人の主体性を重視。「自ら機会をつくり、学びたいというメンバーに対して、会社は費用負担等で全面的に支援している半面、『これを勉強せよ』との強制は一切しない」と南氏は強調する。
メンバーの成長は、ジョブディスクリプションでもバックアップ。職種ごとに30段階ほどのステップを細かく設けて必要な業務レベルを明文化し、1段階ごとに3,000～5,000円の昇給に繋げている（昇給は年1回で、数段階のステップアップが普通）。

そんな同社の求める人材像について、南氏は次のように話す。
「人材の価値は“能力×熱意×考え方”で決まると認識していますが、能力は熱意と考え方次第でいくらでも伸ばすことができます。そこで、その2軸が当社に合っていることを重視します。ただし、実際にお会いしてみないと分からない部分が多いので、“自ら機会をつくり、物事を動かそうとする気持ち”があるという方はぜひご応募し、直接話を聞かせていただきたいと願っています」

業界に特化し知識を深めながらも、最新の技術トレンドにキャッチアップし提案し続ける。そして、信頼関係を深耕し続ける――。これほどやりがいのある仕事もそうそうないだろう。