株式会社アイシンク

システム開発企業の、株式会社アイシンク。社員数200名強（グループ全体）という規模の中堅として、名だたるICT企業やエレクトロニクスメーカー、完成車メーカー等とプライムの立場で取引し、これまで幅広い領域で実績を残している企業である。

同社の取引先は、ソニー、NTTドコモ、富士通、日立製作所、住友電工、東芝および以上のグループ各社のほか、本田技術研究所、リコー、ゼンリンデータコム、伊藤忠テクノソリューションズ、キヤノンITソリューションズ、電通国際情報サービス等。こうした取引先に対し、次の4領域で事業を展開している。

①カー/モバイルエレクトロニクス、自動運転システム
カーナビゲーションシステムからスタートした企業として、ハイクオリティオーディオやモバイル機器、VR機器等の製品開発を手掛けてきた。こうした実績をベースに、次世代モビリティ領域や自動運転システム等の開発に広げている。

②通信/Big Dataアプリケーション
インターネット技術、5G等のワイヤレス通信技術をベースに、主要なクラウド環境とリアルタイムクライアントシステムを開発し、End to Endのシステム構築を行う。

③金融・社会インフラシステム
顧客のニーズに対し、コンサルティングから開発、検証まで一気通貫のソリューションを提供。ミッションクリティカルな金融・社会インフラシステムにおいて、障害時でもサービスが滞りなく継続運用できるための自動化やフェイルセーフ、セキュリティの諸システムを開発・提供する。

④先端R&Dへの参画
顧客の研究開発部門に参画し、仮想空間関連技術、AI関連技術等の開発/実用化に向けた取り組みを行う。今後期待されるメタバースやAR/VR等のXR領域や仮想通貨を見据えたシステム開発を通じて社会貢献を目指す。

なお、同社の開発実績としては、次の領域に整理できる。
●組み込み系システム開発
・車載機器・AV分野、エンターテインメント・XR分野、安全運転支援システム、IoT等
●オープン系システム開発
・金融/社会インフラ分野、サービス分野、業務管理分野、モバイル通信分野、インターネット分野等
●システムインフラ構築
・システムインフラ設計、システム運用アプリケーション開発、システム環境構築等
●コンサルティング、コンテンツ開発、検証サービス

同社の創業は、2000年3月。ソフトウェアとハードウェアの両領域で技術開発支援を手掛ける企業でエンジニアを務めていた代表取締役社長の増田博司氏が設立した。
「お客様からのオーダー通りのモノづくりだけでなく、こちらから提案を加えることが大事であると考えていた増田は、そんなスタンスで仕事をする会社をつくろうと独立して当社を創業しました。社名の“I Think”には、エンジニアが自らの考えで仕事が進められる会社をつくるとの思いが込められています」と取締役副社長の松本吉生氏は説明する。

事業は、創業当時に国内でも普及を始めていたカーナビゲーションシステムの開発からスタートする。
「実直な仕事ぶりと提案する姿勢が評価されて、他事業部、さらには同業他社へと取引が広がっていきました。そんな状況は今日でも変わりなく、顧客のつながりを重視した営業活動を中心に進めています」（松本氏）。

創業以来、先端技術分野を取り込んで成長を続けてきた同社。現在、VRやAR、メタバース等のXRやAI次世代モビリティ等の新たなプラットフォーム領域に力を入れ、ソニー等との研究開発に参画している。

さらに、今後の成長戦略としてグループ経営に打って出る“第二創業期”を迎えている。具体的には、持株会社の株式会社アイシンクHDを設立してバックオフィス部門を集約し、その配下にアイシンクと2005年に設立した子会社の株式会社アイティソリューションを置いた。そして2022年に、ある企業からコンサルティング部門の事業譲渡を受け、アイティソリューションに移管。これによって、アイティソリューションをコンサルティング企業として再編し、業務プロセスの最上流からの流れを拡大させた。

「これまでは、お客様のニーズを受け、開発から検証までの工程を一貫して支援してきましたが、これからはさらに事業や製品の企画開発段階のコンサルティングから手掛け、より的確なアウトプットに繋げていく支援ができるものと確信しています。また、この新体制によって、これまでのICT系、エレクトロニクス系のお客様から、DX支援としてあらゆる業種のお客様に広げていける可能性とともに、当社人材のキャリアステージも拡大できると自負しています」と松本氏は意気込む。

グループ体制に舵を切った同社は、各社の独立性を重視したマネジメントを推進していく。そこで強く求められるのが、人材における“自律”と“協調”だ。
「創業以来のポリシーである“自ら考える”ことをさらに突き詰めるとともに、各社・各メンバーが協調してグループやチームとしてより大きな成果を追求していきます」（松本氏）。

これを推進していく上で、同社は実力主義の風土を構築している。同社のエンジニアは、一般階層の6段階の上に、管理職としてSE、Tech SE、Lead SE、グループ長（事業部長）からなる等級制度を導入。半年ごとに待遇を見直す「半期年俸制」を採用、人事考課の結果をタイムリーに反映させて昇給・昇格を行っている。
「一般階層と管理職層の違いとして、後者にはチームマネジメントとともに営業意識も求められることが挙げられます。既存顧客の現場から追加オーダーをいただく、隣の部門に紹介していただくといった動きが期待されています」（松本氏）。

現在の等級制度は、エンジニアから管理職へという単線的。そこで松本氏は、マネジメントや営業等を意識せず、“スーパーエンジニア”を目指せるキャリアコースの導入も検討している。「ただし、『マネジメントしたくないから』等といった安易な理由は排除したいので、エンジニアとして相当なレベルの者以上が選択できるようにしたい」と話す。

人材育成においては、各分野のスペシャリスト社員が講師を務める社内教育や社外セミナー受講、2系統を揃えた受講し放題のeラーニング、資格取得支援、書籍・アイテム購入補助等を実施している。

そして、福利厚生制度。「代表の増田には、社員を守るという意識が極めて強い」と松本氏が言うとおり、定期健診や人間ドック、ストレスチェック、予防接種、メンタルヘルス相談等、心身の健康サポートを充実させている。
金銭的な支援制度としても、退職金はじめ結婚や出産、入学の祝い金、弔慰金や傷病、災害見舞金、奨学金返還支援、住宅移転補助・住宅取得貸付金等を用意。
そして、保養施設として健康保険組合の運営保養所が利用できるだけでなく、自前で会員制リゾートホテルに加入し、全国27カ所の高級リゾート施設を格安で利用できるようにしている。

社内コミュニケーションのためには、2カ月に1度、本社近くのホテルのレストランを貸し切って全社昼食会を開催している。
「会場確保が一苦労ですが、普段顔を合わせないエンジニア同士が楽しそうに交流している姿を見ると、とても貴重な機会であると実感します。今後も何とか続けていきたいですね」と松本氏は話す。そのほか、花見やBBQ、ボーリング大会、年末大抽選会等のイベントも開催。加えて、ゴルフや釣り、自転車、野球、フットサル、テニス、囲碁将棋等の同好会活動も盛んだ。

そんな同社が求める人材像は、“自律”と“協調”を実践できるとともに、業務にアグレッシブに取り組める人。
「“第二創業期”にあって、会社を変えたいぐらいの意欲ある方だと嬉しく思います」と松本氏は期待を込める。