代表取締役社長　西村公佑氏

略歴や創業の経緯をお教えください。

大阪大学基礎工学部制御工学科を卒業後、株式会社電通国際情報サービスに入社しました。学生時代にプログラミングを学んだので、エンジニアになろうという動機です。同社はもっぱら金融機関のシステム開発を受託していましたが、そこで2年ほど働いた後にソロモン・ブラザーズ証券に転職しました。元々株式に興味があり、社会人になってから株の口座を開いて投資を始めたのですが、株価がどういうメカニズムで上下するのかといったことに大変関心がありました。そんな折に、ソロモン・ブラザーズでクォンツシステムの開発ができるエンジニアを求めていることを知り、応募したわけです。 職場には、後に一緒にクォンツ・リサーチを創業することになる岩月がいました。彼独自のアイデアが凄い人だという印象でした。ところが岩月は半年でゴールドマン・サックスに転職していきました。岩月は私のことを「面白いやつだ」ぐらいに思ってくれていたようで、その後も情報交換をするようになりました。 私はソロモン・ブラザーズで4年間過ごし、分析まで手がけるようになるなどかなりスキルアップできました。実はその当時から岩月と会社をつくる話が出ていて、岩月から「何かと近いほうが都合がいいから」とゴールドマンへの転職を勧められ、応じたのです。ゴールドマンでは、営業セクションでクォンツ・アナリストとして働きました。その傍ら、岩月と創業準備を進めたというわけです。

創業して16年経ちましたが、どんなことが実現できたと考えていますか？

創業当時、株を分析しリスクを減らしてポートフォリオを組んだり、銘柄をスクリーニングするのに使うツールなどはありましたが、ごく一部のプロが使っているだけでした。同じプロでも、そうした武器を持つ人もいれば丸腰で戦っている人もいたわけで、投資の世界はそういった情報格差がはびこっていたわけです。ですから、投資は個人が手を出すと危ない世界といったイメージが広がってしまったと思います。その中にあって、我々は情報格差をだいぶ平たくすることに貢献できたのではないかと思っています。 また、創業当時、株価のチャートとしては“ローソク足”と呼ばれるものしかなかったところ、多彩なツールが付加されるようになり、投資行動のレベルが高まりました。そこにも一役買っていると自負しています。 さらに、楽しみながら学べる投資ゲームをつくって提供するなど、啓蒙にも力を注ぎました。今、政府は「貯蓄から投資へ」と旗を振っていますが、そんなムーブメントに役に立てていると思います。

社員に対する思いをお聞かせください。

画一的な型にはめたくはないと考えています。トップを目指すというのも大歓迎ですし、出世よりプライベートを重視したいという考え方もいいと思います。多様な考え方、働き方があってしかるべきです。ただし、評価は公平・公正に行います。その結果、高低がついたとしても、高いのが良くて低いのは悪いというわけでもありません。重要なのは、どういう状態であっても、自分の居場所や進む道は自分で開拓してほしいということです。 経営者としては、会社を存続させ雇用し続けることが最重要のテーマだと認識しています。その上で何かワクワクするような仕事ができる会社にしたいと思います。おかげさまで当社は財務状況もよく余裕をもってビジネスができる環境にあります。社員に無茶な要求をする社風でもありません。ですから、安心して自らの道を進んでほしいと思っています。

西村さんにとって、仕事とは？

生活していく手段であるとともに、自分を表現する場だと思っています。自分が世の中に生まれてきた意義を実証する手段ですね。社会貢献などという大それたことでなくとも、自分だからこそできたことが少しはあると思います。そういう意味では、仕事は自分にとって最も影響力を発揮できる表現法ではないかと思いますね。

人生で大切にしていることとは、どういったことでしょうか？

いろいろと恵まれていると感じていますから、「ありがたい」と思うことですね。私だけでなくみんなそうだと思いますが、誰かにサポートしてもらい、いろいろな運にも恵まれて今こうしていられるのだと思います。健康一つとっても、何か一つでもよくない要素があれば現在の自分はありませんね。ですから、誰にということでなく、世の中全体に感謝したいという気持ちがあります。そう思えば、何か嫌なことがあっても前向きでいることができますから（笑）。