【本部長　杉山淳子氏】 教員を経てソフトウェア会社に就職。プログラムのおもしろさに魅せられ、仕事にのめりこむ。 SEとして経験を積んだ後、1990年1月にたった1人で株式会社アイロベックスを創業。業務システムを中心に案件を手がけながら、徐々に社員も増える。 バブル崩壊やリーマンショックなどの逆境も乗り越え、現在、創業25年目に突入。本部長としてメンバーを引っ張る。

起業の経緯と当時の苦労をお聞かせください。

英語の教員を経て未経験でソフトウェアの会社に入社し、そこでプログラムを覚えて設計もやるようになり、7、8年経ったときでしょうか。仕事は大好きでしたが、自分の目指すものが他にあるような気がしたんです。その頃、転職もほぼ決まりかけていたのですが、そのときもう30歳を過ぎていて、いつまでも人に何かを教わろうという年齢ではない。自分で人を育て、目指すものは自分でつくるという年齢になのではと、はたと思い直したんですね。それで会社を起こしたというわけです。 起業当時、案件は前の会社から引き継いだものや、私自身についていたお客様もいらしたので、ありがたいことに困ることはありませんでした。困ったのは人ですね。人をどうやって採用すればいいのかと本当に悩んでいました。今でこそこうして、出せば誰かしら応募してくれる会社になりましたが、たった一人で始めたときはどうしようかと。最初はパソコン通信の掲示板で知り合った人。次はやっぱり掲示板で知り合った人の知り合いの人…という具合に、一人ひとり集めました。

創業25年目と、この業界では格段に実績のある会社ですね。長くやって来られた秘訣はなんでしょうか。

そんな、秘訣なんか何もないですよ。申し訳ないけど（笑）。本当にそれを聞かれると困っちゃう。 一つは堅実にやってきたことでしょうか。業務系の仕事をしている会社は、投資しすぎてその結果、つぶれてしまったり、お客様に迷惑をかけるようなことをしてはいけません。あと、コンピューターの世界はどうしても、どんなに気に入って使ってもらっていても何年かに1回は作り変えないといけないので、お客様と長くつきあって、2年後、3年後の作り変えに備えて準備をしてもらうように働きかけたり、そういう誠実な対応の積み重ねでしょう。 もう一つは、やはり長く下請けをやるなかで知らず知らずに技術力がついて、ノウハウもついて、お客様が求めていることとできることを見極めた提案ができるということ。昔は、強みは技術力と言っていたんですよ。下請けの仕事をしていた頃は、優秀なパートナーとして表彰されたこともありましたし。でも今は、技術も使ってなんぼ、役に立ってなんぼなので、技術を使ってお客様からの信頼を得ることが一番だと思うようになりました。社内にはいろいろなノウハウがたまっていて、それをすべてお客様に売りはしないにしても、相談されれば答えられるし、的確な提案ができる。その結果、アイロベックスに頼んでおけば大丈夫と信頼してもらうことが、当社の強みなのだと思います。

本部長にとって仕事の魅力とはどんなことでしょうか。仕事観をお聞かせください。

私は基本的に仕事が大好き。こんなに仕事が好きで、みんなに申し訳ないと思うほどです。母も仕事をしていたし、小さい頃から仕事は絶対したいと思っていて、家庭の主婦として生きることは考えたことがありません。 プログラマーになった当初は、おもしろくておもしろくて、寝てもさめてもプログラム。SEのときはシステム設計が大好きで、今も、お客様の会社のことを考えては、この会社の仕事はどこでどうまわっていて、だから数字はここで押さえようとか、こうしたらすごく便利になるのでは…とかと考えるのが本当に大好きです。その会社、その業界によっておもしろさが違うし、そのなかでどうやって私たちの技術を活かせるかと考えることが楽しいんです。ITを使ったら、会社経営がもっと楽になるし、時間も有効に使えると思うので、私たちの会社として何かそのような中小企業のお役に立ちたいと思っています。 私は仕事のおかげで精神的にも肉体的にも成長できたし、仕事は、自分が常に学んでいこうと思う根っこになるものです。仕事で得られたことはすごく多かったし、すごくいいものだと思っています。

社員の皆さんにはどのように育ってほしいと思っていますか。

こわがらないでやってほしいし、あとは仕事を楽しんで人生を楽しんでほしい。そのためには仕事を好きになってほしいですね。でもやれば絶対に仕事は楽しくなりますよ。仕事は大変ですが、大変だからこそ自分がやっている価値があるのだと思うし、これは他の人にはできないことだと思えばこそ、自分ができたときに自信が持てると思うのです。 この仕事は、昨日できなかったことが今日はできるようになるとか、お客様にも、この間は提案できなかったことが今はできるとか、信頼を得られるようになったとか、そういう形で成長が確認できる。そして年をとることが決してマイナスにはならない仕事だと私は思っています。 よくSEは40歳が限界だとか言われますが、そんなことはありません。私だって目はきついですよ（笑）。でも判断力や方向性は間違えなくなってきているので、本当に経験がものになる仕事だと思います。でも多分、「これで一生、食っていける」と思った瞬間に駄目になるのでしょうね。常に冒険というか、新しいことをこわがらずにやっている限りは、いくつになっても大丈夫だと思います。

新たなメンバーを募集するにあたり、求める人物像を教えてください。

新しいことへのチャレンジや、お客様に提案して、それを実現していくことに喜びを感じる人ですね。作ることがメインになってしまうと、どうしても、「作る」「納める」の繰り返しだけになってしまいますから。 あとはお客様と本質的に長いつきあいになる以上は、何でも言うことをハイハイと聞くイエスマンではいけないし、一方で「それはできません」「それはお金がかかります」ばかり言う人でもいけない。そのバランスがいい人ですね。短期的にも長期的にも考えられ、どこまでならお客様がついてこられて、どこまでならこちらがカバーできるという判断ができる人。そして駄目なときは素直に「ごめんなさい」と言えることも大事です。 私なんかも調子よく受けちゃって、10分も経たないうちに電話して「申し訳ありませんが、さっきの言葉は取り消させてください」ということもありますよ。そればかりではもちろん、お客様に信頼されなくなりますが、かといって一度言ったことは一生守らないといけないわけではありません。一言一言の責任は重い仕事ですが、そういう責任を持つ仕事がしたいし、駄目でもその結果は甘んじて受けるというような覚悟のある人に来てほしいです。逃げない人に。 でもお客様の懐に入り、本当に信頼されていると実感できることは何ものにも変えがたい喜びだと思いますよ。